久遠の神話
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第二十二話 広瀬の礼儀その一
久遠の神話
第二十二話 広瀬の礼儀
聡美は今は中田のところにいた。そしてだ。
彼にだ。こう尋ねていた。今二人は昼食を摂っている。食堂で向かい合って座ってだ。
中田はカキフライ定食を食べていた。聡美は海老フライ定食だ。その海老フライを食べながらだ。
聡美はだ。こう言うのだった。
「変わった天麩羅ですね」
「えっ、天麩羅!?」
「はい、天麩羅も食べていますが」
その海老フライを上手に箸で取りだ。海老を口の中に含んで言ったのである。
「それと同じで。美味しいですね」
「いや、これ天麩羅じゃないから」
定食の味噌汁を手にしてだ。中田は驚いた顔で聡美に言った。
「フライだから」
「フライといいますと」
「そうだよ。ギリシアでもあるだろ」
「揚げたものですよね」
聡美は目をしばたかせてだ。中田に答えた。
「それですよね」
「そうだよ。これ欧州の料理だろ?」
「フライはありますけれど」
そう言われてもだ。きょとんとした顔になってだ。聡美は中田に答えたのだった。
「これの味は」
「違うっていうのか」
「はい、天麩羅に近いですよね」
「いや、全然違うと思うけれどな」
目を見開いてさえいてだ。中田は聡美に答える。
「天麩羅とフライじゃ」
「ですが食べてみると」
「そう感じるんだな」
「日本の味だからでしょうか」
海老フライを天麩羅と感じたその理由をだ。聡美は自分で述べた。
「それでなのでしょうか」
「そうじゃないのな。俺はわからないけれれどな」
「ですか。それにしても」
「欧州のフライとは違うんだな」
「あっさりしてますね」
味がだ。そうなっているというのだ。
「そこが本当に日本的で」
「それでか」
「衣自体もです。日本の感じですね」
「それにソースもかな」
「はい、これもです」
聡美は海老フライにウスターソースをかけて食べていた。中田はタルタルソースだ。そのそれぞれをかけたうえで食べている。聡美はそのソースの話もするのだった。
「ギリシアのものとは違いますね」
「そうなんだな」
「この前パスタを食べました」
「日本のだよな」
「中田さんの作られたものとは別に」
あの店で食べパスタの話をだ。聡美はするのだった。
「やはりそれもあっさりとした味でした」
「日本の味なんだな、パスタも」
「ギリシアのものは。イタリアもですが」
「イタリアも?」
「オリーブをより多く使い」
オリーブの本場としてだった。ギリシアは古代からオリーブを使ってきた。知恵と戦いの女神アテナの象徴はオリーブだ。神話の頃からあるのである。
そのオリーブについてだ。さらに話す聡美だった。
「そしてガーリックもです」
「多く使ってか」
「チーズもトマトもですね。より多いです」
「じゃあ俺が作ったパスタも」
「はい、日本の味です」
まさにだ。それだというのだ。彼が作ったものもだ。
「全てです」
「そうかあ。それで味自体はどうなんだよ」
驚きを隠せない顔でだ。中田は聡美に尋ねた。
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