| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国異伝

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二十六話 堺その三


「これよ。これもしなくてはな」
「堺はこの貿易により多くの利を得ております」
「さすればそれもですな」
「考えておられるのですか」
「そうじゃ。何時かは織田も貿易をするぞ」
 そして彼は今言った。
「やがてはな」
「貿易をですか」
「我等もまた」
「それをするぞ」
 こう家臣達にも述べる。
「よいな」
「ううむ、殿はそれもですか」
「貿易までですか」
「考えておられますか」
「国を富ますには何でもする」
 そうだというのである。
「だからよ」
「田畑や町だけではない」
「そうなのですね」
「貿易もですか」
「特産品もですし」
「とにかく何でもすることじゃ」
 信長は実際にこう述べた。
「金山や銀山もよいがじゃ」
「そういったものも含めて」
「とにかく何でもでございますか」
「やるというのですね」
「そうでもせんと国はよくならん」
 こう言うのである。
「日本の中でもじゃ」
「日本の中でも貿易とは」
「それは一体」
「国と国の間の商人達の行き来を盛んなものにさせるのじゃ」
 具体的にはそういうことだった。
「海でも陸でもな」
「では今尾張の道を整えているのは」
「それでございますか」
「そうじゃ。商人達が行き来しやすくなる」
 それでだというのである。
「無論商人達だけではないがのう」
「といいますと」
「百姓達もですか」
「あの者達の行き来もまた、なのですか」
「百姓達も余裕があれば旅をする」
 信長は今度は旅について述べた。
「旅は人が動くものじゃな」
「はい、それは」
「その通りでございます」
「人が動けば金も動く」
 ここでも金だった。信長が言うのはだ。
「だからよ。道は旅をする者達の為でもあるのじゃ」
「ううむ、そうして人やものを行き来させまするか」
「そうなのでございますか」
「そうじゃ。日本の中とはそういう意味じゃ」
 これもまた信長の考えだった。
「よいな。今は尾張の中だけじゃが」
「やがては日本中がですか」
「そうなると」
「そうじゃ。町と町を栄えさせ」
 それはもうしていた。
「その町と町を道で結んでいくのじゃ」
「そして田畑と町もございますな」 
 今言ったのは中川だった。
「そうでございますな」
「無論じゃ。全てを結びつける」
 まさにそうだというのである。
「そうしていくぞ。この堺もな」
「ううむ、殿の考えられることは大きい」
「全くですな」
「いやはやまことに」
 家臣達はそんな信長の言葉を聞いて述べた。唸る様な口調だった。
「しかしこの堺」
「確かに。これはまた」
「見事です」
 彼等はまた堺の港を見てだ。こう話すのだった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧