とある星の力を使いし者
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第18話
前書き
投稿が遅れてすみません。
上条当麻は急いで「三沢塾」に向かって走っていた。
ビルでステイルに囮として使われたりと、色々とあの神父をぶん殴らないと気が済まない所だが今はそれどころではない。
あのビルで姫神と会う事は出来たが偽物のアウレオルスと遭遇して何とか倒す事は出来たがその後、本物のアウレオルスが現れた。
そしてアウレオルスが上条に全て忘れろ、と告げられ今の今まで忘れていたのだ。
さらに全て忘れる前にアウレオルスは禁書目録を手に入れた、らしき言葉も聞いた。
急いで「三沢塾」に戻ろうとした上条だったがある異常に気づく。
夜の学園都市と言っても繁華街に誰も居ないという異常に。
(なんだ?)
この感じはステイルが夕方見せた「人払い」の結界と同じ感覚だ。
だが、誰も居ないという訳ではない。
「三沢塾」を取り囲むように何人もの人間が立っていて、頭のてっぺんから爪先まで、余さず銀の鎧で身を包んでいる。
上条は教会の関係者なのだろうと考え、話しかける。
「お前達、「教会」とかって連中の仲間なのか?」
鎧の一体が「教会」という言葉にピクリと反応した。
「私はローマ正教一三騎士団の一人「ランスロット」のビットリオ=カゼラである。
戦場から帰還した民間人か、全く貴様は運が良い。
死にたくなければ即刻退避せよ、これよりグレゴオリ聖歌隊の聖呪爆撃を行う。」
上条は思い出す。
あの「三沢塾」の中で大勢の生徒達が使われた、アレのオリジナルはローマ正教のものだったはずで。
生徒が使ったグレゴオリ聖歌隊は偽典で火傷くらいの怪我がするくらいなのだったが、それはただの学生が使ってこの威力。
それが正式な魔術師、それも三三三三人の修道士が一斉に聖呪を集めれば一体どれほど威力になるのか想像がつかない。
上条は何とかしてそれを止めようとした。
中にはインデックス、ステイル、姫神、それに関係のない一般人がまだ残っている。
「ちょっと待て!!まだ中には!!!」
「貴様の言葉は聞かない!攻撃を開始する!!
ヨハネ黙示録第八章第七節より抜粋、第一の御使、その手に持つ滅びの管楽器の音をここに再現せよ!!」
鎧の騎士は腰に下げた大剣を一度天上へと掲げ呪文を唱える。
その瞬間、あらゆる音が消えた。
夜空に切れ切れに漂っていた雲が根こそぎ吹き飛ばされ、夜空には何百何千の赤い火矢が束ねられ融合し一つの巨大な槍と化して一瞬でビルの屋上から地下まで貫き通す。
その直撃を受けたのは一棟だけだが隣のビルとは渡り廊下で繋がっており、隣もビルも渡り廊下に引きずられるように崩壊していく。
上条は奥歯を噛みしめて爆撃現場へと突撃する。
しかし突然変化は起きた。
上条の視界を奪っていた粉塵が引いていき、「三沢塾」の跡地へと一斉に流れていく、そして粉塵だけではなかった。
周辺に飛び散った破片が宙に浮かび、崩れた壁が起き上がると断面同士がくっつき傷口も粘土をヘラで整えるように塞がっていく、その光景はビデオを巻き戻すような光景だった。
バラバラに落ちた人々が亀裂の中へ吸い込まれていきビルの傷口も塞がっていき、気づけば「三沢塾」の四棟のビルが何事もなくそこに建っていた。
(巻き戻される・・・・まさか!)
上条が夜空を見上げた瞬間、「三沢塾」の屋上から天を穿つように、紅蓮の神槍が解き放たれた。
言うまでもなく術者の元へ巻き戻ったのだ。
上条の横から呆然とした声が聞こえ、見ると鎧を着た人が膝から力が抜けて座り込んでいる。
上条はこれがアウレオルス=イザードの真の実力なのだと知る。
どうやって戦えば良いか、と上条は呆然と立ち尽くしてしまうが、それを振り払うように元に戻った「三沢塾」へと走った。
北棟の最上階でアウレオルス=イザードは佇んでいた。
最上階は「校長室」と名付けられ一フロアを丸々使った巨大な空間だ。
アウレオルスは窓の外の夜景に見ている訳ではない、窓に映る己の顔を見ていた。
(存外、遠くまで歩んできたものだ。)
言葉一つ、本当に「元に戻れ」の一言で。
生き物のように起き上がったビルを見て眉一つ動かさない己の顔を眺めながら、アウレオルスはそんな事を考える。
アウレオルスの背後には黒檀の大きな机があり、そこには一人の少女が寝かされている。
Index-Librorum-Prohibitorum、禁書目録。
アウレオルスはこの少女を助けたいだけだった。
アウレオルスと彼女があったのは三年前。
彼は教会に所属しながら、魔道書を書き写すという特例中の特例でその書き写した魔道書で多くの人間を救える、守れると信じていた。
だが、ローマ正教は彼が書き写した魔道書を自分達の切り札にして、自分達の宗教に所属していない人達を救わなかった。
アウレオルスはそれが許せなかった、自ら編み出した「切り札」は全ての人々を救えると信じていた。
彼は「本」を外部に持ち出す事にした、そしてその外部がイギリス清教で内部に接触することが出来た。
そこで決して救われない少女がいた。
一目で分かってしまった、世界の全てを救いたいと願った錬金術師は目の前の少女だけは決して救う事ができないと。
その通りにアウレオルスは少女を救う事が出来なかった。
一〇万三〇〇〇冊もの魔道書を抱えていた少女はその知識に侵されていた。
その少女を助ける為にアウレオルスは魔道書を書き続けた。
だがどれだけ書き続けても失敗に終わりアウレオルスは気づいた。
この方法では誰も救えない、と。
アウレオルスは世界中の人間を敵に回しても少女を救えなかった、人体を調べ尽くしても救えなかった。
ならばこそ、アウレオルスはカインの末裔の力に頼る事にした。
その力を手に入れる為なら何でも裏切り、何でも利用する、吸血殺しさえも手に入れる。
そう新たに決意した時だった、後ろの扉からゆっくりとこちらに近づく足音が聞こえた。
アウレオルスはすぐに音の方に振り返る。
あの魔術師が来たのか?、否、それはありえない。
なぜならあの魔術師はさきほど入ってきた別の侵入者と合流して、こちらに向かっているのをすでに確認している。
此処に辿りつくのはもう少し時間がかかる。
なら、生徒なのか?、否、これも違う。
生徒には暗示をかけているので此処には絶対に来ない。
無論、教師も同様だ。
この「三沢塾」の中を自分の意志で行動できるのはアウレオルス、姫神だけだ。
そして姫神はアウレオルスの目の前に立っている、インデックスは黒檀の机で眠っている。
なら誰なのか?、アウレオルスは考えある一人の侵入者を思い出す。
禁書目録の後に入ってきた最後の侵入者。
だが、これもありえない。
なぜならその侵入者がいた棟はグレゴオリ聖歌隊の聖呪爆撃が、直撃した棟の真横にある棟に居たのを確認している。
「元に戻れ」と言ったがそれは侵入者が入ってくるまでの所まで「元に戻る」という意味を込めた。
この棟はグレゴオリ聖歌隊の聖呪爆撃を受けていないので、あの魔術師が生きているのは分かる。
だが侵入者がいた棟は確実に崩壊したので、あの侵入者が死んでも生き返る事はない。
もし、仮に生きていたとしてもその動向を感知できない訳がない。
「三沢塾」は彼の領域なのだから。
なら、一体誰だ、とアウレオルスが考え足音の主がアウレオルスの視界に現れる。
「貴方は・・・・」
姫神は現れた人を見て驚いている。
そこには麻生恭介がゆっくりと歩きながら部屋に入ってきた。
「なぜ、貴様が此処にいる。
必然、この「三沢塾」は私の領域。
侵入者の動向は常に頭に入っている。
貴様は隣の棟にいてグレゴオリ聖歌隊の聖呪爆撃を受けた筈だ。」
アウレオルスは答えの分からない問題の答えを聞くかように麻生に問いかける。
「その通り、俺は確かにお前のいうグレゴオリ聖歌隊の聖呪爆撃を受けた。
さすがにあれクラスの魔術は空間の壁では防げない。
だが一瞬くらいは持ちこたえてくれた。
俺はその瞬間に自身の周りに「歩く教会」クラスの結界を張って、グレゴオリ聖歌隊の聖呪爆撃をやり過ごした。
後はお前に動きを探られないように、俺の持ち物か何かにルーンの刻印を刻んで存在を隠していただけだ。」
淡々とアウレオルスに答えを教える。
ルーンを使えばそれを使用した魔力の痕跡などは残ってしまう。
この男はそれすらも隠したのか、と内心驚くがすぐに余裕を取り戻す。
「なるほど貴様のような魔術師がいるとはな。」
「魔術師じゃない。
通りすがりの一般人Aだ。」
「どちらでも私は構わない。
それで何しに来た、少年。」
そう聞くと麻生は姫神を指さす。
「俺はその女を此処から助け出してくれ、と依頼されたから来た。
それだけだ。」
その言葉を聞いて姫神を再び驚いた顔をする。
「それは無理な相談だ。
必然、彼女は私の目的の為にどうしても必要だからだ。」
アウレオルスは後ろに黒檀の机に眠っている少女、インデックスに視線を移す。
麻生はその視線を追いインデックスがそこにいる事に初めて気付き呆れた表情をする。
「あの修道女、此処に来ていたのか。」
その呟きにアウレオルスはピクンと反応する。
そして麻生の後ろの扉からステイル、上条が走って入ってきてそれを見た姫神はまた驚いた表情をする。
それもその筈、今日の昼間に会った二人がこんな所に来たのだから。
「麻生恭介か、神裂からの伝言をちゃんと聞いたようだね。」
「出来れば来たくなかったが、そうもいかないしな。」
一瞬だけ上条の方を向くがすぐに前を見る。
アウレオルスはこの二人が来た事にはさほど驚いていないようだ。
「ルーンの魔術師、なぜ貴様は私を止めようとする?
貴様がルーンを刻む目的、それこそが禁書目録を守り助け救う為だけだろうに。」
上条は机の上に眠っているインデックスを見て走り出そうとするがステイルの長い手に阻まれる。
「簡単だよ、その方法であの子は救われない。」
「それで吸血殺しを使って吸血鬼を呼び寄せ利用しインデックスを助ける訳か。」
麻生がアウレオルスの使用としている事を答える。
それを聞いたアウレオルスは少しだけ笑みを浮かべステイルは舌打ちをする。
「なるほど、噛ませるって訳か。
これは歴代のパートナーに共通して言える事だけどね。
誰かを救いたければ、まずは自分を殺して人の気持ちを知る事こそが重要なのさ。
ま、これは僕も最近覚えた事だけどね。」
早速残酷な切り札を使おうか、とステイルは言うと麻生と上条の背中を叩いて少しだけ前に押し出して言った。
「ほら、言ってやれよ今代のパートナー達。
目の前の残骸が抱えている、致命的な欠陥ってヤツを。」
「なに?」
アウレオルスは麻生と上条を睨みつける。
上条は今の台詞に判断がつかず、麻生は大きくため息を吐く。
「お前、一体いつの話をしてんだよ?」
「一つだけ訂正だ。
俺はあんな修道女のパートナーになった覚えはない。
それにアイツを救ったのは当麻だ。」
な、に、とさっきまでとは比べ物にならないくらいに二人を凝視する。
「そういう事さ、インデックスはとっくに救われているんだ。
君ではなく今代のパートナー達によって。
君にできなかった事をそいつ等は成し遂げてしまったんだよ。
ああ、信じられない気持ちは分かるよ。
何せ僕はそれを直接見たのに未だに信じられない、いや信じたくない、かな。
永遠にあの子はこっちに振り向かない。
その事実を突き付けられたようなものなんだから。」
「待て、それでは・・・・」
「ああ、ご苦労様。
君、ローマ正教を裏切って三年間も地下に潜っていたらしいけど、全くの無駄骨だよ。
今のあの子は君が望んだ通り、パートナーと一緒にいてとても幸せそうだよ。」
その一言が決定的だった。
アウレオルス=イザードは自分を支える全てを破壊されたように狂笑する。
「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」
完全に狂ったな、と麻生は思いそして上条の方を見るとアウレオルスをじっと見ている。
どうせ自分もああなっていたかもしれない、と考えているのだと思うが麻生は絶対にそうはならないと考える。
上条当麻は例えアウレオルスのような境遇にあって狂っても、最後にはインデックスがこれ以上悲劇に遭わない事に喜ぶはずだ。
そしてアウレオルスは上条と麻生を再度睨みつける。
アウレオルスは噴き出した殺意をインデックスに向ける事も出来ず、行き場を失って暴れまわっている。
ならばその矛先がまず最初に、向けられるのは一体どこか?
考えてみればひどく当然だった。
「倒れ伏せ、侵入者共!!」
その怒号と共に麻生達に見えない重力の手に押えつけられる。
麻生は自分自身に干渉する者は麻生の了承なしに全て無効化する。
これはアウレオルスの何かしらの魔術で重力を操っている。
なので、自動補正が働かない。
「簡単には殺さん、じっくり楽しませろ!!
私は禁書目録に手をかけるつもりはないが、貴様等で発散せねば自我を繋げる事も叶わんからな!」
だから俺は救っていない、と言いたい麻生だがそう言っても相手は聞く耳を持たなさそうなので言うのを止める。
麻生はこの拘束を解こうとしたが、それよりも先に姫神秋沙がアウレオルスと麻生達の間に立ちふさがる。
既にアウレオルスは姫神秋沙に興味はない。
否、吸血殺しという能力ももはや不要になった。
「邪魔だ、女。」
アウレオルスは本気だ、本気で姫神を殺すつもりだと麻生達は知る。
上条は何とか自分の右手を強引に引き寄せ顔の前に、手繰り寄せるがそれよりも先に麻生が立ち上がる。
だが、麻生よりアウレオルスの言葉が早かった。
「死ね。」
傷もなく、出血もなく、病気ですらもありえない。
まるで電池を抜かれたかのように、人間で言うなら魂が抜けたかのように後ろに向かって、仰向けに倒れてゆく。
だが、地面に倒れる前に麻生がその身体を抱き留め、左手を姫神のでこに当てて目を瞑る。
すると小さくだが呼吸をし始め、姫神はゆっくりと眼を開ける。
「危なかったな。
さすがに死んでしまったら俺も救う事が出来なかった。」
「ど・・して・・・」
「さっきも言ったが俺はお前を助け出してくれと頼まれてきたんだ。
それなのにお前が死んだらその頼みが達成できないだろ。」
そう言って麻生は右手で姫神の眼の上に重ねる。
「寝てろ、起こさないから。」
聞こえた姫神は小さく笑うとそのまま静かに眠り始める。
幻想殺しの力で重量の拘束から逃れた上条は麻生と姫神に近づく。
「当麻、彼女を頼んだ。
俺はあの男を倒す、あの男を何とかしないと此処から帰れなさそうだしな。」
姫神を上条に預けると上条は一瞬驚いたが、姫神を壁際まで運ぶとそれを守るかのように姫神の前に立つ。
「我が金色の練成で確かに姫外秋沙の死は確定した。
何だ、貴様は。」
「さっきも言っただろう、通りすがりの一般人Aだ。」
距離は約一〇メートル。
麻生の身体能力ならすぐに埋められる距離だが麻生よりも早くアウレオルスの言葉が早い。
「窒息せよ。」
アウレオルスはそう言葉を告げるが麻生には何も変化がない。
「どうやら今度は俺自身に干渉してきたようだが残念だったな。
俺は自身に干渉する能力などは俺が了承しない限り通る事はない。」
先ほどの重力の拘束は間には魔術が入っていたから麻生を拘束することが出来た。
アウレオルスは麻生にそう言った言葉が通じないと分かるとすぐに言葉を変えてくる。
「感電死。」
瞬間、麻生の周りに青白い電撃が麻生を取り囲み襲いかかる。
だが、電撃を受けても麻生には平然と立っていた。
空間の壁で電撃を防いだのだ。
「絞殺。」
床から何本の縄が麻生の首をがんじがらめに縛りつけるが麻生に巻きついた瞬間、その縄が一斉に燃え尽きる。
アウレオルスは眉をひそめながら首筋に針を突き刺しその針を投げ捨てる。
「圧殺。」
麻生の頭上に錆びた車が出現し降ってくるがいつの間にか持っていたサバイバルナイフで真っ二つに切り裂く。
「ふむ。」
様々な言葉を告げるがどれも不発に終わるがアウレオルスは余裕の表情をしていた。
対する麻生も距離を詰める事はせずアウレオルスを観察しているようだ。
「それは黄金練成だな。」
「気づいたか。
さして驚いている訳ではなさそうだな。」
二人は何も驚いていないがステイルは驚愕の表情を浮かべている。
「馬鹿な、黄金練成は理論は完成しても呪文が長すぎて完成させられるはずもない。」
ステイルの問いにアウレオルスではなく麻生が答えた。
「だからお前はこの「三沢塾」の生徒を利用した、違うか?」
「ほう、存外頭も良いようだな。」
「どういう事だ?」
ステイルはまだ分かっていないのか再び問いかける、上条もその事に分かっていないようだ。
「一〇〇や二〇〇の年月では儀式は完成できない、だが一人で行えばな。
だから此処にいる二〇〇〇人もの人間を操り「グレゴオリの聖歌隊」のように、呪文を唱えさせ呪文と呪文ぶつける事で相乗効果を狙った。」
「ここは異能者達の集まりの筈だ。
「グレゴオリの聖歌隊」など使えば回路の違うヤツらは身体が爆砕して果てる筈だ!!」
「なぜ、気づかない。
壊れたのなら直せば良い話だろう。
あの壊れたビルを直した時のように。
伝えてなかったな。
あの生徒達は何も死んだのが今日が初めてではない。」
「てめぇ!!」
アウレオルスの言葉を聞いて上条はそのまま襲いかかろうとするが麻生が前に立ちそれを阻む。
上条はそのまま麻生を乗り越えてでも行こうとするが、先ほどとは違う麻生の雰囲気を感じ取る。
「正直。」
麻生は言う。
「姫神を此処から連れ出すだけだから、お前の相手は適当にしていたが気が変わった。
お前はここで俺が倒す。」
ふっ、と麻生の言葉をアウレオルスは鼻で笑うと再び首筋に針を突き刺す。
「私も貴様の力は興味があったがこれで終わりだ。
銃をこの手に、刀身をもって外敵の排除の用意。」
すると、アウレオルスの手に鍔は大昔の海賊が使っていたようなフリントロック銃の先に剣が埋め込まれていた。
「人間の動体視力を超える速度にて刀身を旋回射出せよ。」
アウレオルスが右手を振った瞬間、恐るべき速度で扇風機の羽のように回転して襲いくる。
普通の人間ではまず避けれない。
例え麻生が避けても後ろにいる上条に当たってしまう。
だからこそ麻生はその剣の弾丸を人差し指と中指の間で受け止めた。
「なん・・・だと・・・」
アウレオルスは信じられないような表情をしている。
それもその筈、自身が人間の動体視力を超える速度と設定したので避けるおろか受け止める事など不可能なはず。
例え受け止めたとしてもあの弾丸の速度を指で受け止めれば確実に指が吹き飛んでしまう。
なのに、目の前の男は受け止めたのだ。
「どうした、こんなものか?」
指で挟んでいる剣が砕け散ると同時にアウレオルスに言い放つ。
「くっ!?先の手順を量産、一〇の暗器銃、同時一斉射出せよ!!!!」
今度は一〇の弾丸が麻生に向かって襲いかかるが麻生にぶつかる前にその弾丸は砕け散る。
「な・・・馬鹿な・・・」
麻生はゆっくりと近づく。
それがアウレオルスの余裕を確実に奪っていく。
「お・・おのれ・・・断頭の刃を無数に配置、速やかにその身体を切断せよ!!」
天上から巨大なギロチンが出現する、だが出現した瞬間そのギロチンは一斉に砕け散る。
黄金練成は自身の思った事を世界に引っ張り出す魔術。
それは星を歪めると同じ事だ。
麻生は星と繋がっているので黄金練成で生まれた物を、いち早く察知して干渉し破壊したのだ。
しかし、アウレオルスは麻生の能力が分からないのでさらに不安がつのる。
(ば、馬鹿な!!ありえん、ありえん!!
なぜだ、私の黄金練成は完璧な・・・・)
そう考え不安の取り除こうとするが、麻生の言葉で不安が一気に押し寄せる。
「お前の言葉で世界を歪められると思っているのか?」
「な、ん・・・・」
「なら、まずはその幻想を破壊してやろう。
そして知るが良い、お前が思っている以上に星は甘くない事を。」
麻生が近づくとアウレオルスも下がっていく。
考えないようにしてもその考えに、思考の深みにはまっていく。
それが分かっているのに思考が止められない。
いつの間にか麻生はアウレオルスの目の前に立っていた。
「見せてやろう、これが原初の一だ。」
そして左手をアウレオルスに向かって突き出す。
麻生からとてつもない光が現れアウレオルスの視界を埋め尽くした。
ステイルと上条、そして麻生は公園に集まっていた。
ステイルは「三沢塾」その後についてなどを報告しに来たようだ。
麻生は別にどうでも良さそうだが上条が無理やり連れてきたのだ。
「そうそうアウレオルスについてだけど、君は一体何をしたんだい?」
ステイルは麻生に問いかける。
あの時、ステイル達から見た二人は麻生が左手をアウレオルスに突き出し、その直後にアウレオルスは叫びだし意識を失った。
「なに、少しだけ星の恐ろしさを見せてやっただけだ。」
「それを見たせいなのかアウレオルスは記憶を失っていた。
一応僕が殺しておいたけどね。」
それを聞いて上条は息が詰まるような声をあげる。
それを見たステイルはため息を吐いて煙草を携帯灰皿に捨てる。
「君は勘違いしているようだね。
殺すと言っても命を奪うだけとは限らないよ。」
「は?」
「アウレオルスは記憶を全て失った。
その状態で顔を作り変えてしまったら、中身も外見も全てがアウレオルス=イザードでなくなる。
これはアウレオルスという人間を殺す事と何の違いもないだろ?」
「お前、良い人!!」
そう言って上条はステイルの頭を背伸びしてでも撫でようとしそれをステイルが全力で避けてゆく。
それを見ていた麻生はため息を吐いて二人から離れていく。
二人の周りにはそんな光景を見て怪しがる人々で一杯だったからだ。
後書き
感想や意見、主人公の技の募集や敵の技の募集など随時募集しています。
ページ上へ戻る