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久遠の神話

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第九話 戦いの意義その一


                    久遠の神話
                 第九話  戦いの意義
 工藤は今高橋と共にいた。場所はある中華料理店だ。
 昔ながらの古い感じの店であり品書きは手書きで内装は木造でだ。カウンターも椅子もだ。幾分か古ぼけ胡椒の瓶もぬるみがありそうだ。
 そんな懐かしささえ感じる店の四人用の席に向かい合って座りだ。二人は話していた。
 どちらも今はスーツ姿だ。その姿で彼等は話していた。
「俺は今度だ」
「昇進されるそうですね」
「ああ、一尉になる」
 二尉からだ。そうなるというのだ。
「そう伝えられた」
「おめでとうございます」
 白い、やはり伝統さえ感じられる細長い皿の上にある餃子を箸で取りそのうえでラー油を入れた醤油につけて口の中に入れて。
 そのうえでだ。高橋は笑みを浮かべて工藤に述べた。
「昇進はやっぱりいいですよね」
「いいがそれはだ」
「それは?」
「君に合わせてのことだ」
「俺にですか」
「君は警部だな」
「まあ特例で」
 そうなったことをだ。工藤に話した。
「ですけれどね」
「その君に合わせてだ」
「工藤さんもですか」
「一等海尉になることになった」
「それも急にですね」
「いや、前から話はあった」
 工藤はレバニラ炒めを食べながら話した。
「その話はな」
「それが正式に決まったんですね」
「警部は確かだ」
「軍隊じゃ将校待遇になるんでしたっけ」
「そうらしい。それでだ」
 彼はだ。昇進したというのだ。
「一等海尉、大尉として君に指示を出せるからだ」
「ああ、それでなんですね」
「俺の方が年齢が上で剣士になった時期も早くてだ」
「そういうことになったんですか」
「一応俺は君に指示を出す立場になった」
 工藤はこのことも高橋に話した。
「だがそれでもだ」
「やることは今まで通りですね」
「それは変わらない」 
 そのクーラーもどうにもあまり効いておらず食欲をそそらせる油と調味料の匂いに満ちた店の中でだ。工藤はこう彼に話した。
「何一つとしてな」
「ですね。けれど俺達はそれでいいとして」
「問題はだ」
「はい、あの二人ですけれど」
 高橋は今度は炒飯を食べている。
「どうですかね」
「あの高校生の彼は」
 工藤は上城から話した。
「いいね」
「そうですね。性格も見ているものも」
「上城君だったな」
「はい、そうです」
「彼は大丈夫だと思う」
 こうだ。確かな顔で高橋にも話す彼だった。
「我々と同じく」
「戦いを終わらせることに協力してくれますね」
「無意味な戦いだ」
 工藤は言い捨てた。完全否定の言葉だった。
「まさしくな」
「そうですね。勝って何かを得る為の戦いなんて」
「そんな戦いはしないに限る」
「けれどあれですよね」
 高橋はここで言った。その炒飯を中華風の陶器のスプーンで食べつつ。その炒飯の横にはトリガラスープがある。小さな容器に入れられている。
「俺達のどっちも生き残って何かを得ようと思わなかったのが」
「よかったな」
「はい。俺も工藤さんもそうした望みはないですから」
「野心はな」
「ただ。国民の平和を守りたい」
「そう思うだけだ」
「剣士の望みは自分が心から望むものでないと駄目っていうのも」
 それもよかったと。高橋は言った。 
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