戦国異伝
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第八十八話 割れた面頬その二
滝川が送った忍の者達に占拠されそのうえで開けられた。裏門は人が少なかった。どうやら面頬の男はそこの兵もかなり引き抜いて城中に入った織田軍の迎撃に向かわせた様だ。
その結果彼等は裏門も開けた。それを見てだった。
滝川はそこにも兵を突入させた。そしてだ。
信長はその滝川の隣に来てだ。こう言ってきた。
「よいな。それではじゃ」
「はい、ここで、ですな」
「そうじゃ。兵をさらに入れるぞ」
攻めるとだ。そうするというのだ。
「そうするぞ」
「そうされますか」
「御主はどう思う」
信長はその滝川に顔を向けて問うた。
「ここで兵をさらに入れるべきかどうか」
「入れるべきです。しかしです」
「しかしじゃな」
「今裏門を手中に収めました」
滝川は信長にこのことから話す。
「ですがそれでもです」
「その裏門に敵が来る時にじゃな」
「はい、そこで他の門を次々に開けてです」
「そこで攻めるのじゃな」
「そうしてはどうでしょうか」
「いい考えじゃ」
信長は滝川のその言葉に満足した笑みで返した。そのうえでまた滝川に言ったのだった。
「流石よのう。城攻めが上手じゃ」
「ではその様にして宜しいですな」
「そうせよ。ではな」
「はい、それでは」
こうしてだ。信長は滝川のその攻めを許した。それを受けてだ。
彼は裏門にもだ。三好の兵が来るのを見て早速だ。他の門にも兵を送り開けさせた。そうしてからあらためて信長に対して言ったのである。
「では今より」
「総攻撃じゃな」
「それに取り掛かるべきと思いますが」
「そうじゃ。まさに今じゃ」
信長は確かな声で返す。
そしてそのうえでだ。彼は足軽達にこう叫んだのだった。
「皆城の中に攻め入れ!褒美は思いのままぞ!」
「おおーーーーーーっ!」
足軽達もそれに応えてだ。そうしてだった。
彼等は城の中に我先にと駆けていく。そのまま城の中に雪崩れ込む。
その勢いは最早誰にも止められるものではなかった。それを見てだ。
本丸にいる三好家の将達も蒼白になりだ。こうそれぞれ言った。
「これはまずいのう」
「うむ、最早この勢いは止められぬぞ」
「一体どうすればいいのじゃ」
「本丸に来るのも時間の問題ぞ」
「どうしたものか」
彼等は身の危険も感じていた。こうなっては勝敗は明らかだった。そしてだ。
それを見た面頬の男もだ。無念に満ちた顔でこう言うのだった。
「仕方ない。それではじゃ」
「はい、それではですな」
「この城から」
「まだ抜け道がある」
だからだというのだ。
「門は一つだけ残っておる。皆そこから出て一旦川にまで向かう」
淀川だ。そこにだというのだ。
「そこから船で河内まで落ちようぞ」
「河内ですか」
「そこにですか」
「まだ河内がある」
三好の本州における勢力圏、まさに最後の砦だ。
そこまで落ち延びてだ。それからだというのだ。
「そこでどうするかじゃ」
「はい、それでは」
「今から」
こう応えてだ。そのうえでだった。
彼等は大急ぎでそのただ一つ残された門に向かう。まだ戦っている三好の兵達もだ。足早にその門に逃げていく。だが多くの者が逃げ遅れ織田軍に囲まれていた。
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