戦国異伝
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第四十五話 幸村先陣その十二
「その器をどんどん造るのじゃ」
「して売ると」
「それもじゃ」
「考えられますな。そうしたところまでとは」
「先に言った通り関所も廃しておるから人の往来も多くなってるしのう」
「余計にですか」
「ものを売るには人が多い方がよい」
信長はこんなことも言った。
「やはりな」
「だから関も廃されたのですか」
「無論不埒者も入る」
そのこともだ。信長はわかっていた。
そのうえでだ。こう池田に話すのだった。
「それに対してはじゃ」
「今の様に治安を徹底させますか」
「そうじゃ。どのみち悪党は捨てはおけぬ」
実際に罪を犯した者は尾張では徹底的に追われ罰せられる。そのことはだ。信長は既に行っている。だから尾張の治安はかなりいいのだ。
それもだ。彼は言うのだった。
「そうしておるからじゃ」
「して不埒者にはですか」
「国に入った時に容赦せぬ。それにじゃ」
「それに?」
「真に怪しい者には関も通じぬ」
この様なこともだ。信長は言うのだった。
「現にあの津々木じゃ」
「あ奴でございますか」
「そうじゃ。あの頃はまだ尾張に関はあったな」
「廃している最中でしたが」
「それでもあったな」
「はい、ありました」
しかしそれでもだというのだ。信長はその津々木から話を進めるのだった。
「そうじゃな。あったな」
「しかしそれでもあの男は入って来た」
「だからですか」
「関は案外役には立たぬ」
信長の目でだ。密偵やそうした者に対してはというのだ。
「忍の者は山道でも何でも入りおるわ」
「それに化けますし」
「左様じゃな。それを見分けるのは容易ではない」
忍の者達についても話が為されていく。
「現に久助や小六達じゃ」
「確かに。滝川殿は」
「見分けられまい、あれの手の者達が化けると」
「はい、確かに」
「忍に関は無意味じゃ」
こうまで言うのであった。
「だからじゃ。関は廃する」
「そうして人の往来を盛んにさせておられるのですか」
「入って来た者は国の中で悪さをさせぬ」
その為の治安であった。まさにそうであった。
「そういうことじゃ」
「そうでしたか。殿はそこまで考えておられたのですか」
「関も必要なら設けるがな」
こうした殉難さも併せ持っている信長だった。そうしたことも忘れてはいない。
そうした話をしてだった。彼等はだ。
信長は池田にだ。こう言うのであった。話が変わった。
「さて、それではじゃ」
「それでは?」
「馬に乗って来る」
笑ってだ。それだというのだ。
「馬にな」
「馬ですか」
「そうじゃ。馬じゃ」
笑顔のままの言葉であった。
「身体を動かしたくなったわ」
「では御供を」
「そうじゃな。他の者も呼ぶか」
池田だけでなくだ。他の者もだというのだ。
「馬に乗るのなら多い方がよい」
「だからこそですか」
「そうじゃ。他に誰がおる」
「今は」
池田は少し記憶を辿ってからだ。こう主に話した。
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