久遠の神話
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第十話 偶発戦その七
「俺のところに来た理由は」
「剣士というだけでわかるんじゃないかな」
これが男の返答だった。
「君も剣士なら」
「そうだな。それならな」
中田もだ。男のその言葉に納得して頷いた。
「はじめるんだな」
「場所を変えようか」
「バイクに乗ったまま闘うじゃないんだな」
「それも面白いがそれでもな」
「バイクから降りてじっくりと闘いたいんだな」
「そういうことだ。それでいいあ」
「まあな。俺はどっちでも闘うなら闘うからな」
中田は闘うのならだ。結局どちらでもいいというのだった。
「それじゃあな」
「それで場所はだ」
「ああ、何処なんだ?」
「ここから少し行ってだ」
そうしてだというのだ。
「右に曲がる。そこのビルの屋上がいい」
「そこで闘うんだな」
「それでどうだ」
正面を向きながらだ。男は話してきた。
「では今からな」
「行こうか」
中田も頷いてだ。そうしてだった。
二人は横に並んでそのビルに向かいだ。ビルの前でバイクを止めた。
男はバイクから降りた。そうしてヘルメットを脱ぐと。
いきり立った感じの目元が太くなっている吊り上がった眉に鋭く強い光を放つ目の精悍な顔の青年だった。歳は中田と同じ程だ。
口は引き締まり横一文字でやや大きい髪は横を短くしており上を伸ばしている。その男が言うのだった。
「広瀬友則だ」
「広瀬?っていうとあんた」
「知っているか」
「あれじゃないか。うちの学校の二年で乗馬部の」
「その部に所属させてもらっている」
その男広瀬の方もこう答える。
「君と同じ大学なのは知っていた」
「そうか。で、誰に教えてもらったんだ、それを」
「声にだ」
広瀬は答えた。
「声に教えてもらった」
「ああ、あれな」
そう言われるとだ。中田もすぐわかった。
「あの声な」
「心当たりはあるんだな」
「ない筈がないだろ」
笑ってだ。彼は広瀬に返した。
「俺も剣士だからな」
「そうだな。それでは」
「戦うんだな」
「逃げるならそれでいい」
それならそれで構わないといった口調だった。
「次に倒す」
「言うな。まあそっちが剣を出して来たらな」
中田はここでは己の考えを述べた
「俺は戦うからな」
「そうするか」
「そうだよ。俺は剣を抜いた相手と戦うんだよ」
この考えをだ。広瀬に述べるのである。
「そういうことなんだよ」
「成程。君の考えはわかった」
「で、あんたはどうなんだ?」
「俺は相手が剣士なら相手がどういった状況でもだ」
「戦うんだな」
「怪物も同じだ」
怪物についてもだ。そうだというのだ。
「俺は戦う。生きる為にな」
「話はわかった。あんたの考えもな」
「それじゃあいいかな」
中田を見てだ。広瀬はだ。
その手にだ。剣を出してきた。それは。
六つの牙がある、そうした剣だった。色は緑だ。
その緑の剣身を見てだ。中田は言った。
「木なんだな」
「そうだ。俺の剣は木だ」
まさにだ。木だというのだ。
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