戦国異伝
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第四十四話 元康の決断その五
その中で明智は朝倉家に仕えていたこともあるのだ。彼は細川に対してその頃のことも話した。
「時期は短いものでした」
「確か斉藤家からここに来られるまでの僅かな間でしたな」
「はい、お仕えすることは許されましたが」
それでもだとだ。明智は今一つ優れない表情で話していく。
「ですが」
「しかしなのですか」
「私は朝倉の当主義景様に好かれなかった様で」
「重く用いられなかった」
「はい、そうでした」
まさにだ。その通りだというのだ。
「残念なことにです」
「そうですか。主殿にですか」
「どうやら朝倉は家臣に家柄を強く求める家の様で」
「そうですね。あの家はですね」
「そうした国ですね」
「だからです」
それでだとだ。明智は彼自身がどうしたかを話すのだった。
「私は宗滴殿に言われまして」
「そうしてここにですか」
「私の仕えるべき主を見つけよと」
「それが公方様だったのですね」
「少なくとも今の公方様につきましては」
当代の将軍であるだ。義輝についてはどうかというのだ。
「私はお仕えさせて頂いています」
「そうですね。ただです」
「ただ、ですか」
「はい。義輝様の弟君や御親族の義栄様は」
「そうですね。どなたも」
「義輝様だけです」
あくまでだ。彼だけだというのだ。
「私がお仕えしたいのはです」
「私も。義輝様がおられなければ」
「幕府を去られますか」
「少なくとも幕府を壟断せんとしている三好につくつもりはありません」
近畿のかなりの部分は三好が治めている。彼等は都にも力を伸ばしておりそこにいる幕府にもだ。何かと介入していきているのだ。
そのことを嫌ってだ。彼等は話すのだった。それは細川も同じだ。
「どうしてもです」
「そうですね。私も幕府にはいたいのですが」
「義輝様の後ですね」
「その方が義輝様の御子ならばよいのですが」
「若しそうでなくあの方々でしたら」
「考えさせてもらいます」
「私もですね」
そうした話をしてからだ。あらためてだ。明智は信長について話すのだった。
「それで織田殿が美濃まで手に入れられます」
「そうなるとかなりの勢力になっていますね」
「まず尾張です」
他ならぬだ。織田の本拠地だ。まずはこの国からだった。
「そしてそこに伊勢、志摩、美濃」
「あとは」
「飛騨もでしょう」
その国もだというのだ。美濃の北にある。
「飛騨の三木殿はそこまで力を伸ばされた織田殿につかれるでしょうから」
「ではそれで五国ですね」
「そして六万近い兵を手に入れられます」
その六万に及ぶ兵を支える国力もだ。明智は話した。
「二百五十万石に近いまでの」
「あの五国を合わせたらそれだけになりますね」
「それだけの力を持つ家となると天下にはほぼおりません」
そこまでの家になるというのだ。織田が。
「そしてその兵で」
「織田殿はどうされるでしょうか」
「そこからが見るべきものになると思います」
信長が美濃まで手に入れるのはもう読んでいた。だが問題はそこからだというのだ。明智は先の先まで読んでいるのだった。
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