久遠の神話
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第二十三話 七人目の影その七
「だがそれでも君は彼女を嫌ってはいないな」
「嫌いになる筈がありません」
それはだ。何があってもだという口調だった。今の声は。
「あの娘は。私にとってはもう一人の」
「もう一人の?」
「私ですから」
だからだというのだ。
「それで嫌う筈がありません」
「だから彼女は嫌いではない」
「そうです。あの娘はまさにもう一人の私です」
声の調子が強くなっていた。そのうえで広瀬に言ってきていた。
「それでどうして嫌うのか」
「成程。それ故に」
「そうです。あの娘は私なのです」
また強い調子で言う声だった。
「ですから」
「君にもそうした相手がいて」
そしてだと。広瀬は言う。
「そして大切に思う。君は姿を見せないがかなりの力を持っている。そう」
「そう、とは」
「君は精霊か若しくは神か」
そうした存在ではというのだった。
「そこまで存在だがその君が大切に思う彼女もまた」
「あの娘もだというのですか」
「普通の人間じゃないのかな」
こう考えたのだった。声とのやり取りの中で。
「ギリシア人と日本人のハーフなのは聞いているけれど」
「あの娘は。その」
「しかも君の口調は妹かそれに近い存在を語る口調だ」
また指摘する広瀬だった。
「彼女はまさか」
「お話中申し訳ありませんが」
声は急にだった。話を打ち切ってきた。
そのうえでだ。こう広瀬に告げたのである。
「怪物が出て来ました」
「怪物。出て来たのか」
「はい、貴方の前に」
こう言うとだ。実際にだ。
広瀬の前に怪物が出て来た。それは巨人だった。
三メートルはあろうかという武装した巨人だ。その巨人を見てだ。
広瀬はだ。静かに言った。
「確かテーセウスに倒された」
「はい、あの力比べをした相手を殺していた巨人です」
「その巨人も怪物になるのか」
「その通りです」
「わかった。ではだ」
広瀬は再び剣を出した。あの六本牙の雷の剣だ。
その剣を手にしてだ。巨人と対峙してだった。
そのうえでだ。声に対して言うのだった。
「闘いの後だがやる」
「そうされますか」
「そうだ。やらせてもらう」
こう言うのだった。
「今からな」
「そうですか。では」
「止めないのかな」
「貴方は闘われたいのですね」
広瀬に問うたのだった。このことを。
「そうですね」
「その通りだ。それでだ」
構えを取る。そのうえでだ。
彼は巨人と対峙した。巨人は。
その巨体を武器にだ。広瀬に向かう。そしてだ。
両腕を振り下ろしてだ。そこから広瀬を叩き潰そうとした。だが。
広瀬は右に跳んだ。それで攻撃をかわした。巨人の左脇に隙があった。そこにだった。
一気に突きを入れてだ。巨人にダメージを与えた。しかしだ。
巨人はそれで倒れずにだ。さらにだった。
左の拳を横薙ぎにしてきた。広瀬はそれをだ。
正面からだ。剣を上から下に振ってだ。断ち切ったのだった。
巨人の動きがそれで止まった。ダメージの大きさ故にだ。
そして広瀬はその隙を見逃さなかった。それでだ。
一気にだ。その断ち切った左腕を踏み台にして跳びだ。巨人の頭を襲った。
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