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木の葉芽吹きて大樹為す

作者:半月
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若葉時代・木の葉編<後編>

 
前書き
確かこの辺りで閉鎖のお知らせが報告されたんですよね……。
 

 
 やはりうちはマダラと言う人物は若いながらも頭領を務めているだけあって、優秀な人物であった。
 うちはの人々も一旦味方に回せば、才能のある人物がそろい踏みしているだけあって、忍び連合改め木の葉隠れの里の中でも、見る見る内に頭角を表し始めていた。
 同盟に参加した時期は遅い方であったが、うちはは誰もが一目置かざるを得ない一族であると、周囲に再認識させるだけの実力を彼らは兼ね備えていたのだ。

*****

「お前の言っている事も最もだがな! しかし、お前のやり方は過激すぎる! それでは人々が付いていけなくなるのは明白だ!!」
「ならば言わせてもらうが、貴様のやり方は生温い! 支配には時として弾圧も必要不可欠だろうが!!」
「この石頭! 物事には限度っていう物があってな!」
「こんのウスラトンカチが!」

 ぐぬぬ……! お互いにお互いを睨みつけて歯ぎしりする。
 マダラ曰く私の出す案件は甘すぎていて、私曰くマダラのやり方は強引すぎる。
 お互いに自分のやり方を譲る気は全くと言っていい程無いので、里の今後を話し合う会議ではこう成る事が多い。

「お二方、落ち着いて下さい。ほら、ひっひふー、ひっひふーですよ」
「そうですとも。皆様が付いていけなくて困っているではありませんか」

 それってラマーズ呼吸法じゃなかったっけ?
 取り敢えず、ヒカクさんと桃華の仲裁を受けて、私達は椅子に座り直す。
 揃って前に置かれた茶器に手をつけ、一気に中身を飲み干した。

「このままじゃ埒があかんな」
「お二人とも、言っている事に間違いはありませんからねぇ」

 しみじみとした口調で志村の旦那と山中殿が話している。
 にしても、年甲斐もなく熱くなってしまった。参ったなぁ……どうしようか。
 丁度、時間を見ればお昼時の少し前。朝早くから初めて、こんなに時間が経っていたのか。

「――ここで休憩としましょう。少し頭を整理してから、午後から再開としませんか?」
「異議無し」
「ワシもじゃ」

 やはり時間が時間だったらしい。
 特に反対意見もなく、休憩を取る事が一二も無く決まった。
 話し合いの最後の方なんて私とマダラの口合戦だったからねぇ……、皆様心無しか疲れたお顔をしていらっしゃる。

「マダラ、マダラ。今からご飯食べに行くんだろ?」
「……だったらどうした」

 普段から余人が近寄り難いオーラを出しているマダラ。
 マダラに憧れているうちはのくのいちを始めとする人達の誘いもことごとく撥ね除けて、昼餉時になるとさっさと姿を眩ますので、私の方から声をかけてみる事にした。

「じゃあ、一緒に昼餉を食べないか? 美味しいお店を知っているんだけど」
「何故オレが貴様と一緒に出かけねばならん」
「そう言うなって。どうせ一人でご飯食べるんだろ? だったら一緒に食べようぜ。何だったらオレが御馳走するから」

 自分でも恩着せがましい言い方だとは思うが、これくらい押さないとこいつには効力が無いからなぁ。
 千手内でもまだ何処かマダラを警戒している様子があるし、マダラ自身も知っててそれを……なんというか……切り捨てている様な気がする。
 私としても同盟を結び、連合の仲間に成った以上、そのままでいいとは思えない。
 なので執拗に声を誘って……――やっとの事でマダラが頷いてくれた。

「そう? 行ってくれるの、じゃあヒカクさんも一緒に……」
「い、いえ! 自分は大丈夫ですから!!」

 高速で首を左右に振るヒカクさん。
 にしてもやけに顔が青ざめている様な気がするが……何を見てんだろ? マダラだろうか。
 そう思って振り返ってみたが、常の如く不機嫌そうな顔のマダラだけだ。
 この程度ならヒカクさんも見慣れているだうし、何だったんだ今のは?

 ――飯屋に行く途中で、桃華に慰められているヒカクさんの姿がやけに気になった。



「木の葉も大分様に成って来たよなぁ。そう思わないか、マダラ」
「そうだな。火の国との話も順調に進んでいるし、近いうちに貴様の考え出した一国一里制度は各国に受け入れられる様になって来るだろうよ」

 其処に行き着くまでが大変そうだけどね。
 でも成功例があると知れば、誰もがそれにあやかろうと動き出すのは必然だ。そうする事でそれまでバラバラだった各国の隠れ里は次第に統一されていく様にあるだろう。

「国が纏まるのには時間がかかるけど、それまでの数年間は各国の国力を高めるために世界に平和が訪れるだろう。だったら、動き出すのは今しかないよな」
「……そう。結局の所、この現状は一時の平穏にしか過ぎない」

 向かい合って飯屋の席に着いた私達を囲む様に、外食に出て来た里の人々の姿がある。
 その姿を何とも為しに見守っていた私は、正面から強い視線を寄越して来るマダラの目と目を合わせた。

「現状、一国一里制度で最も進んでいるのは木の葉だ。他の国の隠れ里が纏まるのにも未だに時間はかかるし、それから新たに里と言う形を作っていくのにもそれなりの時間が必要になるだろう。異論はあるか?」
「……ない」

 ――頬杖を付いて、そっと視線を伏せる。
 閉ざされた視界の代わりに耳に届くのは、子供達の元気一杯な声と笑い合う人々の心温まる会話の数々。どれもが今までの私達には縁遠かった物ばかりだ。

「だからこそ、オレはこの隙を逃すつもりは無い。なんせ、世界各国で忍び達が疲弊しているのは事実。この間に同盟でも何でも結んで、今度は一族同士ではなく、国と国に存在する里同士で平和を保てばいい」

 そうすれば一気に戦火は減少する。
 戦争が起きる前にその原因となるものを片端から潰していくなり、やり方は色々とあるのだから。
 そう言えば、深々と溜め息を吐かれた。

「そう上手くいく物か。現にここに至るまでにどれだけの血が流れたのか忘れた訳ではあるまい」
「忘れる訳が無いだろ」

 端的に言って、口を閉ざす。
 向こうもそれ以上何かを言ってくる気はないらしく、暫しの間私達の間には沈黙が流れた。

「お待たせしました。キノコの雑炊といなり寿司に成ります」
「やあ、待ってたよ。いつもありがとうね」
「い、いえ! こちらこそ、毎度ご贔屓にさせていただいております!」

 注文の品を持って来てくれた店員さんに微笑みかければ、真っ赤になって頭を下げられた。
 そんなに畏まる事無いのにね、変なの。

「で、では! どうぞごゆっくり!!」
「うん。味わって食べさせいただくよ。――どうした、マダラ?」
「貴様……いつも今の様な事をしているのか?」
「そりゃ、ここは行きつけのお店だからね。それがどうかしたのか?」

 言いたい事が分からなくて、首を傾げる。
 ちょ、待って! なんで万華鏡写輪眼!?
 周りの人達はやけにびくびくするし、私も内心ではドキドキだ――何をされるのか分からない恐怖で。
 初めて出逢った時から思っているが、こいつ程考えが読み難い奴はいないよ。

 赤い目が私を睨んで、それからいなり寿司を見据える。そうしてから、目が普段の色に戻った。
 ――ほ。
 なんだか訳が分からんが、ひとまず落ち着く。

「何も変な物は入っていない様だな」
「あのね、マダラ。その台詞は料理人さんに失礼だよ」

 そう言えば鼻で笑われました、何故だ。



 お昼を食べ終われば、先程奥に引っ込んでいった店員さんがやけに赤い顔をして、私達へと茶菓子とお茶を差し出してくれていた。
 少々暑い日々が続く今日の様な日に相応しい、透き通った若葉色のお菓子だ。

「あ、あの……柱間様、これ……!」
「へ? え、いいの?」
「は、はい! 普段からご贔屓にさせていただいていますから! お礼です、いつもの!!」
「へぇ、綺麗だな。でもこれ、どうしたんだ?」
「いえ、その……、この里の名前が木の葉に決まったから、それにあやかって私が作ったんです!」
「そうか。じゃ、遠慮なく頂きます。わざわざありがとうね」

 そう言えば、真っ赤になって下がっていってしまった。
 微笑ましく見つめていれば、私の足が思い切り蹴られる。
 ――い、痛い!

「なにすんだ、マダラ! 痛いじゃないか!!」
「足が滑った」

 涙目になって睨みつければ、素知らぬ顔で自分の分の茶菓子を食べ終えていたマダラ。
 今の絶対わざとだろ……! と思うがそれ以上何も言わない。面倒くさそうだし。

 気を取り直して、出されたサービスの茶菓子を口に含む。
 ほんのりとした甘さに、これならば甘い物が苦手な男性でも食べれるだろうな、とか思った。――って事は、やっぱりこいつ目当てだったのかな。

 多分あの店員さん、直接言うのは恥ずかしいから、顔なじみの私を出しに使ったんだろうな。
 顔だけはいいからなぁ、マダラも。…………性格は最悪だけど。
 私が父親なら、間違ってもこいつだけには娘を嫁がせたくないわ。って、娘と言えば……。

「お前にだけはミトはやらん!」
「……突然何を言い出す。とうとう頭の螺子でも狂ったか?」

 確かに私を倒せる様な相手でないと嫁には出さんといったが、こいつみたいに顔が良くても中身が最悪な相手なんぞ絶対にごめんだ。
 億万が一の可能性でミトがマダラに惚れでもしたら、なんとしてでも踏みとどまらせねば……!

 内心でそんな決意を固めていれば、周囲の人達に生暖かい視線で見守られていました。
 なんだか最近の私はこんなのばっかりだ。

 ――この後、話し合いの場所に帰れば、やけに戦々恐々としたヒカクさんと桃華に迎えられました。
 マダラは押し黙ったままだし、やっぱり訳が分からなかった。
 
 

 
後書き
それでもなんだかんだでお互いを一番に認め合っていたらいいなぁ、と思いながら書いていました。 
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