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ヘタリア大帝国

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TURN54 ハワイの酋長その八

「そうしたことはね」
「犯罪者の頭脳だけを出して機械の身体に入れて」
「それで兵士に仕立てる」
「あらゆる能力が生身の人間を超越してるんだよね」
「しかも互いに瞬時に情報を交換して強くなっていく」
「それって確かに凄いよ」
 カナダもそうした兵士が完成すればかなりの戦力になると思っている。だがそれでもだというのである。
「けれど。人道的にもどうかと思うし」
「相手は死刑判決を受けた凶悪犯だから」
「どっちにしても死刑にするからだっていうんだね」
「そう。それにそうした兵士が前線に立てば」
 ドロシーはさらに言う。研究所の中は無機質で三人の左右には無数の機械の身体が林立している。その中を進みながらのやり取りだ。
「一般の兵士が傷付かない」
「一理あるかも知れないけれど」
 今度はカナダ妹が曇った顔で言う。
「それでもやっぱり」
「いえ、ガメリカの為に」
 淡々と言うドロシーだった。
「手を打つわ」
「どうしてもなんだね」
「この兵士達を開発するの」
「もうすぐ完成するから」
 ドロシーはカナダ兄妹に述べる。
「そして勝つから」
「じゃあもうすぐ枢軸軍が来るらしいけれど」
「守りきるわね」
「お願いするわ。ハルゼー提督もいるから」
 ガメリカ軍もカナダに援軍を出している。その彼女もいるというのだ。
「安心して」
「うん、まあ戦うからにはね」
「勝つから」
 二人はドロシーの計画とその完成により出て来るものについて危惧を覚えていた。だがそれでも彼等は今は戦うしかなかった。戦争はカナダにも及ぼうとしていた。
 その中でドロシーはこう言うのだった。
「ただ。私の予想では」
「予想?」
「予想っていうと」
「太平洋軍はUSJから攻めて来ると思っていたわ」
 四姉妹のドロシーもそう読んでいたのだ。
 しかし彼等はカナダから来る、このことについてこう言うのだ。
「ハワイからカナダへのルートを彼等が見つけたことは」
「向こうの戦略が広がったね」
「それもかなり」
「そう。正面からUSJに攻め入ってくれれば」
 ドロシーはガメリカの事情に基き言う。
「正面から全力でぶつかり勝てた筈」
「僕達も頑張るから」
「頼むわね」
「うん、折角の出番だし勝たないといけないからね」
「そうね。若しここで負けたら」
 カナダはどうなるか。ただ占領されるだけではなかった。
「カナダさん達の存在感は今以上になくなるわ」
「どうしても目立てないんだね、僕って」
「韓国さんみたいに起源の主張をすれば目立てるかも知れないわ」
「何の起源を主張すればいいのかな」
「色々」
 それについては一概に言えなかった。
「言えばいいから」
「けれど人類の起源はとか言ってもね」
「すぐにあの犬の神様に論破されるわね」
「僕論破されたら言えないから」
 それで終わるのがカナダだ。そこからも言うのが韓国だ。
「だから駄目なのかな」
「多分」
「まあとりあえずはね」
 二人の話が一段落したところでカナダ妹が口を開いた。
「ここはもうすぐ戦場になるけれどドロシーさんはここにいて」
「この研究所はシェルターでもあるから」
「そう。ただね」
「万が一のことがあったら」
「その時は逃げる用意をしておいて」 
 そうして欲しいというのだ。
「そうしてね」
「退避できるだけの時間は僕達が稼ぐよ」 
 カナダも微笑んでドロシーに言う。
「その時はね」
「有り難う」
「お礼なんていいよ。長い付き合いだしね」
 ドロシーはアメリカとだけでなくカナダとも古い交流がある。例えその存在を忘れることが多くともそれでもだ。
 だからカナダも微笑みで返す。こうしたやり取りも経て。 
 カナダでの戦いの時を迎えようとしていた。しかし彼等はここにいるのは連合の者達だけと思っていた。密かに黒服の、しかも怪しい者達が潜り込んでいて彼等を見ていることには気付いていなかった。


TURN54   完


                   2012・9・16 
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