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戦国異伝

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第四十一話 奇襲その二


「そのことはな」
「では、です」
「そうだ。このまま兵糧攻めにしてよい」
「畏まりました。それでは」
「このまま囲んで。そうして兵糧が尽きるのを待ちましょうぞ」
 こうしてだった。元康は鷲津を兵糧攻めにすることにしたのだった。
 しかしだ。その中でだった。彼はこうも思うのだった。
「だが。気になるのはだ」
「気になるといいますと」
「それは一体」
「何がでしょうか」
「やはり。織田殿だ」
 他ならぬだ。信長だというのである。
「あの方が何をされるかだ」
「そのことがですか」
「やはり。清洲に篭もったままではないと」
「何か仕掛けてくるというのですね」
「殿はそう思われていますか」
「うむ、織田殿が篭城されるとは思えぬ」
 いぶかしむ顔での言葉だった。
「だから。きっとだ」
「では美濃との境にいる主力を呼び戻し」
「そのうえで、ですね」
「我等と戦う」
「そうしてきますね」
「それが妥当か」
 元康もだ。そう考えているのだった。
「一万を優に超える数になるからな」
「それだけの数があればですね」
「それなり以上に戦えます」
「この大軍とも」
「さすればですね」
「そう思うがな。果たしてどうされるか」
 元康はさらに述べる。
「それが気になるな」
「うつけ殿とも言われてますが」
 家臣の一人がよく言われていることを話した。
「そうした方では」
「違う」
 それはだ。元康は断言した。絶対にそうではないとだ。
「織田殿はうつけではない」
「断じてですか」
「左様。間違ってもそうではない」
 うつけではないとだ。話すのである。
「あの方は底知れぬ方ぞ」
「ではその織田殿がこのままではないと」
「そして何かをしてくると」
「その何がわからないというのですね」
 家臣達も話していく。そしてだった。
 そうした話をしてからだ。元康は言うのだった。
「さて、夜も遅い」
「それではですね」
「これで、ですか」
「話を終えるとしよう」
 実際にこう話す元康だった。
「今はな」
「はい、ではまた明日に」
「集りましょうぞ」
「そうするぞ」
 こう告げてだった。元康も家臣達もそれぞれの場に戻り休むのだった。元康はこの時にだ。己の小姓達を見てふと思うのだった。
「三河の者達は頼りになる」
「有り難きお言葉」
 すぐに小姓達が応える。謹厳そのものの態度で控えている。
「そなた達がいてこそじゃ」
「我等がですか」
「いてこそなのですか」
「そうじゃ。わしがあるのだ」 
 こう話すのである。
「今のわしがな。だが」
「だが?」
「だがといいますと」
「忍も欲しい」
 難しい顔での言葉だった。 
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