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戦国異伝

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第八十七話 朝攻めその十


 彼等は城中で浮き足立っていた。既に疲労は極限まで達している。
 そのうえで迎え撃とうとするがだ。これはだった。
「だ、駄目じゃ。眠いわ」
「やはり疲れておる」
「それに腹も減っておる」
「これではじゃ」
 どうかとだ。彼等はふらぶらになりながら述べたのである。
「倒されるぞ」
「その通りじゃ。これではじゃ」
「褒美を貰う前にこちらがやられる」
「そうなるぞ」
 こうは言ってもだった。
 彼等は疲れと空腹で力が入らない。しかも判断力も鈍っていた。
 それは面頬の男も同じでだ。主の間でこう言うのだった。
「抜かったわ」
「ここはどうされますか」
「守られますか」
「守るしかない」
 選択肢は一つしかなかった。まさにだ。
「ここはじゃ」
「左様ですか。それでは」
「守られますか」
「槍じゃ」
 男はこれを使うと言った。
「槍を使え。それで迎え撃て」
「槍!?」
「槍ですか」
 だが、だった。槍と聞いた他の者達は怪訝な顔になって男に問い返したのだった。
「弓や鉄砲ではなく槍ですか」
「それを使われるのですか」
「?何かあるか」
 男は問われてもだ。まだ気付いていなかった。そのうえでの返答だった。
「槍で不都合が」
「いえ、だからです」
「敵はまだ城中に入っておりません」
「石垣や堀に来ております」
「ですからここは」
「そうじゃったな。弓矢じゃ」
 ようやくだ。男も気付いた。そのことに。
 それでその命を出した。だが、だ。
 この僅かの間の判断の誤りが戦局に影響した。戦というものは一瞬の過ちが全体に影響する。それはまさに今の三好の軍勢だったのである。
 一瞬だが三好の兵達は槍を持とうとした。だがすぐにだ。
「何っ、弓矢か」
「弓矢なのか?」
「槍ではないのか」
「そうじゃ。弓矢や」
 伝令役の足軽達が敵と対しようとする足軽達に伝えていた。朝もやの中で激しい戦になろうとしていた。
「弓矢で敵を迎え撃てとのことじゃ」
「わかった。ではじゃ」
「弓矢を出すぞ」
「そうするぞ」
「そして石じゃな」
 石垣や城壁をよじ登ってくる敵に向かって投げるものである。 
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