戦国異伝
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第九話 浮野の戦いその二
「犬山のな」
「あの二人はあくまで、です」
「殿に従おうとしません」
「特に。やはり織田信賢です」
「あの男は」
「わしは大和守の家」
織田家には二つの流れがあった。まずは信長がいる大和守家であった。
「まあ今ではわしがその主じゃな」
「主である織田信友が殿に敗れ尾張を去りましたから」
「そうなります」
「そうだ。しかしだ」
信長は家臣達の話を受けながらさらに話す。
「伊勢守家はあの信賢が主じゃ」
「父である信安殿を追い出し自ら伊勢守家の主となっていますし」
「大義名分も手に入れています」
「それでは」
「兵を集めよ」
信長は言った。
「よいな、すぐにじゃ」
「そして信賢のいつ岩倉城にですね」
「攻め寄せますか」
「そうする。留守はじゃ」
ここでだった。信長は傍らにいる信行を見てだ。彼に告げた。
「勘十郎」
「はっ」
「そなたが務めよ」
「畏まりました」
「わしは少し岩倉を陥としてくる」
造作もない言葉であった。
「その間留守を頼む」
「畏まりました」
「さて、岩倉を陥とせば尾張のほぼ全てが手に入ることになる」
信長はこのことについて考え笑みになっていた。
「それからのことも考えておかねばな」
「して殿」
ここで林が主に言ってきた。
「それで尾張をほぼ手中に収めたならば」
「うむ」
「やはり他の国に、ですか」
「そのつもりじゃ。伊勢がよいな」
信長の目が光った。
「あの国がじゃ」
「成程、あの国でしたら」
ここで出て来たのは滝川であった。
「それがしと二郎ですな」
「うむ久助、わかっておるな」
「はっ、既にあの国の内情は知っております」
そうだという滝川であった。
「そして手の者を忍び込ませることも」
「できるな」
「お任せあれ」
「ではその時になれば詳しく動いてもらう」
信長はこう滝川に告げてだ。そのうえで林に顔を向けた。そうして彼に対して言うのであった。
「して新五郎」
「はっ」
「伊勢にはさして兵を送るつもりはない」
「それでは、ですか」
「謀じゃ」
今言うのはこれであった。
「わかったな」
「お任せあれ」
「無論そなただけではない」
見たのは林だけではなかった。他の者達もだった。
「伊勢は多くの家があるのう」
「はい」
「北畠に神戸、長野を代表として」
「多くの家があります」
家臣達もこのことは知っていたのだった。
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