戦国異伝
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第五十一話 堅物のことその七
雪斎にだ。こう問うのだった。
「このやり方は問題があるか」
「問題ですか」
「うむ。何か厄介なことはあるか?あると思うなら申してみよ」
「さしあたってはないかと」
雪斎は信長のその顔を見て答えた。
「むしろです」
「よいというのじゃな」
「はい。そうしたやり方があるとは思いませんでした」
信長にこうも言う。
「今川では。拙僧が義元様に申し上げることが多かったです」
「御主をそこまで頼りにしておったのじゃな」
「それは有り難かったです。ですが」
「言うのは御主だけだったな」
「他の者も言っていましたが」
やはり雪斎の言葉が大きかった。それは紛れもない事実だった。
そのことを振り返りだ。それで信長に話すのである。
「織田家程はです」
「誰にでも得手があり不得手がある」
信長はこのこともよくわかっていた。人というものがだ。
「そしてどんな者でも時としてじゃ」
「いいことを言うと」
「そういうものじゃ。わしはそれを聞く為にじゃ」
誰にも話させるというのだ。家臣達に。
実際にだ。彼の名前も出した。
「ほれ、才蔵じゃが」
「可児殿ですか」
「そうじゃ。あの者は政は全くできん」
そもそも可児は政には興味がないのだ。この辺りは慶次と同じだ。
「そして戦でも兵を率いることはせぬ」
「あくまで槍で戦われ」
「そうした者じゃ。武辺者じゃ」
「しかしその可児殿が時には」
「政でも戦でもよいことを言う時があるのじゃ。例えば」
さらに具体的にだ。信長は話していく。
「橋をかけるべきだとかな。ひょんな感じでじゃ」
「言われると」
「そしてそれを入れる」
政の案としてだ。そうするというのだ。
「そうしておるのじゃよ」
「ふうむ。そうなのですか」
「これがわしのやり方じゃ」
信長は今度は笑っていた。
「よいか悪いかは別にしてじゃ」
「では。拙僧がです」
「無論何でも話せ」
信長はその笑みのまま雪斎に告げる。
「面白い話ならどんどん入れるぞ」
「面白いですか」
「そうじゃ。面白ければじゃ」
そうするというのがだ。信長の言葉だ。そして実際にだ。
雪斎や今川の家臣だった者達が言ってもだ。彼はだ。
見るべきものがあれば入れる。それを見てだ。
今川にいた者達はだ。驚きと共に言うのであった。
「いや、信長様はどうも」
「ああしたことを為されるとは」
「破天荒ですがしかし」
「かなり凄いですな」
「よいやり方です」
「全くです」
「左様でござるな」
ここで一人の顔の細長い男がいった。今川の重臣の一人だった朝比奈泰朝だ。
その彼がだ。こう言うのだった。
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