久遠の神話
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第十二話 一人ではないその四
「もうな。眩しい位だよ」
「眩しいって」
「そこまでなんですか」
「パリの百万ドルの夜景は町の灯りじゃないんだよ」
中田は笑って言う。
「頭の光なんだよ」
「それ本当ですか!?」
上城は中田の話に怪訝な顔になって問い返した。
「パリの夜景って」
「本当だと思うか?」
「まさかと思いますけれど」
「冗談だよ」
それはだとだ。中田はとても楽しそうに答える。
「そこまで凄くはないからな」
「そのフランスでもですか」
「ああ。まあ欧州は昔からな」
「昔から?」
「肉食うしな」
まずは動物性タンパク質だった。
「それに昔の欧州は風呂に全然入らないし当然頭も洗わない」
「それも危険ですよね」
「おまけに頭に脂をつけても今よりずっと質の悪い脂だったからな」
「それで必然的になんですか」
「ああ、そういう人が多かったんだ」
中田はそのことを具体的に話していく。
「しかも向こうの人って毛深い人多いだろ」
「そうですよね。脛毛とか胸毛も」
「凄いだろ」
「僕なんか全然ないのに」
確かに上城に毛深さはない。そうしたことは全くだった。
「そうなんですか」
「そうだよ。男性ホルモンが多いとな」
禿やすい。そうしたものだった。
「で、欧州は昔からな」
「日本よりずっとだったんですね」
「今もだな。禿が多いんだよ」
「成程。そうなんですね」
「で、まあその禿と鬘だよな」
料理をしながらだ。中田は話していく。
「そのタレント実は髪の毛殆どないらしいんだよ」
「殆どなんですか」
「ある番組じゃ鬘が取れたらしな」
そうしたこともあったというのだ。
「そんなこともあったってな」
「それ本当ですか!?」
樹里はそのタレントを見続けながら尋ねた。
「けれど実際には」
「そこはカットされたんだよ」
そうなったというのだ。
「鬘が取れた部分はな」
「そうなんですか」
「ああ、とにかくそのタレントの頭はな」
「本当はなんですね」
「髪の毛ないからな」
そうした話をしながらだ。中田はパスタを茹でソースを作っていく。ソースは何種類かパックを茹でている。そのうえで大蒜を炒めているのだ。
そこにだ。チャイムが鳴ってだった。
「出てくれるか?今作ってる最中だからな」
「はい、じゃあ僕が」
上城が応えてだ。応対に出る。聡美の声がした。
「こんばんは」
「銀月さんです」
その声を聞いてからだ。上城は中田に述べた。
「来られました」
「中に入る様に言ってくれ」
「わかりました」
上城は調理をしながら言う中田に応えた。そうして彼が言うままチャイムの向こうの聡美に告げた。そのうえで彼女に入ってもらった。
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