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戦国異伝

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第六十話 四人衆帰順その三


「ではその心を見せてもらおうか」
「心ですか」
「では次の戦ではです」
「先陣を務めさせて頂きます」
「是非共」
「それとじゃ」
 先陣は受けてだ。そのうえだというのだ。
 信長はその四人にだ。こう問うたのである。
「してじゃ」
「して?」
「してといいますと」
「何かおありでしょうか」
「御主等の前の主は誰じゃ」
 こう問うたのである。彼等にだ。
「それは誰じゃ」
「斉藤道三様です」
 まずはだ。安藤が答えた。
「我等の主は」
「そう言うのか」
「はい、そして」
 さらにだ。安藤は四人を代表して話す。
「今の主はですな」
「そうじゃ。それは誰か」
「道三様に言われました」
 そのだ。前の主にだというのだ。
「美濃の次の主は」
「それは誰じゃ」
「貴方様です」
 信長を見てだ。そのうえでの言葉だった。
「貴方様を。主にせよと」
「義父殿に言われておったか」
「ここに」
 四人は同時にだ。それぞれの懐からだ。あるものを出してきた。
 それは文だった。それを開き信長に見せる。そこに書いてあったものを見てだ。信長は言った。
「ふむ。確かにな」
「納得して頂けたでしょうか」
「義父殿の字じゃな」
 筆跡からだ。信長はそれを察したのである。
「帰蝶に見せてもらっておったわ。間違いない」
「帰蝶様からですか」
「そうじゃ。間違いなくその字じゃ」
 道三の字、それに間違いないというのだ。
「義父殿が渡されておったか。御主等に」
「左様です。信長様が我等の主に相応しいと思えば」
「その時こそです」
「信長様の下に馳せ参ぜよと」
「ここに書かれている通りです」
 まさにだ。それでだというのだ。
「我等は来ました」
「それを見極めさせてもらいました」
「これまでのことでじゃな」
 どうして見極めたのかはだ。信長はわかった。
 それでだ。こう応えてだ。あらためて彼等に告げたのである。
「わかった。ではじゃ」
「はい、それでは」
「我等は」
「わしの資質を見極めたのならじゃ」
 どうするか。信長が今言うのはこのことだった。そのうえで四人に言うのである。
「そうせよ。御主等の望むままにじゃ」
「有り難きお言葉。それでは」
「是非そうさせてもらいます」
 こうしてだった。四人衆は信長の家臣となった。それと共にだ。
 四人衆の領土と兵達も手に入った。そのうえだ。
 美濃で相当の実力者である彼等が信長についたのを見てだ。他の国人達もだ。
 雪崩を打つ様にして織田についていった。最早それは止められるものではなかった。 
 その有様を稲葉山で見ながらだ。龍興は己の家臣達に忌々しげに言うのだった。 
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