久遠の神話
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第十九話 高代の力その十三
「俺もあの娘と一緒になれる」
「普通ではないのですか」
「人と人の縁は色々だ」
ふとだ。広瀬の顔に陰がさした。
そしてその陰をそのままにしてだ。彼は声に対して話す。
「結ばれたくとも。お互いにそう思っていても」
「それができないこともですね」
「ある。君もそれはわかるだろう」
「そうしたことも見てきました」
声は広瀬に答えたがその答えはこうしたものだった。
「私も。色々とありましたから」
「それでだな」
「はい、確かに人と人が結ばれることはです」
「簡単な時もあれば」
「困難である場合もありますね」
「今の俺は困難だ」
そうした状況にあるというのだ。それでだというのだ。
「だからこそ。生き残り」
「そのうえで、ですね」
「俺はあの娘と共に生きる」
最後の一人まで生き残りそうするというのだ。
「それが俺の夢だ」
「わかりました。それでは」
「これ以上は聞かないのかな」
声が聞こえると思える方にだ。無意識のうちにだ。
目を向けてだ。そのうえで声に問うたのだった。
「君は今はこれで終わりでいいのかな」
「はい、私はこれで」
実際にだ。こう返す声だった。
「いいです」
「そうなのか」
「もうわかりましたから」
だからだ。いいというのだ。
「ある程度は」
「ある程度でいいのか」
「後にわかるでしょうし」
それもだ。あるというのだ。
「ですから」
「そうか。だからか」
「ではまた御会いしましょう」
声から別れの言葉を告げてきた。
「その時にまた何かあれば」
「そうだな。俺も君のことを知りたいしな」
「私は。それは」
「言えないか。それはわかる」
声の秘密主義、それも既に察していた。
「俺もな」
「左様ですか」
「ああ、そうだからな」
「貴方は御自身を隠されるのですね」
「表に出すことは嫌いだ」
実際にそうだというのだ。
「だからな」
「そういうことですね」
「じゃあいいかな」
話を打ち切る言葉だった。
「俺も家に帰りゆっくりとする」
「わかりました。では」
「また話があればな」
「色々と」
こう話をしてだ。そのうえでだった。
彼等は別れた。そうして広瀬は自分の家に帰ったのである。
第十九話 完
2011・12・24
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