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戦国異伝

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第六十話 四人衆帰順その十


「柴田様と佐久間様の軍もです」
「ここに集まってきておるのか」
「墨俣に」
「そのうえで決戦とのことです」
 斉藤とだ。そうするというのだ。
「それで御二人はです」
「わかっておる」
 丹羽がだ。強い声でその忍の言葉に応える。
「殿が来られるまで持ち堪えよというのじゃな」
「いえ、違います」
「違うと申すか」
「殿、左右の軍と合流されそのうえで」
「戦に加われというのか」
「そうせよと」
「はい」
 そうだとだ。忍の者も話す。
「ではそれで宜しいでしょうか」
「我等に異存はない」
 丹羽がだ。忍の者に話す。
「それでだ」
「左様ですか」
「殿にもそう伝えてくれ」
 こうも言うのだった。
「その様にな」
「はい、それでは」
 織田軍は信長の下でだ。全軍でだ。斉藤との決戦に入るのだった。
 その墨俣に清洲から向かう軍には信長がいる。その彼にだ。
 傍らにいる矢部と長谷川がこう尋ねた。
「ここで斉藤を破りそのうえで、ですか」
「一機に稲葉山にまで迫りますか」
「一万もおればじゃ」
 信長はその一万の兵から話す。
「それを使って篭城するに決まっておる」
「確かに。そうなればことです」
「実に厄介ですな」
 そのことは矢部にも長谷川にもわかる。それですぐに頷いたのだ。
 そして。二人と同じく信長の傍にいるだ。池田も言うのだった。
「しかしその一万の軍を完膚なきにまで破れば」
「斉藤も篭城できなくなる」
「そうなればですか」
「城を守るのにも兵が必要じゃ」
 信長はこう三人に話す。
「だからじゃ。ここで叩けばそれで終わりじゃ」
「ましてや今の斉藤は」
 また池田が話す。
「竹中殿に城をほぼ無血で陥とされておりますし」
「自信をなくしている」
「それもあり、ですな」
「うむ、今の斉藤はあれ以上兵が減るとじゃ」
 信長はここでまた話す。
「諦めるじゃろう」
「はい、確かに」
 ここでだ。森可成も言ってきた。彼はそのまさに古武士の顔で述べる。
「美濃がどうなるかはまさに次の戦にあります」
「具体的に言えば美濃はわしが手に入れる」  
 信長はこのことは素っ気無く言ってみせた。
「そしてじゃ。機会を見て上洛じゃな」
「やはりそうされますか」
「うむ、公方様とまた会おう」
 将軍義輝にはだ。信長は好意を持っていた。都での謁見で二人は絆を築いた。だからである。
 この将軍についてはだ。彼は好意で述べるのだった。
「御元気な様じゃがな」
「しかし油断はできぬかと」
「それがしもこう思います」
 池田と森が同時に自分達の主に述べた。
「都は今物騒でございますから」
「松永と三好三人衆の動向が怪しいです」
 だからだ。安穏とはしていられぬというのだ。戦国の中でもとりわけだ。 
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