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戦国異伝

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第五十一話 堅物のことその六


「放っておけばよい」
「長宗我部はですか」
「そうして宜しいですか」
「今は」
「あの者達を相手にするにはじゃ」
 その場合にだ。どうするかというのだ。
「まずは近畿を完全に押さえてじゃ」
「そしてですな」
「四国に攻め入った時じゃ。その時こそじゃ」
「ううむ、それはまた」
 池田は信長の話をここまで聞いてだ。そのうえでだった。
 唸り様にだ。こう主に述べたのだった。
「既にそこまで考えておられるとは」
「そのことがか」
「驚きます」
 そうなっていた。実際にだ。
「殿は美濃を手中に収めて終わりではないですか
「それははじまりじゃ」
「美濃はですか」
「終わりではない。天下を治めるはじまりじゃ」
 そうだというのだ。信長にとってはだ。
「美濃から天下を治めることをはじめるのじゃ」
「美濃にはそこまでのものがありますか」
「二万の兵に豊かな国」
 まずはこのことを話に挙げてだった。
「これだけのものがあればじゃ」
「都に入るなり何なりですね」
「その通りじゃ。かなりのことができる」
「だからこそですか」
「そうじゃ。それに美濃は都にも近い」
 地理的にもだ。いいというのだ。
「だからこそじゃ。美濃からじゃ」
「全てをあらためてはじめられますか」
「そのつもりじゃ。それでその方達もじゃ」
 池田からだ。他の家臣達も見て話す彼だった。
「その時にこそはじゃ」
「はっ、我等全て」 
 実際にだ。こう返す池田だった。
 生真面目な彼らしくだ。信長に言った。その言葉は。
「殿にさらに忠誠を尽くします」
「頼むぞ。何かとな」
「はい、それでは」 
 こうした話をだ。家臣達とする信長だった。だがそれで終わりではなくだ。
 今度は雪斎が来てだ。信長に尋ねるのだった。
「一つ宜しいでしょうか」
「ふむ。何じゃ」
「家臣の方々とのことですが」
 そのことについてだ。彼は信長に尋ねずにはいられなかったのだ。そして今実際にだ。彼にその話を聞こうとしているのだった。
「どうも身近ですな」
「そう思うか」
「違うと申されるのでしょうか」
「いや、違わん」
 その通りだと答える信長だった。
「まさにその通りじゃ」
「垣根といいますか」
 今度はこう話す雪斎だった。
「それがありませんな」
「誰でもわしに言えるからのう」
「左様、それを許されておられるのですな」
「どんな話でも聞きたい」
 そうだと話す信長だった。
「それがよいものならじゃ」
「取り入れそのうえで」
「使う。そうする」
「成程。そうなのですか」
「その通りじゃ。どんな者でも喋らせてじゃ」
 そこからだ。信長ははじめているのだ。
「よい意見があればじゃ」
「それを入れて」
「役に立たさせてもらう。戦でも政でもじゃ」
「そのどちらでも」
「ではじゃ」
 そうした話をしてだった。信長はだ。  
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