スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇
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第九十一話 ビムラーの意志
第九十一話 ビムラーの意志
闇の中であった。少女はその中で何者かの声を聞いていた。
「時間ですよ」
声の主は少女にそう語っていた。
「時間!?」
「そうです、遂にこの時が来たんですよ」
声は若い男のものであった。軽い口調で少女に語り掛けていた。
「時間がね」
「時間が」
「そろそろ起きられる時間だということなのですよ」
「私が!?」
「ええ」
男は言った。
「そして行かれるのです」
「何処に!?」
「約束の地へ」
彼はさらに言った。
「パラルへ」
「パラル・・・・・・」
「さあ、目覚めるのですガンエデンよ」
「私は・・・・・・ガンエデン」
「イルイ=ガンエデン。今こそこの地球を」
少女と男は闇の中で話をしていた。それは誰も知らなかったが確かに行われていた。
「何かえらいことになっちゃいましたね」
「何がですか?」
シュウはドレイク軍もティターンズもいなくなった欧州のパリにいた。そこでチカの話を聞いていた。
「オルファンのことですよ」
「ああ、あれですか」
興奮気味のチカに対してシュウはいつもの様に素っ気無いものであった。
「まあそうですね」
「あまり気にしてないみたいですね」
「わかっていたことですから」
シュウはしれっとして述べた。
「オルファンのこともね」
「そうだったんですか」
「オルファンは地球、そして人類にとって有益な存在なのですよ」
「御存知だったんですね」
「そうです。むしろ問題なのはオルファンを取り巻く人間の心」
「はあ」
「それこそ何とかしなければならないものなのですよ」
「ドクーガもそうですか?」
「彼等もね」
シュウはその言葉に頷いた。
「あの三人は人間的には然程問題ではないですが」
「頭悪いですけれどね」
「彼等が聞いたら怒りますよ、チカ」
「いいんですよ。あんな奴等からかわれる為にいるみたいなもんですから」
「やれやれ」
「ただ。あそこで核ミサイルを放つとはね」
「あれにはびっくりしちゃいましたね」
「ただ。あれではっきりとしたことがわかりました」
「オルファンのことの他に」
「そうです。サバラスさんのことです」
「ああ、あの髪の毛のない人」
「それを言うと誰でも怒りますよ」
「そんなの気にすることはないと思うんですけれどね」
「ところがそうはいかないのです。覚えておきなさい」
「変ですね、人間ってのは」
「まあ彼は人間ができていますが。それで」
「はい」
「何故彼がグッドサンダーチームを今までロンド=ベルに参加させていたかわかりますか?」
「あのケン太って男の子を守る為じゃないんですか?」
「確かにそれもあります」
シュウはまずはそれを認めた。
「ですがそれだけではありません」
「っていいますと?」
「丁度今そのサバラスさんが北海にいらっしゃるという情報が入って来ました」
シュウのノートパソコンにメールが一通届いていた。
「これでビムラーについても話がわかってきますね」
「じゃあやっぱり」
「はい、そうです」
シュウは答えた。
「ビムラーの謎も。もうすぐはっきりしてきますよ」
「話が動いてきましたね」
チカもそのメールを見ながら言った。シュウはそのメールを何処かに送信していた。
「今度はアイスランドかよ」
豹馬は大空魔竜の中でぶつくさと呟いていた。
「ドレイクのおっさんやっつけてすぐに地球一周なんてな」
「けれど今度は敵はいないわよ」
そんな彼にちずるが言う。
「だから特に気にしなくていいじゃない」
「まあそうだけどよ」
「今回も重要な仕事ですよ」
ここで洸が話に入って来た。
「サバラスさんからのお話ですからね」
「ただ、どうにも話を持って来た奴が気になるな」
「シュウだから?」
「ああ。やっぱりあいつは油断できねえ」
マサキはリューネにそう答えた。
「また何を企んでいやがるか」
「だが今はそれはないな」
しかしヤンロンはそれを否定した。
「ねえか?」
「そうだ。クリストフはビムラーとは直接は何の関係もない」
「まあそうだけどよ」
「彼に今僕達を陥れるメリットもない。だから今回は素直に善意からだろう」
「善意ねえ、あいつが」
リューネはそれを聞いて不思議そうな顔をした。
「やっぱり何かあるんじゃないかって思ってしまうけどね」
「まあな」
「何かシュウはあまり信用がないんだな」
「って御前知らないのか」
そんなタダナオにオザワが言う。
「今まで色々やってきたからだろ」
「それもそうか」
「全く。今まで何を見てきたのか」
「どうもな。話が色々移ってるから」
「まあ今は何かとな」
「ちょっと訳がわからなくなってた。済まない」
「気をつけてくれよ、全く」
「しかし俺達もこんな寒いところまで遠路はるばるってね」
キリーが軽い調子で言った。
「正義のジャーナリストと別れ今度は北の国へ」
「ロマンチックって言って欲しいのかしら」
「是非呼んで欲しいね」
レミーにこう返す。
「自伝の宣伝にもなるし」
「それはどうだか」
「おや、否定するのかい?」
「ガラじゃないわよ。ロマンを気取るのは」
「じゃあハードボイルドで」
「まあそっちの方がいいわね。クールに仕事をこなす」
「東と言われれば東に行き、西と言われれば西へ行く」
真吾は言った。
「モグラ叩きみたいだな」
神宮寺がそれを聞いて述べた。
「そして出て来るのはタコ坊主」
「それってサバラス隊長のこと?」
「他に誰がいるんだい?」
「そんなこと言ったらギャラ下がるわよ」
「おっと、それは勘弁願いたいな」
「でしょ?」
「下がるのはキリーの女運だけにしてもらいたいからな」
「やれやれ、言ってくれるな」
キリーはそれを聞いて肩をすくめておどけてみせた。
「もてない男のひがみはみっとおないぜ、真吾さん」
「いや、俺は両手に花だから」
「そうだったの」
「それは声が似てる人達だろ?」
「ばれてたか」
「すぐわかるぜ。まっ、両方を公平に愛するとかイスラム教徒みたいなことは言わないようにな」
「了解」
「しかし何で俺達なんだろうな」
「それですね」
小介が豹馬に応えた。
「おそらくはドクーガとの戦いの意味もあるのでしょうが」
「グッドサンダーあるところドクーガありでごわすな」
「はい」
「けれど・・・・・・それだけかしら」
「どういうこっちゃ、ちずる」
「うん、何か引っ掛かるのよ」
ちずるはその整った眉を顰めさせていた。
「他にもあるんじゃないかって」
「だったらビムラーかな」
ケン太はちずるの言葉を聞いて呟いた。
「ビムラーの?」
「うん。若しかしたら父さんは僕達にビムラーのことを教えてくれる為に」
「アイスランドに来たのか」
「そうじゃないかって思うんだけれど」
「そうかもね」
レミーがそれに頷いた。
「どういうことだ、レミー」
「ほら、サバラス隊長も時が来れば話すって言ってたじゃない」
「そういえば」
「ドクーガの連中も躍起になってきてるしな」
「それでそう思うのよ。いよいよじゃないかって」
「そうなのですか」
OVAがそれを聞いて呟いた。
「ケン太君にも。時が来たんですね」
「そうだと思うけれどね」
「わかりました」
そして頷いた。
「では私はこれで。食事の支度もありますし」
OVAは部屋を出た。そして食堂に向かった。
「どうですか、レーツェルさん」
食堂ではクスハがレーツェルに自作のジュースの味見をしてもらった。
「今度のは」
「そうだな」
レーツェルは不気味な緑色の液体を口にしていた。そして味わってから述べた。
「喉越しはいいが酸味が強いな。レモンにトマト、そしてバルサミコ酢です」
「当たりです、凄いですね」
「他にはセロリにニラ、大蒜、そして葱が」
「そうです、その通りです」
「おっ、何だ」
そこにドモンが通りがかった。
「ジュースか?」
「あっ、ドモンさんもお一つどうですか?」
「ジュースなら頂くが」
「止めておけ」
だがレーツェルはそれを止めた。
「何故だ?」
「君でもこれは。気絶ものだ」
「そうなんですか!?」
「確実にな」
「確実・・・・・・」
「だからドモン、君も止めた方がいい」
「ううむ」
「君に何かあっては私がレインにどやされるからな」
「レインにか」
「そうだ。君のコンデションは彼女が全て管理しているのだったな」
「そうだが」
「ではこれは飲まない方がいい。わかったな」
「わかった。じゃあ止めておく」
「賢明な判断だな」
「そんなに今回のも凄かったんですか」
クスハはまだわかっていなかった。
「凄いなんてレベルじゃないよな」
「そうだよな」
ギュネイとハリソンがそれを聞いて囁き合う。
「俺はあの時誰かの声が聞こえた」
「強化人間からニュータイプになったのか?」
「いや、川が見えたから多分違うな」
「そうか、生きていて何よりだったな」
「ああ」
「・・・・・・お邪魔します」
ここでOVAが食堂に入って来た。
「どうしたんだ、OVA」
勇がそんなOVAに声をかけた。
「落ち込んでるみたいだけど」
「はあ・・・・・・」
見れば本当にそうであった。OVAの声が沈んでいた。
「あれっ、そんなのわかるのか?」
一矢がそれを聞いて勇に問うた。
「ああ、何となくな」
「そうか」
「ケン太や護程じゃないけれどわかってきたんだ」
「ネリーさんのおかげかな」
「多分な」
ヒメにも答える。
「それでOVA、どうしたんだい?」
「ええ、実は」
OVAは勇達にケン太のことを話した。
「何か。寂しいんですよ」
「そうか」
「私にはわかるよ」
「どういうことなんでしょうか」
OVAはヒメに尋ねた。
「OVAはケン太にとってお母さんだからね」
「私が・・・・・・お母さん」
「だからだよ。寂しいのは」
「どういうことなんでしょう」
「子供が成長していくから。寂しいんだ」
「成長」
「巣立っていくからだよ。私もクマゾー達の世話してるからわかるんだ」
「そうなんですか」
「けれどそれっていいことなんだよ」
「いいこと」
「そうだよ、ケン太が成長しているって証拠なんだから」
「ケン太君が」
「巣立ってるんだ。OVAはお母さんなんだからそれを見守っていればいいんだよ」
「それでいいんですね」
「そうだよ。だから安心していいんだ」
「わかりました。それじゃあ」
「ケン太君も大きくなっているんですね」
クスハが言った。
「少しずつ。大きくなって」
「いくんだよな。子供ってのは」
勇はそれを聞いて感慨深げに述べた。
「そして大人になる、か」
「何か今日はやけにロマンチストだな」
「そうかな」
一矢に応える。
「俺もよくそうだって言われるけれどな。今日の勇もな」
「一矢さんのロマンは現実のものですから」
「クスハ」
「エリカさんとのこと、皆が応援しているんですよ」
「ああ」
「ですから。頑張って下さいね」
「わかった。絶対にエリカをこの手に」
「はい。じゃあ気付のジュースを」
「いや、それは勘弁してくれ」
そんな日常のやりとりだった。その中イルイが一人暗い顔をしているのに気付かなかったのは迂闊であったと責めるのは酷であろうか。
「間も無くアイスランドに入る」
シモンから放送が入る。
「総員第一種戦闘配備」
「アラド行くわよ」
「ああ」
ゼオラが立ち上がりアラドがそれに続く。
「メシもたっぷり食ったしな」
「アラドって何かいつも食べてばかりね」
「育ち盛りなんだよ」
ヒメにそう返す。
「食べないと生きてけないしな」
「じゃあ今度私がご馳走してあげるね」
「いや、それは結構」
「何で?」
わからないのはクスハだけである。
「だってそれは」
「私の御飯で満足しているから?」
「ま、まあな」
ゼオラの言葉に応える。
「ゼオラの料理って結構美味いからなあ」
「姉さん女房ってわけかよ」
「べ、別にそんなのじゃありませんよ」
ゼオラはギュネイの言葉に顔を真っ赤にさせた。
「私はただアラドの健康管理の為に」
「そういう建前なんだな」
「ですから建前じゃ」
「まあ俺もミオちゃんに美味いものでも作ってもらうとするか」
「ミオって料理できたっけ」
「聞いたことないな」
ヒメと勇もそれは知らない。
「まあとにかく出撃だ。行こうぜ」
「了解」
総員格納庫に向かう。そして出撃した。
マシンを出すと同時にレーダーに反応があった。
「やっぱり来ましたね」
「予想通りだな」
大文字はサコンにそう返した。
「この反応、ドクーガです」
「ミドリ君、皆に伝えてくれ」
大文字はレーダーを見るミドリに対して言った。
「何としてもグッドサンダーを守って欲しいとな」
「わかりました。それでは」
ミドリは頷く。そしてすぐに大文字の言葉に従い放送を入れるのであった。
「了解」
皆それに応える。それと同時にドクーガの三隻の戦艦が戦場に姿を現わした。
「フフフ、遂に追い詰めたぞグッドサンダー」
ブンドルは目の前のグッドサンダーを見て言う。
「長き旅路の果てに白き絶望の底に沈みゆくその姿」
そしてあの真紅の薔薇を掲げた。
「美しい・・・・・・」
「でだブンドルよ」
「何だ?」
「この前の作戦は御主のせいでえらい目に遭ったのだが」
カットナルとケルナグールはあからさまに不機嫌な顔であった。
「だからこそこうやって私の軍を無償で貸しているのだが」
「当然だ。わしの軍は大打撃を受けたのだからな」
「御主が核ミサイルなんぞ使おうとしたからであろうが」
「あそこで使わなくてどうするか!民間人に向けるわけではないから安心せい!」
カットナルにこう返す。
「わしは武器を持たぬ相手は傷つけぬわ!戦ってナンボだ!」
「あの作戦は見事な成功だったな」
「何処かじゃ!?」
カットナルは今度はブンドルの言葉に応える。
「オルファンは退けられた。そしてグッドサンダーも目の前に置くことができたからな」
「フン、確かにな」
「では行こう、今回も二人が行くのだな」
「おうよ、わしが手柄をたてる!」
ケルナグールはやる気だった。
「見ておれ!そこでわしの活躍をな!」
「何かまた好き勝手言ってるわね、三人で」
「マドモアゼル=レミー」
ブンドルはゴーショーグンに顔を向けた。
「またこうして戦場で出会うとは。これも運命なのか」
「あら、お見限りぃ」
「私達はやはり運命で導かれているのだな」
「で、今度はまた三人かい?」
「おうよ!」
ケルナグールが真吾に応える。
「今度こそ貴様等にフィニッシュブローを決める!覚悟しておれ!」
「で、そのブローの名は何ていうんだい?」
「ガハハ!聞いて驚け!」
ケルナグールは豪快な笑いと共に言った。
「ギャラクティカ=ファントムよ!どうだ、驚いたか!」
「・・・・・・まあな」
確かに真吾は驚いていた。
「もっと、独創性が欲しいがな」
「何だと!わしに独創性がないだと!」
「ほれ見ろ、言わんことではない」
カットナルが口を入れてきた。
「その名前は止めておけと言っただろう」
「では何がいいのだ?」
「スターダスト=レボリューションでどうかな」
「どっかで聞いた名前だな」
「美しい名前だと思うが」
「貴様の関係者の技ではないだろうな」
「私は記憶にないが」
「まあよい。どうもわしはそっちに弱くてな」
「他の技の名前の方がよかったな」
「ではタワーブリッジにしておくか」
「おいおい、そりゃ幾ら何でもまずいだろ」
キリーがそれを聞いて呟いた。
「サンシローもそう思うよな」
「ああ」
サンシローも呆れていた。
「そんなこと言ったら俺の技はキン肉バスターとかになるからな」
「サンシローさん何変なこと言ってるのよ」
「ここでもさやか君そう青筋立てんでもええやねん、ってなるしな」
「だからいい加減止めた方がいいな」
「火事場の馬鹿力もコスモを燃やすのも程々にな」
「宙が言うと説得力があるな」
「真吾が言ってもね」
「おやおや。それを言うとレミーやキリーもな」
「そうかしら」
「案外沙羅もそうだと思うんだけれどな」
「あたしの教育は厳しいわよ」
「おっと、これは本当に手厳しい」
「何はともあれ戦いははじまろうとしている」
ブンドルは優雅に言った。
「雄々しくも儚い戦士達に送る言葉は一つだけ」
「つってもいつも同じ台詞だよな」
トッドが突っ込みを入れる。
「美しい・・・・・・」
「ほら来た」
「何か様式美になってきたな」
フォッカーもそれを聞いて呟く。
「美しき者の相手は美しき者がする」
「今度の出し物は何だ?」
「またどうせ変なのだろうな」
「ミュージックスタート!」
「曲は」
「モーツァルトがいいだろう」
部下にそう答える。
「曲は・・・・・・ドン=ジョヴァンニの序曲だ」
「わかりました。では」
部下は言われた通りの曲をかける。いきなり派手なはじまりであった。
「今度はカラヤンか」
キリーがそれを聞いて言う。
「あのCDはよかったがな」
「ではいでよ機鋼戦士ドスハード!」
そしてブンドル艦から一機のマシンが姿を現わした。
「あれは!?」
真吾はそのマシンを見て声をあげた。
「あのカラーリングは」
「ふふふ、驚いているようだな」
ブンドルは真吾の様子に満足していた。見ればそのドスハードのカラーリングは赤と白と青のトリコロールであった。
「ドスハードの美しさに」
「あれ、まんまだよな」
「ああ」
コウはキースの言葉に頷いた。
「どう見てもガン・・・・・・」
「それ以上は言わないで!」
それ以上言うのをニナが必死に制止した。
「あれは・・・・・・」
「いや、どう見てもガンダ・・・・・・」
「だから最後まで言わないでよ!」
「見よドスハードよ」
ブンドルは誇らしげに言葉を続けた。
「敵も御前の美しさに心を奪われているぞ」
「そうか!?」
だがそれにカットナルが突っ込みを入れる。
「呆れているだけではないのか、あれは」
「ふっ、そんなことはない」
「だといいがな。さて」
「うむ、戦闘開始だ!」
「行くぞ、ここでビムラーを手に入れるぞ!」
まずは戦闘機達がやって来た。
「さて、お決まりの雑魚からだな」
「まっ、手馴らしには丁度いいぜ」
「皆ちょっと待って」
「どうしたんですか、エマさん」
エマにシーブックが声をかけた。
「レーダーに反応よ。これは」
「バルマーです」
メグミも言った。
「おいおい、こんな時にか」
真吾はそれを聞いて肩をすくめさせた。
「相変わらずとんでもない時に来るな」
「向こうにも向こうの事情があるのよ」
レミーがそれに答える。
「何かとね」
「やれやれだ」
「戦闘母艦で来ています」
マーグの戦闘母艦が姿を現わした。
「数は・・・・・・一千ですか」
「相変わらず多いな」
「また魚と鳥が大半でしょうけれどね」
「けれど今回はちょっと」
「どうしたんだい、メグミ」
キリーが声をかける。
「あまり心配し過ぎると美容によくないぜ」
「睡眠はちゃんととってますけど・・・・・・。赤いマシンも来てますよ」
「あいつか」
キョウスケがそれを聞いて目の光を強めた。
「ここにも来たか」
「キョウスケ、また行くのよね」
「ああ」
エクセレンの言葉に頷く。
「アルフィミィ、何のつもりか知らないが」
「それだったら私も一緒に行くから。安心してね」
「いいのか?」
「大丈夫。後ろは任せて」
「わかった。では頼むぞ」
「了解」
「兵を二つに分ける」
グローバルはすぐに指示を下した。
「ドクーガには特機を中心に向かわせる」
「はい」
クローディアがそれに頷く。
「残りでバルマーだ。それで行こう」
「わかりました。では」
「ただゴッドマーズはバルマーに向かってもらいたい」
「やはり」
「うん。彼に対抗出来るのはタケル君しかいないからな」
目を少し下に落としていた。
「彼にとっては。あまり進んでしたくない仕事だろうが」
「いえ、それは違います」
だがそれにタケル本人が答えた。
「タケル君」
「兄さんを説得するのは俺の役目ですから。ですから」
「行ってくれるか」
「はい、任せて下さい」
「わかった。では行ってくれ」
「はい」
「後ろは任せるんだ。いいな」
「了解」
ゴッドマーズはコスモクラッシャーの援護の下バルマーに向かう。それはマーグの方からも確認された。
「司令、ゴッドマーズが来ます」
「うん」
マーグは傍らにいるロゼの言葉に頷いた。
「また来たか。地球人のマシンが」
「どうされますか?」
「決まっているよ。迎撃する」
「では私が出ます」
「いや、君はここにいてくれ」
「宜しいのですか?」
「君には今度大きな任務がある。だからそれまで用心して欲しい」
「わかりました」
ロゼは表情を変えずそれに応えた。
「ではこちらで」
「今回は少し見たいものがあるからね。来た意味合いが強いし」
「見たいもの」
「あれさ」
グッドサンダーを指差す。
「ビムラーの力、見ておきたいんだ」
「そうなのですか」
「今地球には不思議なエネルギーが集まっている」
「ゲッター線にあのビムラーに」
「そうだ。そのうちの一つを見ておきたくてね」
「わかりました。それでは御一緒させて頂きます」
「アルフィミィにも伝えてくれ。今回は無理をしなくていいって」
「はい」
「サイコドライバーの念者として見てもらいたいとね」
「サイコドライバーの」
「あっちにもいたよね。確か」
「リュウセイ=ダテ」
「そう、彼もいるんだった」
「ただ、彼に関しては一つ噂があります」
「噂!?」
「どうやら。外銀河方面軍司令官ハザル=ゴッツォ閣下が興味を示しているようなのです」
「ゴッツォ司令か」
その名を聞いたマーグの顔が曇った。
「私は彼はな」
「お好きではないですか」
「彼が優秀なのは認める」
「はい」
「だがあまりにも人の命を軽んじ過ぎる。そして傲慢だ」
「だからですか」
「そうだ。好きにはなれない」
「ですがゴッツォ司令は宰相殿の実子であられますし」
「同じ十二支族でも私とは違うか」
「はい。ですから無闇に衝突されるのはよくないかと」
「それはわかっている」
マーグは答えた。
「私とてバルマーの者だ。同胞達と対立するつもりはない」
「それを聞いて安心しました」
「だが。やはり好きにはなれない」
しかしそれは変わらなかった。
「彼の下にいるグラドス人達もな」
「彼等も」
「相容れない。あの様な考えではいずれ彼等自身が災いを蒙るだろう」
「ですが司令、これは」
「ロゼの言いたいこともわかっているよ」
「左様ですか」
「我等は霊帝の忠実な家臣だ。その分は守ろう」
「はい」
彼等もまた戦闘に入った。
「ところで隊長」
真吾が戦いの中サバラスに問うた。
「どうしたのだ?」
「さっきからゴーショーグンがおかしいんだけれど」
「あら、そういえば」
レミーもそれに気付いた。
「ゴーフラッシャーが使えないな。こらまたどうしたんだ?」
「それは数分後わかる」
「数分後?」
「そうだ。それまでの間健闘を祈るぞ」
「健闘って言われても」
「一体何なのかしら」
「まっ、ここはヒーローもののお約束のハンディってやつだと解釈しとこうぜ。その間は」
「とりあえず我慢ってわけね」
「バズーカやスティックで地味にいくか」
「そういうことね」
「ケルナグール将軍、聞こえるか」
戦いが激しくなってきた頃ケルナグール艦に通信が入って来た。
「おお、ジッターか」
「そっちにゴーナグール量産タイプを送るからな」
「おう、すぐに頼むぞ」
「わかった。ではな」
それで通信が切れた。そして多量のマシンが姿を現わした。
「フハハハハハハハハ!ゴーショーグンよこれで貴様等を倒してくれるわ!」
「なっ、偽者を多量に!」
「ちょっと、劣化製品のバーゲンなんて悪質商法もいいとこよ!」
「ぬかせ!我がケルナグールフライドチキンはまず品質管理からやっておるわ!従業員の福祉も充実させておるぞ!」
「ということは優良企業なのかよ」
「そうよ!そこいらのジャンク屋よりもずっと上だぞ!」
「うるせえ!こっちはこれでも急成長のベンチャーなんだぞ!」
ビーチャがムキになって反論する。
「そうだそうだ、これでも黒字経営なんだからな!」
「子供だからって馬鹿にするなよ!」
モンドとイーノも続く。
「言ってくれるわね、そんな訳のわからないものばかり作って」
「何っ、訳のわからないものだと!」
ケルナグールはエル相手にムキになっていた。
「そこの小娘!わしの開発したものを訳のわからないものだというのか!」
「少なくともうちのジャンク屋は類似商品は扱っていないわよ。そっちにみたいにね」
「ヌウウーーーーーーーーーッ!そこの紫の髪の小娘も許してはおけん!」
「何か異様にノリのいい人だね」
「よくあれで影の組織とか言っていられるものだ」
プルとプルツーも呆れていた。
「こうなったら容赦はせん!一気に捻り潰してやるわ!」
「上等だ!こっちも売られた喧嘩は買ってやるぜ!」
「っておいジュドー」
「何だ!?」
ケーンの言葉に顔を向ける。
「御前等確か俺達と一緒にバルマーに向かってなかったか?」
「おっとそうか」
「そうだろ?じゃあこっちだろ」
「いけねえいけねえ、忘れてたぜ」
「しっかりしてくれよ、全く」
「さもないと主役の座が危なくなるぞ」
「ライト御前最近やけに主役にこだわるな」
「何か妙な胸騒ぎがしてな」
「どういうことだよ」
「強力なライバル出現!とかな。ありそうでな」
「ヘッ、そうなっても俺はずっとエースのままだぜ」
「どうだか。若しかすると俺達お笑いに降格かも」
「不吉なこと言うんじゃねえよ!お笑いに降格なんて洒落にならねえぜ!」
「もう殆どそうなってるよ、おい」
リョーコがそれに突っ込む。
「ゲッ、嫌な言葉」
「とにかく行くぞ。今こっちはタケルの援護で大変なんだからな」
「ああわかった」
「ケーン君達三人いるとそれで凄い戦力ですからね」
「お笑いと戦力は両立するからな」
「お笑い・・・・・・終わらない」
「だからイズミ、その強引なネタはもういい加減にしろっての!」
「まあとにかく私達も行きましょう。副長も」
「あ、うん」
ヒカルに声をかけられたジュンが頷く。彼もリョーコ達の小隊にいるのだ。
「じゃあ行きますか」
「はい。私達のフォローお願いしますね」
「わかったよ。それじゃ」
「お願いします」
「いっくぜえーーーーーーーーーーっ!」
「美味しく頂きまあーーーーす」
三人に引っ張られる形でジュンも続く。ケーン達はそれを少しポカーーーーーーンとして眺めていた。
「こりゃまた」
「何ていうか」
「女は強しってやつだな」
「ブラックサレナよりな」
「こらこら」
「それは幾ら何でも」
「俺だって一応戦ってますし」
「悪い悪い」
「エースだから便りにしてるよ」
アキト本人もそこにやって来ていた。
「それにしてもあの敵の副司令官」
「ロゼって娘だよな」
「敵だけれど中々美人だよな」
「いえ、そうじゃなくて」
「じゃあどうした?」
「何か。敵の司令官のマーグと同じで引っ掛かるんですよ」
「引っ掛かる!?」
「はい。俺の思い過ごしだといいですけれど」
アキトは少し考える顔になっていた。
「どうも。おかしいと思いませんか?」
「そうか?」
「俺達はそうは思わないけれどな」
「けど。どうしてそう思ったんだい、これはまた」
「いえ、確かバルマーって司令官とかそうした上級指揮官はバルマー人ですよね」
「ああ、そうらしいな」
「それでタケルの兄さんのマーグもそうだったんだよな」
「それでそれがどうしたんだ?」
「そこなんですよ、気になるのは」
アキトは言った。
「あのロゼって副司令官、どうも生粋のバルマー人じゃないんじゃないかなって」
「そうかな」
「まあ服装はちょっと違うな」
「言われてみればそうかも知れないが」
三人はそれぞれ違う反応を示した。
「どちらにしろ強敵ですけれどね」
「それはわかる」
「パイロットとしちゃ強いよな」
「おまけに超能力もあるようだしな。強敵なのは本当に同意だな」
「何かあるんじゃないですかね」
「何かか」
「はい。マーグと一緒に」
「そういえばよ」
ケーンはあることに気付いた。
「はい」
「どうした、ケーン」
「タケルもマーグもバルマーのえらいさん出身なんだろ。確か十二支族とかいう」
「その通りだ」
ライトがそれに頷く。
「何でもバルマーの支配階級らしい」
「その十二支族ってのがバルマーの貴族か」
「それがどうかしたのか?」
「いや、その十二支族の間でもやっぱり色々とあるんじゃないかって思ってな」
「ユーゼスみたいにか」
「ああ。まああの国はあの国で揉め事があるかもな。だったらロゼも」
「その中に、ですか」
「これはあくまで俺の予想だぜ。若しかすると」
「そういやあのアルフィミィって娘もだよな」
「あの娘はレビに似てるな」
「私にか」
「自分でもそうは思わないかい?」
ライトはレビ本人にそう問うた。
「似てるとかそうしたものは」
「感じないわけじゃない」
レビもそれを認めた。
「あの娘からは。特別なものを感じる」
「やっぱりな」
「ってことはあのアルフィミィって娘も」
「そうじゃないかな。まあ今は予想の段階だけれどな」
「バルマーはそうしたことが得意だからな。有り得るつったら有り得るな」
「そうだな。何か念の強い人間ばっか集めてな」
ケーンとタップも言う。
「何かをしようとしているのは間違いないな。単なる軍事利用かね」
「それは私にもわからない」
レビは少し悩ましげな顔になった。
「私がいたのは。バルマーの末端だったしな」
「末端か」
「バルマーにとってみれば辺境の一艦隊だ。大したことじゃない。だが地球にはそうした念の持ち主を向かわせていると
思う」
「あのアルフィミィもか」
「そうだ。何故そんなことをするのかはわからないが」
「何かやっぱり匂うな」
ケーンはそこに何かを察していた。
「俺達なんて連中から見れば辺境の蛮族ってやつだろ」
「おいおい、蛮族かよ」
「けれど彼等から見たらそうなりますね」
「そんな連中がどうして俺達にそんな大層な念動力者ばかり持って来るんだよ。絶対に何かあるぜ」
「問題はその何かだな」
ライトがそれを聞いて呟く。
「俺達とバルマーは祖先が同じだとかそうしたことだけが理由じゃないな」
「じゃあ一体」
「そこまではわからないが。それにしても多いな、相変わらず」
「そうだな」
既に彼等は雲霞の如き敵を前にしていた。
「魚に鳥がわんさか」
「ヘルシーでいいけどな」
「タップも肉よりこっちの方がいいんじゃねえか?ダイエットにもなるぜ」
「幾ら何でもこれだけ食えば同じだろうが」
「おっと、それもそうか」
「魚でもラーメンのダシってとれるんですよね」
「結局アキトはラーメンなんだな」
「駄目ですか?」
「いや、アキトのラーメンはいいからな」
味に五月蝿いライトもそれを認めた。
「今度その魚のスープのラーメンも頼むよ」
「はい」
「それじゃあそのラーメンの為にも」
「派手にやってやるぜ!」
「何かエステバリスに遅れちまったけれどな」
「遅れは取り戻す為のものってね」
三人はフォーメーションを組む。そして敵軍に向かう。
「いっけえええええーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
三人で光子バズーカを放つ。それで敵をまとめて三色の光の中に消し去る。
「次は俺が!」
「おう!」
「頼むぜ!」
アキトが空いた場所に突っ込む。それで一気にダメージを与えようとする。しかしそこにアルフィミィがやって来た。
「来やがったぜ、おい!」
「わかっている」
「ここはまっかせて」
だがすぐにキョウスケとエクセレンもやって来た。そしてアルフィミィと対峙する。
「御前達は先に行ってくれ」
キョウスケはケーン達に対して言う。
「ここは俺達が引き受ける」
「了解」
「じゃあここは中尉殿にお願いするか」
「坊やはお姉さんに何でも任せなさいね」
「いや、俺にはリンダがいるからそれはちょっと」
「ジョークよジョーク、ウブなんだから」
見ればケーンは完全に手玉にとられていた。
「リンダちゃんだからいいけれどそんなのだと悪い女にやられちゃうわよ」
「つってもなあ」
「アキト君もね」
「俺もですか」
「ユリカちゃんだけじゃないかもね」
「!?」
「わからないかしら。まあそのうちわかるかも」
「はあ」
「エクセレン、無駄話はそれ位にしておけ」
「あら」
「来ているぞ。フォローを頼む」
「了解。それじゃあ」
ライフルを構えた。
「まずはかる~~~くご挨拶っと」
撃つがそれはアルフィミィに何なくかわされてしまった。
「遅いです」
「う~~ん、まずったかしら」
だがエクセレンはそれはわかっていた。そしてキョウスケが動くことも。
「今だ・・・・・・!」
拳を手に突進する。そしてアルフィミィにその拳を繰り出す。
「これはかわせるか!」
「んっ」
エクセレンの攻撃をかわしたばかりで隙があった。そこを狙ったのである。
「決まったか!?」
「いや、まだだ」
アルフィミィはまだ動いていた。
「やりますね。けど」
拳に耐えた後で間合いを離す。そして攻撃に入ろうとする。
「この攻撃は・・・・・・!?」
「まずい!」
彼女の戦いはロゼも見ていた。彼女は誰よりも早くアルフィミィの異変に気付いていた。
「司令、アルフィミィにこれ以上の戦闘は」
「サイコドライバーにダメージが」
「はい、このまま戦闘を続けると」
「わかった」
彼もロゼの言葉を理解した。そしてそれに応えた。
「今彼女を失うわけにはいかない。撤退を許可する」
「有り難うございます。アルフィミィ」
「はい」
「ここは退け。いいな」
「わかりましたあ」
彼女は無批判にそれを受け入れた。そして戦場を離脱しにかかる。
「それでは皆さんご機嫌よう」
「おい、もうかよ」
「まだやると思ったのにな」
ケーン達はそれを見て首を傾げさせていた。
「やっぱり。何かありますね」
「アルフィミィにか」
「ええ。今のは外見的には大したダメージじゃなかったですから」
アキトは言う。
「それで下がるのは。やっぱり変ですよ」
「そうか」
「念動力に・・・・・・何か関係あるか」
レビもそれを見て呟く。
「若しかすると私と同じ存在なのか」
「その可能性はあるわね」
ヴィレッタがそれに応える。
「今の様子を見ていると」
「やっぱり」
「彼女だけじゃないでしょうけれど」
「念動力の持ち主は」
「リュウセイもそうだし」
「私も」
「ええ」
クスハ達にも応える。
「バルマーは何らかの理由で念動力の持ち主を集め続けているわ。それは今でも」
「今でも」
「あの娘もおそらくは、ね」
「何かすっごくやばい雰囲気ですね」
「雰囲気じゃなくて事実だな」
キョウスケはエクセレンにそう突っ込む。
「バルマー帝国、何を考えている」
だがバルマーの者達はそれに何も語ろうとはしない。相変わらず戦いを挑むだけであった。
「兄さん、どうして!」
「何度も言った筈だ」
タケルのゴッドマーズはマーグの母艦の至近にまで達していた。彼はそこから兄に対して問う。
「私に弟なぞいないと。貴様はどうして私をたばかるのか」
「それは違う」
だがタケルはその言葉を即座に否定した。
「兄さんは騙されているんだ!それがわからないのか!」
「私はバルマー十二支族ギシン家の長マーグだ」
彼は言い返した。
「クッ!」
「それ以外の何者でもない!地球の戦士よ姑息な真似は止めよ!」
「だったらどうしてあの時俺に語りかけてくれたんだ!」
「何っ!?」
「そしてゴッドマーズを教えてくれた。あれは嘘だったのか」
「どういうことだ、それは」
「答えてくれ、兄さん!」
タケルは問う。
「俺にゴッドマーズを与えてくれたのは何の為だったんだ!」
「ゴッドマーズだと!?」
「そうだ、このマシンだ!」
タケルは自身が乗るマシンを見せる。
「これが何よりの証拠だ!兄さん、忘れたとは言わせないぞ!」
「だから知らないと言っている!」
マーグはそれでも言う。
「私には弟なぞ・・・・・・グッ!?」
「司令!」
マーグは頭を押さえる。異変に最初に気付いたのはロゼだった。
「大丈夫ですか!?」
「あ、ああ」
マーグは何とか顔をあげる。
「私は大丈夫だが」
「ですがこれ以上あの男の側にいるのは危険です」
彼女はそう言ってマーグを気遣う。
「ですからここは」
「どうするのだい?」
「お下がり下さい」
彼女は言った。
「それに兵も減っておりますし」
「引き際だというんだね」
「はい。指揮は私が執ります」
「しかし君は」
「いえ」
ロゼの声が強くなった。
「司令は十二支族に連なる方です。何かあってはいけませんから」
「済まないね」
「その様なお言葉」
ロゼは内心何故か嬉しいのを感じていた。
「御気になさらずに」
「有り難う。それじゃあ」
「はい。全軍撤退せよ」
マーグにかわってロゼが指示を下す。
「宇宙まで撤退する。よいな」
皆無言でそれに従う。そしてマーグ達の母艦も戦場を離脱するのであった。
「クッ、兄さん」
「へえ」
歯噛みするタケルの横でイルムがあることに気付いていた。
「あのロゼって娘」
「手強いのね」
「いや、それだけじゃない」
リンにそう返す。
「何かあるの?」
「いや、彼女も女の子なんだなと思ってね」
「訳のわからないことを言うわね、また」
「そうかな」
「ええ。当たり前のことじゃない」
「俺が言いたいのはそういうことじゃないんだよ」
「じゃあ何なのよ」
「わからないのかね、御前は」
「わからないのは貴方よ」
イルムにそう言い返す。
「全く。いつもそんなのだから」
「まあいいさ。わからないんならな」
もう諦めることにした。
「ただ。何か救われそうだな、上手くいけば」
バルマーが撤退した後は敵はドクーガだけであった。既にドクーガもその戦力をかなり消耗していた。
「で、ブンドルよ」
カットナルがブンドルに声をかける。
「かなりまずいがどうするつもりだ」
「ふっ、安心するがいい」
だがブンドルはいつもの調子で余裕であった。
「私が何の策もなしに戦場に来ると思うのか」
「ほう、では何かあるのだな」
「当然だ」
彼は言う。
「戦場において炎と智は華。それを以って命を賭けることこそ」
続く言葉はこれしかない。
「美しい・・・・・・」
「で、だ」
だがカットナルもケルナグールもいつものことなので取り合わない。何もなかったように言う。
「今度は何をするのだ?」
「さっさと言わぬか。このままだとかなりまずいぞ」
「わかっている。では今それを見せよう」
ブンドルは不敵な笑みを浮かべた。
「敵は今勝利に酔おうとしている」
「まあな」
「御主も戦場で酒を飲んでいるがな」
「私のことはいい。とにかく彼等は今油断していると見ていい」
「ふむ」
「で、どうするのだ?」
「この時を待っていたのだ。いでよ、ドスハード!」
ラー=カイラムのすぐ側にドスハードが現われた。
「今こそ彼等に乾坤一擲の一撃を!」
「艦長、大変です!」
サエグサが艦橋で叫ぶ。
「左にドクーガのマシンが突如!」
「クッ、回避!」
「駄目です、間に合いません!」
そして攻撃をまともに受ける。ラー=カイラムの動きが止まった。
「うわあっ!」
「被害状況を知らせろ!」
ブライトは必死に冷静さを保ちながら言う。
「何処をやられた!」
「エンジン部にです!」
トーレスが報告する。
「クッ、よりによって!」
「出力が落ちています!このままでは!」
「ひるむな!今退いたら何にもならないぞ!」
部下をそう叱咤しながら次の指示を出す。
「消火班、エンジンルームへ!」
「はい!」
「落とさせん!各砲座、弾幕を張れ!」
ブライトはダメージをものともせず戦場に立つ。だがその危機は誰が見ても明らかであった。
「真吾ぉ、ラー=カイラムがまずいわよ」
「何やってんの!って状況を越えてるな、これは」
「そうだな。さて、俺達はこんな時にビムラーが使えないわけだが」
「どうするかな」
「どうしようもないわよ、このままじゃ」
「隊長、一発逆転の為にここは」
「うむ、丁度その時が来た」
「やったあ、ナイス御都合主義」
「おいおいレミー、ここは天の助けだろ」
「まあどっちにしろこれで助かるんだからな。一件落着といきたいね」
「ファザー、グッドサンダーをビムラー受け入れ態勢に」
「了解、ビムラー受け入れ態勢に入ります」
「よし、いよいよだ」
サバラスの顔が引き締まる。
「ビムラーの本当の力が発揮される時が来たのだ」
「な、何だ!?」
大地が大きく揺れはじめた。
「大地が揺れている」
「これは一体」
「見て、真吾!」
レミーがグッドサンダーを指差す。
「グッドサンダーが」
「な・・・・・・!」
それを見た真吾もキリーも思わず声をあげた。グッドサンダーがビムラーの光で緑色に輝いていたのだ。
「まさかあれがビムラーの本当の力なのか」
「正体ってやつかな」
「この力、ただのエネルギーじゃない」
凱がその緑色の光を見て言った。
「!?」
「リョウ、どうしたんだ」
「ゲッターが」
竜馬は隼人に答えた。
「ゲッターがビムラーに反応している」
「何だって!?」
「これは。一体どういうことなんだ」
「真吾」
「あ、ああ」
サバラスは驚いたままの真吾に対して声をかけてきた。
「ビムラーの受け入れ態勢は整った。もう大丈夫だ」
「その言葉待ってたぜ、それじゃあ早速!」
「一発で決めちゃいましょう」
「お手並み拝見ってとこだな」
「よし!行くぞ!」
ゴーショーグンをその緑色の光が包む。
「ゴーーーフラッシャーーーーーーーーーーッ!」
数本の緑の矢がラー=カイラムに襲い掛かる。そして直撃した。だが。
「!?」
「あれ、おかしいわね」
真吾達はそのドスハードを見て言い合った。
「何ともないなんて」
「遅効性のゴーフラッシャーってやつかしら」
「いや、違うよ」
だがそんな彼等にケン太が言った。
「見える、見えるよ」
「どうしたんです、ケン太君」
「あのロボットの心が見えるんだ」
OVAにもそう返す。
「ロボットの心が」
「うん、言ってるよ。ほら」
ドスハードを指差していた。
「戦うのは嫌だって。戦う為に生まれてきたんじゃないって」
「なっ!?」
「そうだったのですか」
ボルフォッグはそれを聞いて言った。
「あのロボットは。そう考えていたのですか」
「敵メカが言ってるんだ。戦いたくない、戦う為なら死んだ方がましだって!」
「そんな、馬鹿な!」
だがここで爆発した。ドスハードは炎の中に消えてしまった。
「今更聞いたってわけじゃないわよね」
「いや、あいつ自爆したんじゃないのか!?」
キリーが首を傾げながら言った。
「若しかすると」
「どういうことなんだ、これは」
「真吾、もう一回ゴーフラッシャーを撃って!」
「おい、どうしたんだ!?」
ケン太の突然の言葉に驚きを隠せない。
「あのメカが最後に言ったんだ!」
「さっき爆発したあれがか!」
「うん、だから」
「何処に撃つんだ!?」
「いいから、早く!」
「よし、こうなったら乗り掛かった船だ!」
「正確には逃げ込んだ船だけどな」
「とにかく真吾、やるんならやっちゃって!」
「よし!ゴーフラッシャースペシャル!」
全身に緑の光をためそれを放つ。目標はなかった。だがそれは確実に何かを撃っていた。
「こ、今度は何だ!」
「またビムラーか!?」
サンシローとショウが叫ぶ。
「いや、これは違う!」
「じゃあ何だ!?」
サコンに問う。
「ここにあるドクーガの基地の動力源が暴走しているようだ」
「ドクーガの!?」
「そうだ」
彼は答える。
「ちょっと真吾、何やったのよ!」
「俺が知るか!」
「ぬうう、これは一体どういうことだ!」
「何が起こっておる!」
カットナルとネルナグールも驚きを隠せないでいた。
「一つだけわかっていることがある」
「何だ!?」
二人はブンドルに問う。ブンドルは落ち着いた声でそれに応えた。
「我等の基地が崩壊するということだ」
「そんなことはわかっとるわ!」
「落ち着いてる場合か、退くぞ!」
「それではロンド=ベルの戦士達よまた」
ドクーガの三人も戦場を去った。
「我々もすぐに撤退するぞ!」
ブライトがラー=カイラムから指示を出す。
「ブライト、エンジンはもういいのか」
「ああ、何とかな」
「よし、グッドサンダーとも合流しろ!」
「そしてここから早く逃げるんだ、いいな!」
「了解!」
ロンド=ベルはグッドサンダーと合流した。そして慌ただしくその場を後にするのであった。
彼等は間一髪戦場を離脱した。そしてその後でグッドサンダーに集まっていた。
「父さん」
「ケン太、お前や皆さんに真実を話す時が来た」
モニターの博士は我が子に対して語る。
「では博士」
「はい」
大文字の問いに応える。
「ビムラーの秘密を我々に教えていただけるのですね?」
「はい、あなた達にもビムラーの意志をお伝えしましょう」
「ビムラーの意志!?」
「そうだ、ケン太」
「真田博士、あれは意志を持つエネルギーなんですか?」
「その通りだよ、リョウ君」
そしてまた言う。
「ゲッターロボに乗っている君なら理解できるだろう?」
「まさか・・・・・・!」
「そう、そのまさかだ」
博士は言う。
「ビムラーは遥か昔・・・・・・。そう、人類の文明が誕生する以前から地球内部に存在していたエネルギーなのだ」
「そんなに昔から!?」
「ああ。そして、その最大の特徴は先にも言った通り自らの意志を持っていることだ」
「自分の意志を持ってるの、ビムラーは」
「その通りだ。ビムラーは自分の意志を持っているのだよ」
「ということは」
獅子王博士はここでふと気付いた。
「意志があるからには明確な目的を持っておるはずだな」
「ええ。ビムラーの目的・・・・・・。それは生命体の進化です」
「進化を促すエネルギー!?それじゃあまるで」
「ああ」
「間違いないぞ」
隼人だけでなく弁慶と武蔵も気付いた。
「うむ。ビムラーとゲッター線はその特徴において共通する要素が多い」
「!?なら、ビムラーも」
竜馬には次第にわかってきた。
「そうだ、私はあれが宇宙から来たものだと考えている」
「それではビムラーが促す進化は」
サコンにもわかってきた。彼は今その灰色の頭脳を激しく回転させていた。
「おそらく、知的生命体を宇宙へ旅立たせること」
「やはり」
「ビムラーが備えている瞬間移動能力はそのためのものだろう」
「ちょっと待ってよ父さん」
ケン太は父に尋ねた。
「宇宙への旅立ちがどうして進化を意味するの!?」
「ケン太、御前も知っている通り,この宇宙には数多くの知的生命体が存在している」
「うん」
「だがその者達がそれぞれの星で暮らしているだけでは発展や進化は望めない」
「殻に閉じ篭ってるだけじゃ駄目ってこと?」
「そうだ。宇宙という無限の空間へ進出し、異なる星の知的生命体と出会い、困難や試練に打ち勝って共存することが」
我が子に対して語る。
「永遠の繁栄、言い換えれば究極の進化への道と言えるだろう」
「究極の進化」
「そして・・・・・・。ビムラーはそれを人類に教えようとしているのだ」
「そうだったんだ」
「わかるかケン太、私の話が」
「わかるか?」
「いや、全然」
霧生はケーンの言葉に応えた。
「何が何だか。進化して意志を持ってるエネルギーなんて」
「何が何だか」
「いや、それはあるかも」
マサトがポツリと言う。
「宇宙は広いから。若しかしたら」
「あるってことか」
「うん」
「父さん」
ケン太は父を見上げていた。
「僕、何となくだけどわかるよ」
「そうか、わかってくれたか」
「うん、感じで」
「それでいい。ビムラーは感じるものなのだから」
「感じるものか」
アムロがそれを聞いて考えに入る。
「人の進化の行く末が宇宙への進出、つまり重力から魂を解き放つことだというのなら
「ニュータイプの覚醒もビムラーの影響によってなのだろうか」
カミーユも。彼等は今同じことを考えていた。
「いや、現状のビムラーは全ての知的生命体の進化を促すまでには至っていない」
だが博士はそれは否定した。
「そうなんですか」
「むしろゲッター線や、オーガニック・エナジー等の様に我々の常識を遥かに超えたエネルギーの一つと考えるべきだろう」
「オーガニック=エナジーと同じ」
「そうだ」
勇にも答える。
「それでか」
勇も彼の言葉で気付いた。
「それで、オルファンやビムラーは互いに影響を与えているのか」
「影響って!?」
「特質や特徴は違っても、銀河への旅立ちという目的は同じだから」
勇がヒメに説明する。
「お互いを利用・・・・・・いや協力し合っているのかも知れない」
「いい意味での協力だったらいいんだけど」
(若しかして)
勇はまた気付いた。
(ネリーが言っていた大いなる存在とはビムラーのことだったのか?)
「真田博士」
今度はカミーユが問う。
「一つ疑問があります。何故ビムラーは今になってその力を発現させたんです?」
「ここ数年人類は何度も存続の危機にさらされている」
博士はカミーユに応えて言った。
「一年戦争、異星人や地下勢力の襲来、バルマー戦役、超重力崩壊の衝撃波、そして今の戦乱」
「はい」
「それ等がビムラーの目覚めを促し、私は代行者としての使命を与えられたのだ」
「代行者ですか」
「そうだ」
博士は自らをそう言った。ケン太がそれを聞いてまた言う。
「じゃあ、父さんがゴーショーグンやグッドサンダーを作ったのは」
「そう、ビムラーの意志でもある。そしてケン太、お前も私と同じく、ビムラーに使命を与えられた存在なのだ」
「僕が!?」
「そうだ、お前はビムラーの申し子とも言うべき存在なのだよ」
(つまりケン太君も護君と同じく、僕達にとって重要な鍵を握る子供だということか)
獅子王博士はそれを聞いてまた考えた。
(彼等はこれからの人類のあり方を示す存在だな)
「それにしても凄い話だよ」
キリーが言う。
「只のメカ好きの子供だとばかり思ってたのにな」
「そのケン太を守るために選ばれた私達って結構責任重大だったのねえ」
「ああ全くだ」
真吾も頷く。そんな彼等に大介が言う。
「そんな他人事みたいに言うことじゃないと思うが」
「それじゃあゴーフラッシャーがパワーアップしたのはケン太君と何か関係が」
竜馬はまた博士に問うた。
「うむ。ケン太と共にビムラーが新たな成長段階を迎え、ゴーショーグンに新たな力が与えられたのだ」
「じゃああのドクーガメカの声は」
「そうだ、彼等がゴーフラッシャーによって自らの意思を持つに至ったのだ」
「何だって!?」
この言葉にはキリーも驚いた。
「メカに意思を。ではあの爆発は」
「うん、あのメカは戦いたくないって言ってた」
ケン太がサコンに言う。
「でも・・・・・・。命令を拒否できなくて」
「自爆したのか」
「うん・・・・・・」
ケン太は残念そうに頷いた。
「しかし」
ショウは難しい顔になっていた。
「人間じゃない存在の声を聞くだけならまだしも意志を与えるなんて」
「いえ、それは有り得ることです」
「シーラ様」
「全てのものに心があるのですから」
「その通りです」
博士はシーラの言葉に頷いた。
「ケン太が花や草、風や水と意志を交わせるのもビムラーの体現者、『ソウル』として成長しつつある証なのです」
「ソウル・・・・・・。僕がソウルなんだ」
「その結果メカに対しても生物と同じ様に愛情を抱くケン太の心とそれに反応したビムラーの力がメカの意思を呼び覚ましたのだろう」
「ではドクーガ基地の動力源の暴走を同じ理由で」
サコンもそれがわかってきた。そしてドクーガの基地の爆発もそう分析した。
「凄い話だな。だがおかげでこれからの戦いが楽になるかも知れねえな」
「いや、それはどうか」
だが博士は隼人の言葉には懐疑的であった。
「ビムラーが完全に覚醒しない限り今日の様な現象が必ず起きるとは言えない」
「あら、それは残念」
レミーの声はいつもの調子であった。
「ま、そうそう事が上手く運ぶわきゃないか」
真吾もそれは同じだ。彼等は驚きはしたがいつもの調子に戻ってきていた。
「それで父さん」
ケン太は父に問う。
「僕、これからどうすればいいの?」
「ケン太、ビムラーの覚醒は御前の成長と共にある」
「僕と」
「そうだ、御前が正しい心を持ちロンド=ベルの皆さんと共に歩んで行くのなら」
父としての声で語っていた。
「ビムラーは必ず人類の力となり、御前はソウルとして新の旅立ちの日を迎えることになるだろう」
「わかったよ父さん」
「わかってくれたか」
「うん。僕皆と一緒に旅を続けるよ。それが僕の使命なんでしょ?」
「そうだ。御前の未来がビムラーと共にあることを祈っている」
「では真田博士」
グローバルが博士に対して言う。
「引き続き御子息をお預かり致します」
「よろしくお願いします。私はサバラス隊長と共にグッドサンダーでドクーガに対する囮となります」
「わかりました、博士達もどうかご無事で」
「はい。ビムラーが真の覚醒を迎えるその時にまたお会いしましょう」
ドクーガとの最後の戦いの時も近付いていた。それを察しているのは彼等だけではなかった。
「そうか。ビムラーが新たな成長を遂げたか」
「はっ」
ネオネロスの玄室の中だった。ドクーガの三人の幹部達がその前に片膝を着いていた。
「真田ケン太の抹殺には失敗したのだな?」
「申し訳ございません。よもやゴーショーグンにあの様な力が備わるとは」
ブンドルが三人を代表して釈明する。
「よい」
だがゴッドネロスはそれを不問に処した。
「ビムラーのことがまたわかった。今はそれでよい」
「有り難き御言葉」
「そえよりもだ」
ゴッドネロスにとっては敗戦も基地を一つ失ったことも惜しくはなかったのだ。ビムラーに比べれば。
「無機物にすら意思を与えるビムラーの力か」
彼は笑っていた。
「わしがそれを手にすればこの地球、いや宇宙の支配すら可能となる」
「お、おお!」
「ネオネロス様のお顔が!」
カットナルとケルナグールが驚きの声をあげる。見ればゴッドネロスの顔がはっきりと見えるようになっていた。スキンヘッドの逞しい壮年の男の顔であった。
「カットナル、ケルナグール、それにブンドルよ」
彼は三人に対して語った。
「次の戦いこそが全てを決する時となるであろう」
「ははっ」
「必ずやロンド=ベルを倒し」
「ビムラーをネオネロス様の手に」
カットナル、ケルナグール、そしてブンドルの三人は恭しい声で言う。
「そうだ。ビムラーを我が手に」
「はい」
(ビムラーの正統なる持ち主はこの地球で只一人)
ゴッドネロスは心の中で言っていた。
(それはこのネオネロスなのだ)
ドクーガもまた最後の決戦に備えていた。遂にドクーガとも最後の戦いの時が来ようとしていたのであった。
「目覚めるのです、巫女よ」
またあの若い男の声がイルイに語りかけていた。
「神の子イルイよ、目覚めるのです」
「貴方は・・・・・・誰!?」
イルイは深い闇の中にいた。そこで彼に問う。
「私は貴方の従者」
「私の・・・・・・従者!?」
「幾多の剣が貴女の下に集い、この星を守護するのですよ」
「私の下に」
「そうです、そしてあの力は貴女の為に」
声はまた言う。
「その力はこの星を護る為にあるのです」
「・・・・・・・・・」
「目覚めるのです、巫女よ」
声はまた言った。
「神の子、イルイ」
「神の子
「貴女の力は地球の為にあるのです。そして私の力も」
「何の為に」
「全てはこの星を護る為に」
「全ては・・・・・・この星を護る為に」
少女は闇の中にいた。だがはっきりと何かを感じていたのであった。
第九十一話完
2006・5・8
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