久遠の神話
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第二十四話 七人目の影その八
「そうして頂けるでしょうか」
「わかりました。それでは」
「では。それではです」
「それでは?」
「このきな粉餅ですが」
話が戻った。それにだ。
「非常に美味しいのでまたです」
「あっ、お代わりですか」
「そうです。注文しても宜しいでしょうか」
こう樹里に問うたのだった。
「それでお二人も」
「あっ、私はいいです」
「僕もです」
きな粉餅の話になると雰囲気が変わった。今はだ。
非常に和やかなものだった。その和やかな雰囲気の中で三人は話すのだった。
「銀月さんが召し上がられたいのなら」
「どうぞ」
「そうしていいのですね」
「誰かが食べることにはそんな」
「言うことはないです」
微笑んでだ。それはないと話す二人だった。
「ですからどうぞ」
「宜しければもう一皿」
「わかりました。それでは」
二人の言葉を受けてだ。そのうえでだ。
聡美は笑顔でそのきな粉餅をもう一皿注文してだ。笑顔で食べるのだった。
その聡美との話を終えてだ。上城と樹里は一旦高等部に戻った。昼休みを利用して彼女と話していたのだ。
その高等部の中庭の中、芝生の中を見ながらだ。二人は話すのだった。
「とりあえずはね」
「そうね。強くなることね」
「力だけじゃなくて心もね」
「そのどちらも強くないと」
どうなのかとだ。上城はまだ迷いのある顔で樹里に話す。
そしてだ。その中で彼はだ。
己の手、剣を出して握る手を見てだ。そして言うのだった。
「あの、僕って一刀だよね」
「剣道のことよね」
「中田さんは二刀流で」
「それがどうかしたの?」
「それも何かあるのかな」
首を捻って考えながらだ。上城は樹里に話す。
「そのことも」
「それは関係ないんじゃないかしら」
「ないかな」
「そう思うわ。関係があるのはね」
「やっぱり。剣士自体の」
「力と心の強さだと思うけれど」
芝生の中では学生達が笑顔で談笑したり遊んだり寝転がったりしている。そんな昼休みののどかさを見ながらだ。樹里は戦いのことを話したのである。
「そうじゃないかしら」
「力と心の」
「そう。確かに二刀流って有利に見えるわよね」
「一刀流よりもね」
「実際に二刀流って強いの?」
「うん、強いよ」
実際にそうだと答える上城だった。二刀流のことはだ。
「少なくとも剣技はね」
「強くなるのね」
「そうした意味で力は強くなるから」
「けれど心は」
「それだね。中田さんは強いけれど」
彼の心のことも考えた。それもだ。
「けれどそれでどうなるか」
「それはなのね」
「うん、考えてみたら」
「上城君が二刀流になって上城君の心まで強くなれるか」
「それは別問題だね」
「ええ、私もそう思うわ。だからね」
それでだというのだ。
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