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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝

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第83話 冀州清河国

私はお爺々様、奈緒、揚羽、彩音、朱里、雛里、新しく仕官した者達と一緒に洛陽を旅立って一月程して清河国に入りました。

清河国傅に揚羽、清河国相に朱里、清河国長史に雛里を上奏済みです。

新しく仕官した者は4人です

諸葛瑾、真名は美里(みり)

諸葛誕、真名は慶里(けいり)

司馬馗、真名は真悠(まゆ)

司馬恂、真名は紗綾(さあや)

清河国につくと私達は自分の居城に入り、各々の部屋に別れ休憩をとることにしました。

数日後には、常山郡に移動するつもりでいます。

私が自室の窓から外の風景を眺めていると、揚羽が私の部屋に入ってきました。

「正宗様、お時間大丈夫ですか? お話したいことがあります」

揚羽は周囲を気にしながら、私に声を掛けてきました。

「構わないよ」

私は揚羽を見て頷きました。

「反董卓連合の件でお聞きしたいことがございます。正宗様が歴史へ介入されたことで、反董卓連合が発生しない可能性があるのではありませんか?」

揚羽は疑問の言葉を投げかけてきました。

「それはないな。揚羽は私が知っている歴史が正しいと思い込んでいるとでも思っているのか?なら、それは浅慮というものだな。私は歴史を今のところ行動の指針にしているだけだ。いずれ私の知る歴史と決定的にズレが出るだろうが、それはまだ先のことだろう。現在と未来は川の流れと一緒で、今まで私が介入した内容程度で大幅にずれることはないさ。もし、ズレると思うのならそれは人の奢りでしかない」

「何故、確信できるのですか?」

揚羽は真剣な表情で言いました。

「反董卓連合が発生したのは董卓が中央の権力を握ったからに他ならない。そうなった理由はわかるか?」

「いいえ」

揚羽は無表情で私に答えました。

「何進様が暗殺されるからだ。辺境の董卓がなんで中央にいたと思う。今上皇帝が死んで宦官と何進様の後継者争いが激化し、何進様だけではどうにもならなくなり、地方の軍閥を招集してその力で何皇后に圧力をかけるためだ。私もそのときに召集されるだろう。だが、私は積極的に行動するつもりはない。歴史の本流を変えない為にな。これでわかっただろう。反董卓連合の結成と、今まで私が介入したことと因果関係など何もない。そもそも未来とは必然の積み重ねによって成り立つ。火の中から水が湧かないように、未来もそんな突拍子も無いものではない」

「その口ぶりですと、正宗様は何進様をお見捨てになると」

「そうだ。彼女が死んだとき、洛陽で一番の兵力を握っていたのは董卓。だから、彼女に抗える者はいなかった。私は敢えて少ない兵力で洛陽に駐留し、ことがおきたら冀州に麗羽とお前の母親を連れ速やかに撤退する。揚羽は司馬家の者を早めに清河国に疎開させておけ」

「董卓は武力を背景に、中央を席巻したということですね。董卓の謀将賈は必ず私達の抑えとして、麗羽殿と私の母親を拘束しようとするはずです。私もその心づもりで準備いたします」

揚羽は私の考えに得心したように頷きました。

「この世界の状況は私の知っている歴史とは明らかにずれがあるが、本筋は同じだ。差異があると思うのは本質を見ず、ただ表面だけしか見ていないからだ。仮に、変わるとしても、それは役者の立位置が変わるだけだ。私はより有利な立ち位置を望んでいる。そして、私が歴史を本当の意味で塗り替えるのは」

「正宗様が他国に対し侵略行動に出るときですね」

揚羽は怜悧な笑みを浮かべました。

「飲み込みが早いな。歴史を変えるとはそういうことだ。それまでは予定調和。私と同じく歴史を知る北郷は私のように歴史を捉えていないだろう。私の行動は歴史の支流の流れを変えただけで、その本流の流れを変えたわけじゃない。現時点で歴史の本流とは朝廷の権威が失墜し、零落することだ。その流れを破綻させない限り、歴史の本流への影響は些細なもの。麗羽にはこのことは伏せて置いてくれ、彼女は何進様を救おうとするはずだ」

「畏まりました。一つご忠告します。麗羽殿にはそのことは決して口にせぬようにしてください」

揚羽は私を真剣な表情で言いました。

「ことが済めば話した方が良いのではないのか?」

「はあ……。正宗様、相手に包み隠さず話せば良いというものではないです。その行為は誠実でもなんでもないです。自分が楽になりたいからでしょう。もし、思っていなくても人とは無意識に楽な方を選ぶものです。そのことは墓場まで持っていってください。私も墓場まで持っていきますから」

揚羽は溜息をついた後、厳しい表情で言いました。

「分かった言う通りにする。どうせ何進様の死は避けられない。揚羽は何進様が劉弁を後継者に押すのを諦めると思うのか? 彼女の暗殺を一度防ぐことができても、後継者争いをする限り、いずれ死ぬのは目に見えている。それに彼女が死ななければ、歴史がズレてこれから先のことが読めなくなる。逆に彼女を救ったら、下手をすると私達が董卓の立ち位置に置き換わる可能性すらある。そんな危険な橋を私は渡るつもりはない」

「何進様は諦めないでしょうね。宦官達も劉協を押すのを諦めないでしょうけど。何進様と宦官達は変革の為の生贄といったところですか……」

揚羽は指を顎にやり考えこみながら言いました。

「宮中の権力闘争はやりたい奴にやらせればいい。あんなものは自らを滅ぼす行為でしかない」

私は遠くの空を眺めながら言いました。

「正宗様、先程話されていた北郷とは誰のことでしょうか?」

「天の御使いは知っているか?」

「最近、巷で噂になっていますね。もしやその人物ですか?」

揚羽は鋭い目で私を見ました。

「そうだ。でも、私ほど歴史の情報を持っていないし、武は文官に毛が生えた程度の人間だ。それに人を斬った経験もないだろう」

「人の癖に天の御使いを名乗っているとは、その者は朝廷に弓を引く気なのでしょうか?」

揚羽は警戒感を持った表情で言いました。

「何も考えていないと思うぞ。天の御使いと名乗ることが、どれほど危険なことなのかなど、露とも思っていないだろう」

私は素っ気無く言いました。

「その者は馬鹿なのでしょうか?」

揚羽は呆れた表情で私に言いました。

「根は悪い人間じゃないだろうさ。しかし、色を好む。中山靖王、劉勝とそう変わらないと思うぞ。案外、桃香のところにいるかもな」

揚羽は私の話を聞いて、嫌悪感が表情に表れていました。
 
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