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戦国異伝

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第三十一話 尾張への帰り道その四


「悪戯小僧というか」
「童心というか」
「それをお持ちの様ですな」
「一度やったことは絶対に覚えられてしまう」
 信長はこう彼等に返す。
「だからじゃ。同じことはせんことじゃ」
「策ですか」
「その意味もありますか」
「そうじゃ。確かに悪戯にもなるがのう」
 それも忘れない。やはり彼は童心を持っている。
 だがここで策も淹れる。その辺りが信長だった。
 童心の中に策を入れながらだ。そのうえでまた話すのだった。
「まあ今から考えておる」
「左様ですか」
「既にでございますか」
「刺客の者達の場所じゃが」
 信長は滝川に顔を向けた。その彼にだ。
「それはわかるか」
「はい、既に」
 滝川はそこまで調べて把握していた。既にである。
 そしてだ。その場所までだ。主に話すのだった。
「ここから二里先に行った宿にでございます」
「そこか」
「はい、そこにいます」
 また話す滝川だった。
「そこにいますが。どうされますか」
「うむ、それではじゃ」
 ここまで聞いてだ。すぐにであった。
 信長はまた滝川に顔を向けてだ。そのうえでだ、彼に対して告げた。
「久助、それではじゃ」
「はい、それでは」
「そなた、すぐにその宿に向かえ」
 こう彼に告げるのだった。
「そしてじゃ。わしの茶会に招くのじゃ」
「そうせよというのですか」
「これから実際にこの辺りで茶会を開く」
 実際に開くというのだ。その茶会をだ。
「幸い粗末だが茶器は持って来ておるしな」
「何と、ここにもですか」
「持って来ておられたのですか」
「そうだったのですか」
「何時か開こうと思っておった」
 ここで本音も出た。
「しかし。その機会がなくてのう」
「それでなのですか」
「茶器も持って来ておられたと」
「しかし今ここで役に立った」
「そうなりますな」
「うむ、茶会が開けて何よりじゃ」
 信長はそのことを純粋に喜んでいた。茶は彼の愛するところである。野外での茶会もだ。彼は時折だが開いているのである。
 そしてそこにだ。家臣達も招くのだ。時にはその傍に来た民百姓も大勢入れることもある。彼は茶を一人で楽しむ男ではないのだ。
 それでだった。実際にであった。
「ではじゃ。久助よ」
「わかりました。刺客達も」
「茶に呼べ。共に飲もうぞな」
「はっ、それでは」
「殿、その悪戯ですが」
 林通具がだ。いぶかしむ顔で主に言った。
「久助にとって危険なのでは」
「そう言うか」
「はい、これはです」
 その顔でまた言う彼であった。
「久助一人で行けば。刺客達に」
「そうですな。先のはです」 
 佐々もだ。ここで信長に言う。 
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