戦国異伝
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第五十三話 徳川との盟約その九
「北条殿にはです」
「風魔じゃな」
「その棟梁の小太郎もまた」
「桁外れの者じゃったな」
「背はずば抜けて高く」
本多もその風魔小太郎のことは聞いていた。どういった者かというと。
「牙が生え顔は髭だらけのです」
「化け物の如き者じゃな」
「そうした者達が北条殿に仕えております」
「忍は強い家には必ずおるか」
「毛利殿に至ってはです」
その毛利はだ。どうかというと。
「御当主の元就殿自身はそう言ってもいいですし」
「あそこまで謀や諜が巧みとなると確かに」
「はい、まさに忍です」
元就程になるとだ。そこまでだというのだ。
そしてだ。次は。
「三好殿も然りです」
「あれじゃな。あの松永弾正と申す者が」
「忍を使うこともまた巧みですから」
「どの家も大きな家は忍を持っておるか」
「無論織田殿もです」
織田もだ。そうだというのだ。
「あの蜂須賀殿だけでなく」
「確か。あの滝川殿も」
「左様です。あの方がそもそも忍の出で」
信長には彼もいたのだ。今織田家において驚くべき速さで頭角を現わしだ。家中においても重臣の一人となっているのである。
その彼のこともだ。ここで話されるのだった。
「やはり織田殿の大きな力になっておられます」
「織田殿にもおられる」
忍がだと。家康は言った。
しかしだ。ここでだった。彼はこうも言ったのだった。
「やはり欲しいのう」
「左様ですな。徳川が生き残る為には」
「忍が必要じゃ」
その存在はだ。欠かせないとうのだ。
「絶対にじゃ」
「何とか探し出してですな」
「家臣としたい」
家康は本多にはっきりと話した。
「誰かいればじゃ」
「すぐに家に迎えますか」
「そうする。よいな」
「それならです」
本多は家康の話を聞き終えだ。そうしてだった。
彼にだ。こうしたことを話してきた。
「幸いこの三河からすぐに行けば伊賀があります」
「伊賀となると」
「はい、忍の里です」
先に話された風魔、そして甲賀と並んでだ。伊賀は忍の里として知られている。
その伊賀のことをだ。本多は話すのだった。
「あの国で人を探されてはどうでしょうか」
「そうじゃな。そうするか」
「生き残る為には人は欠かせません」
これは絶対のことだった。まさに人は城であり石垣だった。信玄の言葉はその通りなのだ。
そしてだ。その中にだった。
「ですから忍の者もまた」
「欲いところじゃな」
「殿の御考えはまさにその通りです」
本多もだ。家臣の立場から太鼓判を押した。
「さすれば」
「うむ、すぐに伊賀に人を向かわせようぞ」
こうしてだった。家康は忍を用いることに決めたのだった。
そしてだ。飛騨においてだ。
美濃、今信長が狙っているその国の北にあるその国の森の中においてだ。ある者達がこんな話をしていた。
「美濃が面白いことになってきたのう」
「ほう、遂にか」
「織田殿が攻めてくるか」
「そうなのか」
「そうじゃ。いよいよな」
「確か織田信長殿は」
彼はだ。どうかというのだ。
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