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久遠の神話

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第十三話 想いの為にその七


「俺にとっては必要な戦いです」
「君にとってはか」
「目的があってなんだね」
「そうです。俺には果たしたいことがありますから」
 脳裏に思い浮かべての言葉だった。彼女を。
 だがそのことについては二人には言わずだ。それで言うのだった。
「だが今はこれでな」
「この戦いは終わりということでね」
「はい、今の戦いは終わりにしましょう」
 『今の』戦いについてはだ。広瀬も同意したのだった。
「ではそういうことで」
「しかし。俺達は最後にはな」
「君に戦いを止めさせる」
「だから次に会った時は」
「君を何としてもな」
「俺は変わりませんから」
 広瀬の言葉はここでは頑なだった。少なくとも彼はそのつもりだった。
「絶対に」
 こう言ってだ。彼はその剣を一閃させてだ。木の葉の中に消えたのだった。
 木の葉は何時しか消えて。テニスコート自体に戦いの後は消えていた。ただネットのないだ。二人だけがいるテニスコートだけになっていた。
 そのテニスコートの中でだ。工藤は高橋に言った。
「彼についてどう思う」
「一途ですね」
 高橋はこう工藤の問いに答えた。
「本当に」
「そうだな。かなりな」
「はい、本当に一途です」
「しかし。その一途は」
「彼だけのものじゃないみたいですね」
「君もそう思うか」
「金とかそういうのなら戦えば一生困らないだけのものが手に入ります」
 剣士ならばだ。怪物と戦えばそれで手に入るものだった。
「けれど彼の場合は」
「あそこまで一途だとな」
「はい、何か他の目的がありますね」
「二人という言葉にも反応を見せた」
 工藤はそのことに注目した。
「それが何かだな」
「そうですね。何があるか」
「それが問題だが」
「少なくとも今わかることじゃないですね」
「そうだな。彼から言うこともない」
 そのことも読んでいた。既にだ。
「だから俺達はだ」
「彼とは何度か戦ってですね」
「そうして止めていこう」
「戦いを止める為の戦いですか」
 少し苦笑いになってだ。高橋は言った。
「因果なものですね」
「そうだな。とはいってもこれはだ」
「ええ。俺達の仕事では付きものですから」
「戦争を止める為の戦争もある」
「相手がどうしようもなくなる前に仕掛けてですね」
「そうした戦争も実際にあった」
 所謂予防戦争だ。アメリカもそれを理由としてイラクを攻めている。
「そして多くの人を護る為に」
「凶悪犯を射殺したりしますね」
「そうだ。多くの犠牲者を出さない為にも。そして彼に戦いを止めさせる為にも」
「その彼と戦う」
「そうなる。ただしだ」
 それでもだとだ。ここでまた言う工藤だった。
「彼は倒さない」
「戦ってもですね」
「俺達は戦うがそれでもだ」
「倒すことが目的じゃありませんかrね」
「戦いを止めることが目的だ」
 剣士達の戦い自体をだ。それでだというのだ。
「そのことはわかっておこう」
「ええ、わかってます」
「そういうことだ。さて」
「それじゃあですね」
「帰るとしよう」
 二人にしてもだ。そうしようと話してだった。
 彼等もテニスコートを後にした。二人がいなくなるとそこはもう元通りのテニスコートだった。戦いの跡なぞ何もない、平和なコートでしかなかった。 
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