戦国異伝
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第四十九話 認めるその五
「では。宜しいですな」
「はい、それではです」
「我等もまたです」
「織田殿にですl
「仕えましょう」
こうしてだった。彼等は信長の前に馳せ参じ頭を垂れるのであった。信長が彼等を迎え入れたのは言うまでもない。信長にとっては非常に大きなことだった。
伊勢、志摩の兵と今川の家臣達も組み入れた信長はそれに喜んではいなかった。彼はすぐにだ。兵達を集め訓練を行った。
そしてその中でだ。兵の動きを見て言うのだった。
「幾度やってもじゃ」
「といいますと」
「何かありますか」
「弱いのう」
己の兵を見ての言葉だ。
「織田の兵は弱いわ」
「あの、殿それは」
「仰っては」
「弱いことは確かじゃ」
家臣の止める言葉をここでは遮った。そうして言うのだ。
「事実じゃ」
「しかしそれを言えばです」
「兵の士気に関わりますし」
「敵が聞いていれば」
「よい」
だが、だ。信長はこう返してだ。それどころかさらに言うのだった。
「弱いことがわかればじゃ」
「それでもよいのですか」
「我等の兵が弱いことがわかっても」
「弱くともよいのじゃ」
こんなことも言うのである。
「それでもよいのじゃ」
「それはまたどうしてですか」
「弱くともいいとは」
「それはまた」
「弱い兵でもちゃんとした武器を持ち鎧を着ておれば戦える」
まずは装備からだった。
「飯もたんと食ってな」
「飯もですか」
「確かにそれもですな」
「外せませんな」
「飯を食わぬと死ぬ」
信長は簡潔にだ。この真理を言った。
「武器に鎧に飯があればじゃ」
「それで戦ができますか」
「その三つで」
「左様、兵はそれぞれの強さだけではないのじゃ」
このことをわかってだ。信長は言うのである。
「そうしたものも全てあってじゃ」
「では兵の強さよりもですな」
「そうしたものを充実させていきますか」
「あとは数じゃ」
信長の言葉はここで強くなる。
「数があればじゃ」
「戦は数ですな」
「まさにそれですな」
「数で押す」
信長はまた言う。
「どんな相手にもそれじゃ」
「ううむ、では兵は弱くともですか」
「別によいのですか」
「特に」
「ではよいな」
ここまで話してだった。信長は。
その弱い兵をよしとしてだ。今彼等を見ていた。
青い具足と陣笠の者達は確かに弱かった。しかしだった。
槍は長く具足もよい。それにだ。
鉄砲がだ。さらに増えていた。その数は。
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