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戦国異伝

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第三十五話 奇妙な砦その四


 そうしてその顔でだ。こう十勇士達に述べる。
「わしなぞがそうなれるのか」
「やがてわかります、それは」
「そして後の世に語られます」
 また己の考えを述べる十勇士達だった。
「我等の目に狂いはありません」
「ましてや一人や二人が言っているのではありません」
「全員が言っていることです」
「我等十勇士全てがです」
 彼等の言葉は変わらない。考えもだ。
 そうした考えでだった。彼等はだ。
 あらためてだ。幸村に対してこう話したのであった。
「だからです。駿河で戦になればです」
「殿は素晴らしい戦を見せられるでしょう」
「そのお心もです」
 そうしたこともだ。全てだというのだ。 
 その話をしているうちにだ。馬と十勇士達は進む。やがてだ。
 館が見えてきた。それを見て言う幸村だった。
「おお、もう見えてきたな」
「思ったより早いですな」
「もう見えてきましたか」
「うむ、馬に乗っているせいか」
 幸村は早く着こうとしているのは馬のせいかと思った。しかしであった。
 十勇士達を見る。彼等もであった。
 そしてそこからだ。ある答えを出したのである。
「御主等、馬並に早く歩けるのか」
「これ位造作もないことです」
「忍ですから」
 だからだというのである。
「何ならより速く歩けますが」
「普通にです」
「それが凄いわ」
 まさにだ。そうだというのである。
「わしとて。歩いてはじゃ」
「いやいや、殿もです」
「かなりの速さですが」
「左様です、我等と変わらないまでです」 
 実際に幸村の歩く速さはかなりのものだ。その体力もだ。彼の武勇はそうしたところからも発揮されているのだ。それだけの身体を持っているのだ。
「武勇は我等以上です」
「忍の術も使えるではありませんか」
「忍の術はのう」
 幸村は実際にその術も使える。武士の武芸だけではないのだ。
「十八般の一つだからのう」
「十八般は全て身に着けられると」
「そういう御考えなのですか」
「そうじゃ。極めるつもりじゃ」
 こう言うのがだ。まさに幸村だった。
「身に着けるとはそういうことじゃ」
「それが殿なのです」
「だからなのです」
 十勇士達はまた話す。
「歩くのもです」
「尋常なものではありませぬ」
「忍の術故じゃな」
 そのせいで歩くことが速くなった。幸村は己で分析した。
「それでじゃな」
「はい、左様です」
「忍の術でも我等の棟梁たるに相応しい」
「全くです」
「ふむ。それではじゃ」
 幸村は彼等の話からだ。こう結論を出したのだった。 
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