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戦国異伝

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第六十話 四人衆帰順その四


 見ればその家臣達もかなり減ってしまっている。最早それはどうしようもない程だった。
 その彼等にだ。彼はこう言うのである。
「どうにかならんのか」
「そう言われましても」
「こうなってしまってはです」
「どうしようもありません」
「国人達は次々に織田についています」
 残っているその家臣達は項垂れながら龍興に話していく。
「そして直参の者達もです。次々にです」
「織田になびいていっています」
「兵も多くが織田について我等は今一万程度」
 そこまで兵は減ってしまっていた。そしてそれはそのまま織田の兵が増えるということでもある。龍興にとっては辛いことだった。
 それで家臣達に問うのだった。この状況をどうべきかと。しかしだった。
「織田は墨俣に城を置きです」
「そこに多くの兵を入れております」
「あの城を陥落させるにも兵が減っています」
「しかもこうしている間にもです」
 どうかというのだ。美濃は。
「国人達も直参の者達も減っています」
「織田になびいていっています」
 見ればだ。確かに昨日までいた者もいない。斉藤家の力が目に見えて弱まってきている。幾ら龍興が酒色に溺れていてもわかることだった。
 それでだ。彼は家臣達に問う。しかしだった。
 誰一人としてだ。答えられなかった。中にはだ。
「何とか稲葉山の辺りは守ることができますが」
 こんなことを言う者はいた。
「しかしです。それは一万程度の兵があってこそです」
「そしてその一万の兵もです」
「刻一刻と減ってきています」
「これでは」
 どうしようもないとだ。結局はそうなった。それでだ。
 龍興もだ。項垂れてこう言うのだった。
「では美濃は最早」
「殿、こうなってはです」
「まだ我等には一万の兵があります」
「その一万の兵で何とか」
「織田に最後の決戦を挑みそこで、です」
「あのうつけの首を取りましょう」
「織田信長の」
 残っている家臣達のそうした話を聞いてだった。龍興は。
 暫し考える顔になりだ。こう言った。
「では今から。残っている兵でか」
「墨俣に向かいそのうえで、です」
「あの城を陥としそこからです」
「織田信長を美濃に引きずり出しましょう」
 そのうえでだというのである。決戦を挑むというのだ。
 そのことを聞いてだ。龍興もだ。頷いて言うのだった。
「ではじゃ」
「はい、それでは」
「すぐに出陣してですね」
「そのうえで」
「まずは忌まわしいあの城を陥とす」
 龍興は告げた。はっきりと。
「そしてそのうえでじゃ」
「城を奪い返しに来た織田信長の首を取る」
「是非そうしましょう」
 こうした話をしてだった。斉藤は半ば破れかぶれになって稲葉山から出陣した。そのうえで墨俣に向かう。
 そのことを清洲で聞いた信長はその時代帰蝶と共にいた。そうして彼女にこんなことを言われた。
「私はです」
「そなたは?何じゃ」
「殿の妻です」
 彼女が言うのはこのことだった。
「ですから。是非です」
「稲葉山を取ってくれというのか」
「ひいては美濃を」
「それでよいのじゃな」
「はい」
 こくりと頷きだ。また信長に答えたのである。
「二言はありませぬ」
「わしはこれまで御主の兄、そして甥と戦ってきた」
 信長は茶を飲みながら横にいる帰蝶に話していく。 
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