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戦国異伝

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第三十一話 尾張への帰り道その六


「そうは思わぬか、御主も」
「流石にそれは無理だと思いますが」
「覚悟ができぬか」
「到底。無理でございます」
 滝川にしてもだ。それはだというのだった。
「やはり。こうしたことは気付かれずしてですから」
「だからだというのか」
「左様でございます」
「ふむ。気付かれてもあえてやる位でなければのう」
 まだ言う信長だった。
「駄目なのじゃがな」
「ですからそれは」
「わかった。ならよい」
 ここまで聞いてだ。そしてであった。
 信長はあらためてだ。滝川にこう告げるのだった。
「してじゃ」
「してといいますと」
「久助、御主も飲め」
 笑顔になってだ。それで滝川に茶を勧めるのだった。
「そうせよ。飲め」
「それがしもでございますか」
「そうじゃ。飲め」
 また彼に告げる。
「そうせよ。よいな」
「わかりました」
 滝川もだ。主の言葉に応えてだ。そのうえで茶を受け取るのだった。
 信長自ら茶を淹れてだ。そうして飲ませるのだった。
 飲むとだ。それで、であった。
 茶の旨味が口の中を支配してだ。笑顔になって話すのだった。
「茶はいいですな」
「ほう、御主もそう言うのか」
「前から茶は好きでしたが」
 それでもだというのだ。ここでだ。
「こうして一仕事終えた後、喉が渇いた時の茶はです」
「水以上によいな」
「はい、非常に」
 滝川にしては珍しくだ。こう述べるのだった。
「美味でございます」
「ではもう一杯飲むがいい」
 滝川にだ。もう一杯勧めるのであった。
「よいな」
「そうして宜しいですか」
「好きなだけ飲め」
 信長もまた笑顔になってだ。信長に話す。
「よいな。そうせよ」
「はい、それでは」
 こうしてだった。そのうえでだった。
 彼等はそのまま飲む。そうしたのだ。
 その茶会を楽しみだ。それが終わってからだ。
 信長達はまた帰路に着くのだった。その中でだ。
 金森がだ。こんなことを言うのであった。
「こうして野外で開くのもいいものですが」
「それでもだというのじゃな」
「左様です。平手殿はこうしたことにはまた怒られるかも知れませんな」
「爺は融通が利かぬからな」
 それはだ。信長が最もわかっていることだった。
 そのことを話すとだ。余計にであった。
「まあ爺に野外での茶会なぞはだ」
「怒らせる何よりの理由になりますな」
「うむ、茶は茶室、若しくは屋敷の中でするもの」
 平手がそう考えていることはだ。実によくわかった。
「それではじゃ」
「やはり怒られますな、平手殿は」
「それはいいことでござるな」
 しかしだ。ここで満面の笑顔で言う者がいた。
 慶次だ。彼に他ならなかった。
「では。ここは是非」
「待て、この悪戯小僧」
 その慶次にだ。すぐに柴田が告げた。 
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