戦国異伝

「わかったな」
「さすれば。今は」
「あの三好に入らせたあ奴をですね」
「さらに動かせる」
「そうしますか」
「そうだな。それがよい」
　中央の声は周りの声に返した。
「今のところはだ」
「都だけでなくその周辺も手中に収めている三好をです」
「好き勝手に食い荒らしそのうえで」
「天下をさらに乱れさせる」
「実によいことですな」
　乱を喜んでいた。闇の中でそれを楽しむものをだ。確かに見せてそのうえで話すのであった。
「では。尾張は後程」
「美濃の蝮も気になりますし」
「若しや我等のことを察したのでしょうか」
「蝮か」
　また中央から声がした。
「あ奴は尋常な男ではない」
「善か悪かと言えば悪です」
「それは間違いありません」
「しかしです」
　その蝮についても話されていくのだった。
「その野心はおそらく天下です」
「天下を望むのならばです」
「必然的に我等の敵となります」
「そして我等に気付いたならば」
「その時は」
「そうだな」
　また声がした。
「消すとしよう」
「幸いなことにです」
　一人がここでまた言ってきた。
「美濃には弱みがあります」
「家か」
「はい、道三は守護の土岐氏を追放して国の主になっています」
「そうだったな。そしてその妾は」
「かつては主の妾だった」
「その産んだ子こそが次の美濃の主」
　このことが話されていくのだった。
「斉藤義龍だったな」
「あれは道三の子なのかどうか今一つわからないとされている」
「さすればあの男を使うと」
「その時は」
「そうだな」
　また言う中央の者だった。
「その時はその男を使おう」
「はっ、それでは」
　言い出した声が応えたのだった。
「その時はその様に」
「そして織田についてですが」
「時が来ればとのことですが」
「この場合は誰を使いますか」
「織田では誰を」
「うむ、それだが」
　中央の声もそれに応えてきた。
「弟を使ってはどうか」
「弟をですか」
「ではいつもの様にですね」
「操りそして」
「内輪から崩すと」
「そうするとしよう」
　中央の声はここでまた述べた。
「その時はな」
「はい、それではその時は」
　また別の一人が言うのだった。
「私にお任せ下さい」
「できるか」
「その時が来れば尾張に入りそのうえで」
　声はさらに述べるのであった。