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久遠の神話

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第八話 二人の剣士その二


「苦労するわ」
「じゃあヨーロッパは?」
「そこもちょっとね」
 困ると言う樹里だった。そちらもだ。
「似た名前多いし」
「というか同じ名前が?」
「フランスの王様って何なの、あれ」
「ルイ?」
「十四世とか十六世とか」
 一方が太陽王でもう一方がフランス革命で殺された王だ。
「他にもイギリスだとチャールズで」
「今のあちらの皇太子も同じ名前だしね」
「何人いるのよ、同じ名前が」
 困った顔で腕を組みだ。樹里は話す。
「一体全体」
「他にもフリードリヒとか?」
「何人もいるから」
 とにかく覚えにくいというのだ。
「困るのよ、二世とか三世とかって言われても」
「ううん、そんなに難しいかな」
「私にとってはね」
 そうだとだ。樹里は言い続ける。
「そうなのよ」
「成程ね。僕はね」
「上城君は?」
「物理が」
 それが駄目だというのだ。
「こんなの取るんじゃなかったよ」
「ああ、物理ね」
「全然わからないよ」
 苦笑いで言う彼だった。
「もう何が何か」
「あっ、物理ならね」
 今度は樹里が言うのだった。明るい顔になって。
「わかるわ」
「あっ、わかるんだ」
「理系は得意だから」
 それでだ。わかるというのだ。
「見せて。何処がわからないの?」
「この力学のところがね」
 テキストを見せてだ。上城は話す。
「もう何が何なのか」
「ああ、それね」
「難し過ぎない?」 
 困った顔になってだ。上城は言った。
「力学って」
「確かにね。物理自体がね」
「異常に難しいよね」
「難しいのは確かね」
 樹里もそのことは認める。しかしだ。
 それでもだ。彼女はこう言うのだった。
「けれどコツがあるから」
「コツって?」
「上城君数学の文章問題は得意?」
「一応できるよ」
 これが彼の返事だった。
「まあ。数学自体は」
「それなりに得意?」
「赤点取ることはないから」
「平均して何点位なの?数学は」
「六十点位だよ」
 それ位だというのだ。
「うちの学校赤点は四十点以下だけれど」
「まあ。充分合格よね」
「うん、いいとは思わないけれど」
「まあ。それ位あったら」
「いいかな」
「数学はね。それで」
 数学に終わらないとだ。樹里は言ってだった。
 そうしてからだ。物理に話を戻してだった。
「それ物理にもいいから」
「物理にもなんだ」
「要するに。物理は数学なのよ」
「あれっ、そうなんだ」
「それも文章問題なのよ」
 それがだ。物理だというのだ。 
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