戦国異伝
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第八十七話 朝攻めその九
朝日を見てだ。足軽達が話をした。
「朝か」
「そうだな、ようやくじゃな」
「織田は攻めてこんかったか」
「ではじゃ」
夜襲がなかった。それでだというのだ。
「少し休むか」
「そうじゃな。飯でも食ってな」
「その寝ようぞ」
「うむ、流石に疲れたぞ」
やはり徹夜は辛かった。それは彼等とて同じだ。
それで何とか休もうとしている彼等にだ。面頬の男が命じた。
「半分を残しそのうえでじゃ」
「後の半分は休むのですな」
「とりあえずは」
「そうじゃ。休め」
流石にだ。彼も徹夜でありこう言うのだった。
「わしもそうする。ではな」
「はい、では具足を脱ぎ」
「そのうえで」
こうしてだ。面頬の男も休もうとした。その中で誰もが飯を食い寝ようとする。しかしだ。
滝川は見ていた。彼等のその動きを。
城の中を鋭い目で見つつだ。周りの者達に告げた。
「よし、それではじゃ」
「今こそですか」
「攻めますか」
「まずは城中に向けて鉄砲を撃て」
最初はだ。それだというのだ。
「完全に囲みそのうえでじゃ」
「城の中に向けて撃ちますか」
「そうしますか」
「そうじゃ。撃て」
滝川はまた命じた。
「そしてそのうえでじゃ」
「攻めますか」
「鉄砲で撃ってから」
「鉄砲は撃ち続ける」
止めないというのだ。一撃ではだ。
「よいな。そうせよ」
「一撃ではなくですか」
「何度も」
「鉄砲は城攻めにも使える」
「それは知っていますが」
「何度もですか」
「当然壁のところにいる敵に対して撃つ」
これは当然だった。鉄砲は敵を撃つ為にあるものだから。
「そうして堀や石垣を進む者達の援護をするのじゃ」
「そして門もですか」
「そこも狙いますか」
「無論じゃ。門は陥とす」
これはどの門でも同じだった。城の門ならば。
「よいな。そうせよ」
「では今より」
「攻めましょう」
こうしてだ。朝日が昇ってすぐにだった。
滝川の指示の下織田軍は動きだした。滝川は陣頭に立ちだ。鉄砲隊に対して命じた。
「撃て!」
この言葉と共にだ。鉄砲が斜め上に放たれる。その弾と轟音にだ。
城内の三好の兵達は度肝を抜かれた。飯を食っている者達も寝ようとしている者達も誰もが飛び上がった。
そしてそのうえで具足を慌てて身に着けてだ。こう言い合うのだった。
「ま、まさか織田か!」
「織田が攻めてきたのか!」
「朝にか!」
「夜に攻めずに!」
誰もが織田軍は夜襲で来ると考えていたのだ。しかしだった。
彼等は夜は攻めなかった。その代わりだ。
朝、朝日が昇ってすぐにだ。一斉に攻めてきたのだ。それに対してだ。
三好の者達は度肝を抜かれ飛び上がり織田の軍勢を見た。見ればだ。
青い具足の者達が城壁に群がっていた。堀も泳いで抜けられる。
そうしたものを見てだ。将達が一斉に叫んだ。
「防げ!」
「鉄砲なぞに怯むな!」
「怯んでは負けぞ!」
こう叫んでだ。三好軍を何とか戦場に留まらせようとする。だが、だった。
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