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戦国異伝

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第五十八話 墨俣での合戦その十一


「あの城はここに城を築けば何時でも攻められる様になりじゃ」
「そしてですな」
「何時でも睨みを効かせられる」
「美濃全体に」
「だからこそ築く」
 ただ城を攻めるだけではなかった。美濃全体を見ての言葉だった。
 それを言ってだった。信長はだ。
 家臣達にだ。こうも言った。
「さて。それではじゃ」
「今よりですか」
「ここに城を築かれますか」
「斉藤の軍は叩いた」
 それもかなりだ。それによってどうなるかというと。
「暫くは大きな兵は出せぬ」
「ではこの軍はですか」
「一旦退けますか」
「尾張まで」
「三万の兵を長く出すことはできぬ」
 それはだ。とてもだった。そしてだった。
「この三万の兵で稲葉山を一気に攻めることもじゃ」
「それもできないですな」
「あの城はそう簡単に陥ちませぬ」
「例え三万でも」
 家臣達もこのことはわかった。稲葉山城はそれだけ堅固なのだ。しかもだ。
 今の彼等はだ。どうかというと。
「兵糧も多くは持って来てはおりませぬ」
「あまり多くはありませぬ」
「それであの城を長く囲み兵糧攻めにするのもです」
「するのは無謀ですな」
「元よりそれは考えておらぬ」
 稲葉山城を攻めること自体をだとだ。信長は言った。
「だからじゃ」
「それはせずにですか」
「軍は下げますか」
「そのうえで城を築きたいが」
 だが、だ。それはどうするべきかはだ。
 今は信長にも考えがつかなかった。しかしだった。
 とりあえずどうするかは彼はわかっていて。それで言うのであった。
「では清洲に戻るぞ」
「そうですな。それでは」
「とりあえずは」
「そしてそのうえで決める」
 この墨俣の城をだ。どうするかをだ。
 このことを言ってだった。信長はすぐに。
 墨俣にある砦に兵を置きそれを備えとしたうえで尾張に戻った。墨俣での戦は大勝利に終わり前田も帰参した。だがそれはまたあらたな問題のはじまりでもあったのだ。
 そしてそのことをだ。美濃四人衆も見ていた。
 彼等は安藤の屋敷に集まりだ。そのうえで話していた。今彼等のところには竹中はいない。しかしそれでもだ。彼等は顔を寄せ合い話してであった。
「まさかもう墨俣を手に入れるとはな」
「織田殿は動きが速いだけではない」
「かなりの傑物と見ていいか」
「ではここで」
 不破がだ。三人に対して言ってきた。 
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