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戦国異伝

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第二十五話 堺へその十


「あの皇帝は二十やそこいらの臣下がおったな」
「二十四でしたな」
 池田勝正が言ってきた。
「確か」
「ふむ。武田と同じ数か」
「武田では密かにそれを自慢しているとか」
「二十四。少ないわ」
 信長はその数を少ないとして笑ってみせた。
「わしはそれより多いぞ」
「それだけ多くの臣を集める」
「そうされるというのですか」
「集める。違うな」
 そうではないというのだ。信長はそれは否定した。
 そしてそのうえでだ。彼はこう言った。
「見出すのよ」
「見出されるのですか」
「臣をですか」
「そうじゃ、優れた者達をな」
 そうした者達を見出しそのうえで用いて臣にするというのだ。信長はそこまで話すのである。
「それで二十四とはあまりにも少ないわ」
「では。天下の優れた者達を全てですか」
「見出されそうして用いられる」
「そうされると」
「その通りじゃ。わしは見出した者を臣にする」
 ここでだ。家臣達を見回しこう話した。
「そなた等と同じじゃ」
「我等とですか」
「それは同じだと」
「そうじゃ。そしてじゃ」
 信長は言葉を続ける。
「用いれば死なぬ限りは手放さぬ」
「それもありませんか」
「手放されることも」
「わしのやり方や考えが気に入らぬなら去ってもよい」
 それはいいというのだ。
「好きにせよ。去る者は追わぬ」
「左様ですか」
「それはよいのですか」
「裏切りは許さぬがな」
 去るのはいいが裏切りはだというのだ。そのことについて語るとだ。信長の目の光が鋭いものになった。だが決して残忍なものではない。
「しかし戻ってきたければ何時でも戻ってよい」
「去ってもですか」
「それでもですか」
「来る者は拒まず去る者は追わずじゃ」
 また方針を言う信長だった。
「優れた者は誰であろうと使う」
「では我等も」
「だからこそでございますか」
「殿は用いられるのですな」
「その通りよ。よいか」
 信長はあらためて周りの家臣達に告げた。
「その太宗の二十四臣を超えよ」
「我等のすべきことはそれですね」
「あの者達を超える」
「それをですか」
「そうじゃ。わしも太宗を超える」
 名君と言われているその皇帝をというのだ。彼は超えるというのである。
「より上を目指すぞ」
「はい、では我等も」
「そうします」
「その二十四臣を」
「数だけではない。質もじゃ」
 信長はそれもだというのであった。
「わかっておると思うがな」
「無論です、それでは」
「そのこと誓いましょう」
「今ここで」
 彼等も頷いた。そうしてであった。
 信長は堺に向かう。その道中の寺でだ。こんな話をしていたのだった。
 そしてだ。尾張ではだ。清洲の一室においてだ平手と森が顔を見合わせてだ。こんな話をしていた。
「左様でござるか、美濃との境は」
「はい、平穏でございます」
 森がこう平手に述べていた。 
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