久遠の神話
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第二十一話 聡美と高代その二
そしてその最中にだ。中田に話す広瀬だった。夕暮れの中で。
「何が言いたいのかな」
「工藤さんと高橋さんな」
「確か」
「そうだよ。自衛官の人と警官の人な」
中田がここで話すのは二人のことだった。その二人の剣士のだった。
「あの人達もな。俺達から見るとな」
「年上だったのか」
「って気付かなかったのか」
「二人共若く見えた」
それでだと述べる広瀬だった。
「だからだ」
「いや、若く見えたか?」
「俺から見ればだ」
そうだとだ。広瀬はここでは顔を少し俯けさせて述べた。
「そう見えた」
「そうだったのか。そういえばあんた」
中田は夕暮れの中で広瀬のその横顔を見た。その顔はだ。
中田と同じ年齢とは思えないだけ大人びていた。五歳は年長に見える。
人は己を基準に考える傾向がある。それならばだった。
「随分老けてるな」
「前から言われていた」
「実際にそうだったんだな」
「だからだ。あの人達もだ」
「あんたより年下に見えたか」
「少しな。あの先生は先生だと知っていたからだ」
それでだ。年長だとわかったというのだ。
そしてこのことからだ。また言う広瀬だった。
「それに俺は人の年齢を見極めることが苦手だ」
「それもあったのかよ」
「だからだ。御二人には失礼なことをしたな」
「そうだって思ったら。わかるよな」
「今度御会いしたら謝る」
実際にそうすると述べる広瀬だった。そしてだ。
目の前にいる学生や講師達の赤い日差しの中で長くなっている影を見ながらだ。そうしてだ。
そのうえでだ。彼は言うのだった。
「けじめはつける」
「真面目だな、随分」
「俺は真面目か」
「そう思うぜ。そこで謝るっていうのはな」
「人として間違ったことはしたくない」
こうも言うのだった。
「だからだ」
「やっぱり真面目だぜ。そう言えるのはな」
「そうか」
「ああ、あの人達にもすぐに会うだろ」
剣士同士は引き合う。闘わねばならない故に。
そのことからだ。中田は広瀬にこうも述べたのである。
「じゃあな。その時にな」
「そうさせてもらうか」
「で、だ。俺の話は終わったぜ」
ここまで話してだ。中田は笑って言った。
「後はな」
「俺は最初から話すつもりはなかった」
「じゃあこれで御別れだな」
「闘わないのならな」
このことについては実に割り切っていた。広瀬はあえてそうしていた。
それからだ。また述べる彼だった。
「共にいる必然性もない」
「そこは冷たいな」
「倒し合う相手に何か感じる必要はない」
表情もない。実に突き放した感じだ。
そのままでだ。広瀬に言うのだった。
「ではだ」
「ああ、またな」
こうしてだ。中田は手を挙げて広瀬に別れを告げた。広瀬はその彼を見ることもない。
そうしたやり取りを経てだ。彼等は別れたのだった。
一人になった広瀬はだ。すぐにだ。携帯を取り出した。
そしてだ。相手に言うのだった。
「いいか、それで」
「ええ、今からね」
「そちらに行く」
自分から行くというのだ。相手のところにだ。
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