久遠の神話
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第八話 二人の剣士その十一
「こうして」
「そのことも話そうか」
「場所を替えて」
「はい、御願いします」
「それじゃあ」
樹里と上城が応えてだった。そうしてだ。
一同は港からレストランに移った。そこはファミレスだ。
六人用の大きな席に座る。工藤と高橋、そして四人が向かい合いそうしてだ。それぞれ紅茶やコーヒーを飲みながら。お互いのことを話した。
まずは中田と上城の事情が話され。続いてだった。
工藤と高橋の番になる。そこでだ。
まずはだ。工藤はこのことから話した。樹里を見て話すのだった。
「敬礼だけれどね」
「そのことですか」
「うん、俺の敬礼は海上自衛隊の敬礼なんだ」
彼が今いるだ。そこのだというのだ。
「その敬礼なんだ」
「海上自衛隊のですか」
「船の中にいるから狭くて」
海自は海、即ち船の中で働く世界だからだというのだ。
「だからね」
「それでなんですか」
「そう、肘を畳んで敬礼をするんだ」
「それは海上自衛隊だけですか?」
「どの国の海軍もそうだよ」
海自だけではないというのだ。
「どの国もね」
「じゃあ高橋さんの敬礼は」
「警察の敬礼は陸軍式なんだ」
「陸軍。陸上自衛隊ですか」
「そう、その敬礼なんだ」
「どうして陸軍の敬礼ですか?」
「陸にいるからだよ」
もっと言えば海にはいないからだ。肘を畳む必要はないというのだ。
「だからだよ」
「ううん、狭くないから肘を畳む必要はないんですね」
「そうなんだ」
こう話すのだった。二人はだ。
それを聞いてだ。樹里は納得したのだった。それからだ。
二人はだ。あらためて言ったのだった。
「それで俺達が剣士になったことだけれど」
「それを話そうか」
「御願いします」
応えたのは上城だった。彼は自分の前にホットティーを置いている。一緒に置かれているのは何もない。コップとスプーンだけだ。
何も入っていない紅茶を飲みながらだ。話すのだった。
「是非」
「それではな」
「話すよ」
こうしてだった。まずは工藤からだった。己のことから話した。
「俺は高校を卒業して二年で下士官になって二十五で幹部になった」
「出世早くないか?」
「俺のコースではそれが可能だ」
そうだとだ。中田にも話すのだった。
「元々そういうコースだからな、曹候補学生はな」
「へえ、いいコースだな」
「そうして幹部として横須賀の船で勤務していた」
「それでそこで、だよな」
「そうだ。ある日のことだ」
話がだ。いよいよ動いてきた。
「俺が仕事から帰って宿舎に戻ろうとすると」
「そこで、ですね」
聡美が言った。
「声がしてきたのですね」
「わかるんだな、そこは」
「はい、中田さんと上城君も同じですから」
「そうなんだよな、それはな」
「声がしてきてそれで、でした」
二人もここで話す。
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