戦国異伝
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第九話 浮野の戦いその四
「その龍も。そして虎も」
「虎もですか」
「飼い慣らす。そうした男になってみせよう」
「では蝮もまた」
「無論必要とあらばそうする」
不敵な笑みと共の言葉であった。
「そなたはそれを見ておけ」
「さすれば」
「さて、そしてじゃ」
ここまで話してであった。信長はまた家臣達に顔を向けた。そしてその中にいる一人に声をかけるのであった。
「甚助よ」
「はっ」
強い目をした頭を剃った髷の男であった。生駒親正である。
「そなたこの辺りや岩倉の地理に明るいな」
「そう自負しております」
「さすればこの度の信賢との戦いじゃ」
信長が言うのはこのことだった。
「何か策があるか」
「あり申す」
これが生駒の返答であった。
「それなくしてここには参りませぬ」
「左様か」
彼は清洲入城から信長の配下になっている。その彼の言葉であるのだ。
「では。どうするのじゃ」
「はい、まずはこのまま出陣します」
こうして己の策を話していく。そうしてであった。信長は彼の話を聞き終えてから出陣の命を下しだ。再び青い軍勢を出陣させるのであった。
「それでは」
「わかった。では皆の者」
「はっ」
「それでは我等も」
「出陣の用意じゃ」
こう告げる信長だった。
「そしてじゃ」
「はい」
信行は兄の視線を受けてすぐに応える。
「留守はそれがしで」
「頼んだぞ」
「わかりました。それでは」
「岩倉を陥とし尾張をわしのものとする」
信長は既にそのことを見据えていた。
「それではじゃ。行くぞ」
こうしてだった。信長は清洲に入りすぐにまた出陣するのであった。そうして向かうのはだ。織田信賢のいるその岩倉城であった。
信長来るとの報はすぐにその岩倉の信賢のところにも届いた。彼はそれを受けてすぐに主だった家臣達を集めて軍議を開くのであった。
「さて、どうするかじゃな」
「はい、ここはです」
「篭城よりもです」
「出陣すべきかと」
家臣の多くはこう進言した。
「信長めはどうやら城攻めが得意なようです」
「清洲を何なく手に入れていますし」
「周りの出城や砦を全て誘降させています」
「それを考えますと」
「そうじゃな」
信賢は大柄で眉が釣り上がっている。その目立つ顔をやたらと動かして話している。
「ここはそうするべきじゃな」
「では殿、今よりですね」
「出陣ですね」
「そうするとしようぞ」
「殿、それでなのですが」
「出陣の際ですが」
ここで彼のすぐ傍にいる者達が言ってきた。それぞれ左右に座している。
「織田弾正めの軍勢にはです」
「用心すべきこともあります」
右にいる男は痩せて大きな目をしている。左にいる男はやたらと大柄で丸い。そして頬も張っている。
その二人がだ。それぞれ信賢に言うのであった。
「鉄砲と槍です」
「それには御用心を」
「そうじゃな、どうやらあの男」
ここで右にいる山内一豊に左の堀尾吉晴を見て言う。
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