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久遠の神話

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第九話 戦いの意義その九


「阪神ファンでもですか」
「愛知も巨人でなければいい」
 このことは関西と同じだった。東海も巨人でなければいいという土壌があるのだ。
「そうだったからな」
「いいですよね、最近の阪神」
 高橋は阪神の輪をしながら羨ましそうに言った。
「俺生まれも育ちも横浜で」
「ベイスターズだな」
「ええ、もうあの優勝は遠い昔で」
 一九九八年だ。それはもう過去のことだというのだ。
「今ではあの有様ですから」
「昨日も負けたな」
「今シーズンもぶっちぎりの最下位ですから」
「今シーズンもか」
「はい、ダントツです」
 下から数えてだ。そうだというのだ。
「もうどうしようもないですね」
「気持ちはわかる」
 工藤はそうしたぼやく高橋に神妙な声で応えた。
「阪神も昔はそうだったからな」
「けれど星野さん来て変わりましたよね」
「横浜も何時かそうなるだろう」
「だったらいいんですけれど」
 高橋は運転しながらぼやき続ける。
「本当に」
「晴れない日はないしな」
「ええ、何時かはですね」
「だが巨人は晴れなくていい」
 そしてだ。工藤が言うことは。
「巨人が永遠に最下位になればいいがな」
「ですよね。あのチームこそがですね」
「そう思うがな」
「全くですよ」
 そんな話をしてからだった。工藤は戦いについてだ。あの一佐に話したのだった。
 場所はまた地連だ。そこでだ。
 一佐に話す。一佐はその話を聞いてだ。
 工藤にだ。こう言ったのだった。
「わかった。ではだ」
「はい、ギリシアです」
「欧州局にも知り合いがいるしな」
「そちらに御願いしてですね」
「調べてもらう」
 このことを工藤に約束する彼だった。
「これでいいな」
「有り難うございます」
「それにしてもだ」
 工藤の話を受けてからだ。彼は。
 あらためてだ。こう工藤に言った。
「君達を入れて四人か」
「そうですね。剣士の中で」
「そしてそのうちの三人がだな」
「戦いを終わらせたいと考えています」
「いいことだ」
 一佐はだ。工藤の報告を聞いて満足した面持ちで述べた。
「こうした戦いはな。どうもな」
「自衛隊としてはですね」
「やるべきではない」
 そうだとだ。一佐は言い切った。
「その個人の欲望を満たす為の戦いなぞはな」
「何にもなりませんね」
「若し君がそうした欲がありだ」
 工藤がそうだったならというのだ。
「戦っていたならだ」
「その時はですね」
「君は自衛隊を辞めていたな」
「そうですね。その時は」
「そして何を望んでいた」
 具体的にどうした野心を持ったかというのだ。その場合は。
「君は」
「そう言われてもすぐには」
「思い浮かばないか」
「私も人間ですし」
 決して聖人君子ではない。欲がない訳ではない。ならばだというのだ。
「お金も欲しいですし」
「まずは金か」
「彼女も欲しいです」
「権力はどうだ」
「それは特に」
 いらないというのだ。それはだ。 
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