戦国異伝
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第二十七話 刺客への悪戯その二
「弓、そして鉄砲ですが」
「使えるというのですか」
「それでも」
「要は馬に入られなければいいのです」
そうであればいいというのである。あくまでだ。
それでだ。謙信は家臣達にこんなことを話した。
「川を挟むなりしてです」
「ああ、そうですな」
「川を挟めば馬も進めません」
「そうして戦えば確かに」
「馬に入られません」
家臣達もだ。謙信の今の言葉に大いに頷いた。
そしてだった。謙信はその彼等に対してだ。さらにこんなことを話してきたのだった。
「他には堀をもうけるというやり方もあります」
「川がなければですな」
「そうするのも手でござるか」
「それもまた」
「はい、そうです」
その通りだというのであった。
「堀を用意できるならばですが」
「ではです」
「堀を用意できなければ」
「その場合は」
「それでもやり方はあります」
謙信はその場合についても考えていた。謙信にとって戦いとは幾らでもやり方があるものだ。それは実際に言葉になっても出るものだった。
「柵です」
「柵ですか」
「それを用意すると」
「そうすればいいのですか」
「要は馬の足を止めればいいのです」
馬が何故脅威か、その速さと衝撃故である。それがわかっているからこそだった。謙信はその止め方についてさらに話すのだった。
「ですから。柵でもです」
「いいと」
「そうなのですか」
「それに川にしろ柵にしろです」
今度はこの二つを一つにしての話だった。
「それは兵を防ぐことにもなります」
「確かに。そうでございますね」
「堀や柵が前にあれば」
「それでは」
「そうです。馬が進めず兵を守ることにもなります」
それも踏まえてだった。だからこそ堀や柵はいいというのだ。
「馬に足軽で戦うにはそうしたやり方もあります」
「ふむ。馬といえど無敵ではない」
「対するやり方は幾らでもある」
「そういうことですな」
「左様です。しかし馬は大事なものです」
それは変わらないというのだった。
「馬をどう使うか、足軽をどう使うか」
「双方ですか」
「その二つが合わさってこそですか」
「そういうことでございますか」
「そうです。ただ」
ここでだ。謙信の言葉が少し変わった。彼について話すのだった。
「今川殿ですが」
「今川殿ですか」
「あの駿河の」
「あの御仁ですか」
「彼については少し気になります」
謙信の語るその顔もだ。微妙なものになっていた。
そしてそのうえでだ。こう話すのだった。
「今川殿はあまり馬には乗られぬと聞いています」
「どうやらその様で」
「その話は確かだそうです」
家臣達もだ。その話は聞いていた。そのうえでの言葉だった。
「今川殿には失礼ですが足が」
「かなり短いとか」
「そのせいでしょうか」
「それもあるでしょう」
謙信は義元の馬が不得手な理由はその足の短さにあるとだ。謙信もそう思っていた。しかしここで彼はこうも話すのだった。
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