久遠の神話
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第十九話 高代の力その九
「そしてその時はです」
「私に勝たれますか」
「今度は圧勝してみせます」
勝つからにはだ。そうするというのだ。
「ではそのうえで」
「また御会いしましょう」
こう告げてだ。彼は闘いを自分から切りだ。そのうえでだ。
高代に背を向けて下がる。しかしだ。
その彼の背をだ。中田がそっと出る。その彼に広瀬は問うたのだった。
「何のつもりかな」
「いや、この先生なら大丈夫だし力も尽きてるけれどな」
「俺の背を護るのか」
「若しもってことがあるしな」
「俺は君の敵だが」
「まあそうだけれどな」
それでもだとだ。気さくに返す中田だった。
「気にしないでくれていいからな」
「そうか。では帰る」
「それじゃな。あと先生な」
中田は今度は高代に対して声をかえた。
「今度は俺ともやるかい?」
「そうですね。それもですね」
「悪くないっていうんだな」
「はい」
静かに微笑みだ。高代も答える。
そのうえでだ。こう中田に言ったのである。
「ではです」
「それじゃあだな」
「また御会いしましょう」
こう中田に告げたのである。
「そしてその時にです」
「剣を交えような」
「そうしましょう」
こう話してだった。双方別れたのだ。そのうえでだ。
広瀬は高等部を後にする。プールから出たのだ。
そこまでも中田と一緒だった。その中田にだ。彼はこんなことを言った。
「君とは闘えなかったな」
「そうだな。それはなくなったな」
「次だ」
また次だというのだ。
「次に闘おう」
「ああ、またな」
「しかしだ。君はまだ俺と一緒にいるか」
中田に顔を向けてだ。そのうえでの言葉だった。
「そうするのか」
「それは駄目か?」
「嫌とは言っていない」
「そうか。まあ俺達は敵同士だけれどな」
「そうだ。俺達は敵同士だ」
「まあそれでもだな」
中田もだ。その広瀬に言ったのである。
「戦いの時以外はこうしていてもいいだろ」
「戦いを忘れてか」
「剣士でも戦ってばかりじゃないからな」
「そうだな。俺達は確かに剣士だが」
「戦いの時以外は好きにしていいからな」
だからだと言ってだった。中田は今は剣士としては敵である広瀬と共にいるのだった。
そのうえでだ。彼は少し残念な顔になり。そのうえでだ。こんなことも言ったのである。
「しかしな」
「今度は何なのかな」
「プールが閉まっていたのは残念だったな」
「闘いの場になったのはそれが理由なんだがな」
「いや、プールが開いてたらあれだよ」
今度は笑みになって話す中田だった。
「水泳部の部活があってな」
「女の子もいてか」
「高校生には興味がないんだよ」
そちらにだはというのだ。
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