久遠の神話
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第十三話 想いの為にその四
「剣士ですからね」
「戦いとトレーニングばかりだからな」
「どうしてもそっちにばかり身体を使って」
「好きなスポーツにまで体力を回せない」
「仕方ないことですけれどね」
こう話すのだった。そのテニスコートを見ながらだ。
そしてその二人にだ。広瀬が顔を向けて尋ねてきた。
「ならいいですね」
「鍵閉まってるね」
高橋はテニスコートを囲んでいるそのフェンスを見て述べた。見ればそのフェンスは完全に閉められている。
「鍵は持ってるのかな」
「鍵は必要ないでしょう」
「ははは、そうだね」
高橋は広瀬のその真面目な問いに笑って返した。
「これ位のフェンスならね」
「どうということはないな」
工藤も言う。
「剣士なら」
「そういうことです。それでは」
「中に入ってからだな」
「戦おうか」
それぞれだ。剣を出してだった。高々と跳んだ。
そのうえでテニスコートの中に入った。広瀬は上の、二人は下のコートに位置して対峙する。二人の間には今はネットはなかった。
そのうえで見合いながらだ。まずは広瀬が言った。
「話通り」
「そうだな。それではな」
「はじめようか」
二人も応えてだ。そうしてだった。三人共剣を構えてだ。
そのうえでだ。それぞれ前に出てだった。
まずは高橋がだ。広瀬の前に出て言う。
「二対一もあれだからね」
「だからですか」
「俺が相手をするよ」
「俺は二人でも別に」
「構わないというのかい?」
「はい」
広瀬は自分の前に来る高橋にだ。こう言うのだった。
「俺は構いません」
「言うね。けれどそれでもね」
「一人で、ですか」
「俺も工藤さんもそういうことは好きじゃないから」
二対一で戦う、それはだというのだ。
「とてもね。ただね」
「ただ?」
「相手が怪物の場合とか。戦力差があると」
そうした場合は別だというのだ。
「その方針も変えるけれどね」
「それではです」
ならとだ。広瀬は高橋に返した。
「俺には二人でないと駄目ですよ」
「果たしてそうかな。俺も工藤さんも」
「いや、高橋君」
だがここでだった。工藤が高橋に言ってきた。
彼も前に出て来てだ。そのうえで高橋に言ったのである。
「彼の言う通りだ」
「えっ、じゃあ彼は」
「強い」
その強さはだ。かなりのものだというのだ。
「俺と君。二人でないとだ」
「相手になりませんか」
「敗れるのは俺達だ」
こうだ。冷静に広瀬を見ながら話すのだった。
「逆にな」
「じゃあそれなら」
「ここは二人で戦おう」
これが工藤の考えだった。そして実際にだ。
その剣をだ。広瀬に対して突いた。そして広瀬はその彼の剣を。
己の手で振り払った。そのうえで言うのだった。
「二人でいいのですね」
「さもなければな」
勝てないとだ。工藤はまた言った。
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