戦国異伝
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第二十八話 都にてその一
第二十八話 都にて
信長は遂に都に入った。その都はというと。
「ううむ、応仁の乱から結構経っていますが」
「その後の戦乱もありましたが」
「どうも荒れたままですな」
「全くです」
まずは家臣達がだ。怪訝な顔で話すのだった。都とはいってもあちこちが荒れたままになっている。粗末な家が多く壁も壊れている。
商人の店もだ。どれも覇気がない。それを見て話す彼等だった。
「これではです」
「堺とは比べようもありません」
「奈良の方が栄えているのでは」
「いや、これでは」
今言ったのはだ。福富であった。彼が怪訝な顔で話すのであった。
「尾張の街の方が」
「確かに。この有様では」
「これが都でございますか」
「酷いものですな」
「そうじゃな」
信長もだ。ここで言うのであった。彼も家臣達と同じ顔になっている。
「やはり三好の家の中での争いと延暦寺が暴れておるせいじゃな」
「そのせいでございますか」
「それでここまで荒れているのでござるか」
「戦乱のせいで」
「そうだ。それにじゃ」
理由はまだあるとだ。信長は話した。
「治める確かな者もおらん」
「肝心の幕府があの有様でございますからな」
万見が難しい顔で述べた。
「かろうじて生き残っている様なものでございますからな」
「左様じゃ。公方様もな」
信長は将軍について言及した。
「己の剣の腕を磨いておられるが」
「そこに何があると」
「そうなのですか」
「そうじゃ。将軍を御護りする者はおる」
「はい、確かに」
「そういった者は必ずいます」
これは家臣達もよくわかった。
「我等もですし」
「殿を」
「そうじゃ。剣はそういった者達が持つものじゃ」
まさにそうだとだ。信長はまた話した。
「絶対似せねばならんのは馬と水練だけよ」
「その二つでございますか」
「馬と水だと」
奇しくもだ。謙信と同じ話になっていた。だが彼等はそのことは知らない。だが話すことは全く同じことであった。
「それでありますか」
「二つでございますか」
「人間いざという時は一人よ」
やはりだった。言うことは同じだった。
「逃げる時はな」
「将軍とて逃げなくてはならない」
「そうならばですか」
「剣よりも馬と水」
「その二つだと」
「そうじゃ。そして公方様御自ら剣を持たれてもそれを止められぬ」
このことも問題だというのだ。信長の見るものはやはり深い。
「そうした有様にこそじゃ」
「幕府の今がありますか」
「そのどうしようもない状況が」
「治める都ですらこうですし」
「それが」
「そういうことじゃ。残念じゃがな」
こう述べるのであった。そしてであった。
信長はだ。一旦宿に入った。そこである話を耳にしたのであった。
「越後からも来ておるか」
「はい、上杉がです」
「来ております」
家臣達がそれぞれ信長に話す。
「主の上杉謙信自らです」
「来ています」
「この都に」
「ふむ。上洛してきているとは聞いていたが」
それを聞いてだ。信長は考える顔になった。そのうえでの言葉だった。
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