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久遠の神話

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第七話 中田の言葉その十三


「よくな」
「そうですか。私は」
「君は予定はないか」
「残念ですが」
 ないとだ。二尉は答えた。
「今のところはありません」
「見合いでもしたらどうか」
「見合いですか」
「君も幹部だ」
 自衛隊では普通の軍で将校と呼ぶのをこう呼んでいるだ。あくまで軍ではないという苦しい建前がここでも出てしまっているのだ。
 つまり尉官からが幹部になる。その幹部ならばというのだ。
「身を固めなければな」
「二十代で、ですか」
「君は確か」
 二佐は今度はだ。二尉のことを述べた。
「高校を卒業してすぐだったな」
「はい、それで入隊しました」
「曹候補学生だったな」
「それで海上自衛隊に入隊しました」
 かつてあった二年で下士官、即ち曹になれる制度だ。今では別の制度になっている。
「それです」
「七つボタンだったか」
 二佐はこんなことも言った。
「詰襟の」
「海自では候補学生はその制服でした」
「予科練だったか」
 かつて海軍にあったパイロット養成課程だ。かなりの人気があった。
「その制服だったな」
「それをそのまま着ていました」
「海自さんはそうだったな」
「陸自さんは違っていたのですね」
「空自さんもそうだ」
 つまりだ。海自だけだというのだ。
「制服が課程よって違うのはな」
「セーラー服といいですね」
 もっと言えば海自は階級によっても制服が変わる。士、即ち兵士は海軍伝統のセーラー服なのだ。ここが大きな違いであるのだ。
「そこが全く違いますね」
「そうだったな。それでその候補学生で」
「はい、入隊しました」
「それでか」
「二十で三曹になり」
 二年でそうなるシステムだからだ。これは当然だった。
「二十五で幹部候補生になってです」
「そして今か」
「はい、今は二十八歳です」
 自分で年齢も言ってのことだった。
「そうなります」
「では結婚してもいい頃だ」
「二十八で、ですか」
「もっと若くてもいい位だ」
 そこまでだという二佐だった。
「結婚はな。私は二十四で結婚した」
「二十四で」
「そうだ。そしてだ」
「今はですか」
「単身赴任だ」
 それであった。
「これまで何度もあったがな」
「そうですね。幹部になるとさらにですね」
「下士官なら別だがな」
 それに兵もだ。彼等は基本的にそれぞれの地域から動かない。しかしだ。
 幹部、それも階級があがるとさらにだ。転勤が全国規模になりなのだ。
 転勤が増えしかもだ。あきこちに行くことになりなのだ。
「幹部の宿命だ」
「私にしてもです」
「君は元々舞鶴か」
「はい、舞鶴教育隊からはじまりました」
 そのだ。曹候補学生からだというのだ。 
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