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久遠の神話

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第二十話 ハヤシライスその七


 そのうえでだ。二人は樹里の家に向かった。そしてだ。
 和風の茶室、畳と掛け軸のあるその古風な部屋の中でだ。重厚で黒いちゃぶ台を挟んでだ。
 そのうえでだ。二人は紅茶を飲む。カップは無論洋風のものだ。
 その洋風のカップで和室にいて座布団の上に座り。上城は言うのだった。
「何かね」
「場違いよね」
「ううん、言ったら悪いけれど」
「御免ね、今お父さんお料理作ってるからリビング使えないから」
「何か大掛かりだったけれどあれ何を作ってるの?」
「ハヤシライスよ」
 それだというのだ。
「それ作ってるの」
「ハヤシライスって」
「昨日から仕込みしてね」
「また随分本格的だね」
「お父さんお料理好きなのよ」
「それでなんだ」
「そう、ハヤシライスもね」
 昨日からわざわざ仕込んで作るというのだ。
「だから美味しいわよ」
「ハヤシライスね。あれいいよね」
「上城君ハヤシライス好きだからね」
「カレーとかそういうのは好きなんだ」
 実際に笑顔で答える上城だった。
「身体にもいいしね」
「そうそう、お父さんもいつも言ってるのよ」
「カレーとかそのハヤシラシスは」
「栄養もたっぷりってね」
「お肉もかなり入ってるし」
「お野菜もね」
 そのどちらもかなり入っているからこそだというのだ。
「味だけじゃないから」
「だからお父さんもなんだ」
「そう、作るの」
 それ故にだというのだ。
「他にはシチューも得意なのよ」
「ああ、それもなんだ」
「全体的に身体にいいもの作るのが好きね」
「成程、それっていいことだね」
「そうでしょ。じゃあまずはこの紅茶を飲んで」
 それからだというのだ。
「晩御飯も一緒に食べる?」
「いいのかな、そこまで」
「いいのよ」
 また笑顔で言う樹里だった。
「別に疚しいことのない関係じゃないじゃない」
「確かにね。それはそうだけれど」
「お父さんも上城君のことは知ってるし」
 実は既に合っている。つまり親公認の仲なのだ。
 だからだ。樹里も彼を今誘うのだった。
「だからね」
「図々しいんじゃないかな」
「そういうことも気にしなくていいから」
「いいのかな」
「人の好意には甘えるものよ」
 満面の笑顔で返す樹里だった。そしてだった。
 樹里は上城にだ。こうも言うのだった。
「だからね」
「そのハヤシライスもなんだ」
「一緒に食べましょう」
 笑顔での言葉だった。
「家族でね」
「うん、それじゃあ」
「ただ。やっぱりよね」
「うん、晩御飯をこっちで食べることはね」
 そのことはだとだ。上城は真面目に樹里に述べた。
「家には連絡しておかないとね」
「その辺りは真面目にしてね」
「そうしないといけないから」
 実際にだ。上城は懐から携帯を取り出してだ。
 そのうえでメールを送った。するとだ。
 すぐに返信を知らせる音楽が鳴った。流行の曲だった。
「AKBなの」
「友達に言われてね。これにしてみたんだ」
 そのアイドルの曲をだ。着信音にしているのだった。 
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