万華鏡
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第十六話 プールと海その二
「ちゃんとな」
「凝ってるな、本当に」
「一回でできたけれど苦労したよ」
「一回でできたのかよ」
「ちゃんと紹介しているサイトでデータチェックして。プロアクションリプレイも使ってさ」
「プリアクションリプレイは使ったら誰でもできないか?」
「まあそうだけれど苦労はしたんだよ」
作るのにだというのだ。
「結構な」
「何だよ、作ってる途中で事故のイベントでもあったのかよ」
「あったし変なイベントも多かったしな」
野球ゲームのサクセスモードではそうしたアクシンデント系列のイベントも付きものだ。イベントはいいものばかりとは限らない。
「だからさ」
「それで苦労したのかよ」
「そうだよ。それにバースも作ったからさ」
この選手もだというのだ。
「バース三番、藤村四番だよ」
「それだと勝てるだろ」
「強いよな、やっぱり」
バース、藤村と続けば確かに強い。どちらも阪神ファンには永遠に忘れることの出来ない野球人達である。
「それだけいたら」
「阪神ピッチャーはいいからな」
「どの年の阪神も強いよ。ピッチャーはさ」
「問題は打線だからな」
「ああ、打線が弱いからな」
美優は次のバッターも動かしながら言った。
「黄金時代とかならないんだよ」
「だよな。けれど阪神はいいよな」
「ピッチャーがかよ」
「いや、巨人だよ」
兄が今言うのは人類の敵についてだった。
「阪神からは巨人も選手は取らないだろ」
「阪神からはそうだよな」
美優も兄の言葉に気付いた。
「取らないよな」
「出て行った助っ人を取ったことはあったけれどな」
「それ以外はないな、本当に」
「だろ?ホークスなんて酷いからな」
兄はここで新しいビールを開けて早速飲んだ。
「ったくよ、毎回毎回日本一になったらな」
「選手強奪されてるよな、巨人に」
「工藤に小久保に杉内にな」
これが巨人の悪事であり正体だ。良識ある日本国民は巨人には全力で向かい正義の鉄槌を下さなくてはならない。
そしてその巨人に対して兄はさらに言う。
「強奪されてきてるからな」
「巨人って汚いよな」
美優もそのことは言う。顔を思いきり顰めさせて。
「あそこはな」
「そうだよ。ゲームでも巨人は叩き潰せよ」
「わかってるよ」
妹も兄の言葉にすぐに返す。
「絶対に叩き潰すからな」
「そうしてくれよ、本当にな」
「ああ。しかし兄貴も巨人嫌いなんだな」
「当たり前だろ。こっちはいつもやられてるんだぞ」
兄はビールを一本空けてまた妹に言った。
「だからな」
「気持ちわかるよ。あたしもそれで巨人嫌いだしな」
「だろ?とにかくそのゲーム俺も持ってるからな」
「ああ、兄貴もやってるのかよ」
「後でまたするさ。ソフトバンク十連覇だよ」
今度はピーナッツをまた噛み砕く。
「勝つからな」
「頑張ってくれよ。まあ今は梅雨だからな」
「雨野かよ」
「ああ、そのピッチャーがいるからな」
美優は雨天中止のことを疑人化して述べた。
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