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久遠の神話

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第八話 二人の剣士その一


                   久遠の神話
                 第八話  二人の剣士
 上城は数日は平和に過ごしていた。だが、だった。
 平和は平和でもだ。暇ではなかった。
 それは何かというとだ。学生の本分を果たしていた。
 放課後学校の図書館でだ。樹里と共にだ。
 その本棚と本に囲まれた中でだ。彼はだ。
 向かい側の席に座る樹里に話した、図書館の中は蛍光灯に照らされ明るい。そして木の黄色と壁の白でだ。落ち着いた雰囲気にあた。
 その雰囲気の中でだ。彼は言うのだった。
「今回のテストって」
「範囲広いわよね」
「特に世界史がね」
 そこが問題だというのだ。
「広いよね」
「そうね。何でこんなに広いのかしら」
 困った顔でだ。樹里は言った。
「また今回は」
「ううん、何でかな」
「他の科目も広いけれど」
 それでもだというのだ。世界史はだ。
 特に範囲が広くてだ。二人も困っていた。
 だが、だ。テストはテストでだ。二人は。
 今必死に勉強していた。その中でだ。
 樹里はだ。彼に尋ねたのだった。
「隋の後の中国の王朝って何処だったかしら」
「唐だよ」
 上城はすぐに答えた。
「その国だよ」
「そう。あの国だったわね」
「それであの国で覚えないといけないのは」
 そのだ。唐についてはというのだ。
「まず律令制と」
「それと三省六部?」
「その省と部は」
「やっぱり全部覚えてよね」
「国ができたのは六百十八年で」
 建国の年はだ。まさに基本だ。これはこの国だけのことではない。
「それと途中玄宗皇帝が出て来たね」
「ああ、楊貴妃のね」
「そう、その人」
「確か安史の乱が起こって」
 樹里もだ。ある程度はわかっていた。学校の授業で習ったからだ。
「そうして唐自体が変わっちゃうのよね」
「節度使が出て来てね」
 この存在もこの国の歴史では重要だ。
「あとは」
「黄巣の乱だね」
 中国の歴史上最大の叛乱である。何と唐全土を巻き込んだ未曾有の大乱だ。中国の歴史においても非常に重要な叛乱であるのだ。
 それについてもだ。上城は樹里に話した。
「それも覚えないとね」
「それで唐が潰れるのよね」
「黄巣の乱で実質ね」
「で、潰れたのが何年だったかしら」
「九百七年だよ」
 また答える上城だった。
「その年に潰れて」
「それでなの」
「そう、それでね」
 次の時代になるのだ。その時代は。
「五代十国になるんだ」
「あれっ、五胡十六国じゃなかったの」
「五代十国だよ」
 上城は樹里にこう話す。
「五個十六国は晋の後だから」
「ああ、そうだったの」
「そう。そこが違うから」
 こう話すのである。
「中国の歴史も結構似た記述が多いんだよね」
「そうよね。国の名前はいつも一文字だし」
 中国の王朝の特徴だ。それが慣わしだったのだ。
「同じ国の名前があったりするし」
「そういえばあるね」
「その晋にしても」
 五胡十六国の前のその統一王朝にしてもだというのだ。樹里は困った顔で話す。
「なかったかしら。前に」
「春秋時代にあったよ」
「そうよね。同じ名前の国が」
「他にもそういう国ってあるよね」
「だから覚えにくくて」
 困るとだ。樹里はまた言う。 
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