戦国異伝
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第五十一話 堅物のことその十二
家臣達にだ。こう命じた。
「ではじゃ。これからじゃが」
「はい、今ですな」
「下総にですな」
「兵を進める。里見を倒す」
北条の宿敵の一つのだ。その家をだというのだ。
「そして関東を完全に手中に収めるぞ」
「ではその様に」
「そうしましょう」
それが彼等が今目指していることだった。彼等はあくまで関東を見ているのだった。
しかし信長はだ。その尾張においてだ。
家臣達にだ。その北条の話をしていた。
「どうも北条はじゃ」
「あの相模のですか」
「小田原にいるですな」
「あの家のことですか」
「そうじゃ。あの家は天下を目指してはおらんな」
北条のそのことをだ。看破しているのだった。
「関東を手中に収めることを考えておる」
「しかし天下はですか」
「天下は目指してはいない」
「そうなのですか」
「それは毛利と同じじゃな」
ここでこの家の名前も出す信長だった。
「毛利元就は中国は手中に収めてもじゃ」
「天下は目指してはいませんな」
「そのことを常に公言していますね」
「そうだと」
「そうじゃ。同じじゃ」
北条はだ。そうした意味で毛利と同じだというのだ。
こう話してだった。さらにだった。
「わしと見ているものは違うな」
「殿とはですか」
「天下を目指す殿とはですか」
「そこが」
「うむ、違う」
また言う彼だった。
「わしと同じなのは武田に」
「あの家ですな」
「まずは」
「そして伊達じゃ」
この家の名前も出したのだった。
「伊達政宗じゃが」
「伊達政宗ですか」
「名前は聞いていますが」
「確か奥州のですな」
「独眼龍と言われていますな」
「ふむ。皆知ってるな」
そのことを確めてだ。まずはよしとする信長だった。
そのうえでだ。こうも言う彼だった。
「ここで知らぬと言えばじゃ」
「その時はですか」
「我等はどうなっていたでしょうか」
「それすら知らぬ様な者は最初から使わぬ」
そこまでの資質はあるとだ。信長は既に見抜いているのだった。
そのうえでだった。用いているというのだ。
このことをだ。ここで話してだった。
信長はその政宗のことも話した。
「あの男の野心は信玄以上じゃ」
「あの甲斐の虎の」
「それ以上ですか」
「野心に満ちておる。あの地から天下を狙っておる」
信長は鋭い顔になって話す。
「そのうえで戦っておるわ」
「しかし。奥州からですか」
「天下をですか」
「それはかなりです」
「無理があるのでは」
「そう思いますが」
このことについてはだ。誰もがだった。
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