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万華鏡

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第十一話 流鏑馬その七


「何が何なのかわからないから」
「日本語だよな」
「どうかしら」
 琴乃は美優の言葉に首を捻った。
「何か戦争中それで喋ったらアメリカ軍もわからなかったらしいし」
「暗号になる位なんだな」
「そこまで普通の日本語と離れてるから」
「何か凄いな。ウチナンチューの言葉も凄いけれどな」
 美優は自分のルーツの名前を出した。
「それ以上なんだな」
「最初子供の頃に聞いて全くわからなかったから」
「どんな言葉だよ」
「一回聞けばどんなのかわかるけれど」
 意味はわからないがそれでもだというのだ。
「本当に凄いからね」
「南北で正反対だけれど津軽弁みたいなのね」
 今言ったのは彩夏だった。彼女は元々秋田生まれだから言ったのである。
「東北も訛りが強いけれど津軽弁は特に凄いから」
「太宰治ね」
 里香が応える。
「津軽っていうと」
「そう、青森でも独特の地域でね」
 青森といってもそれぞれの地域がある。青森市近辺に陸奥とその津軽におおむね分けられるとされているのだ。
「方言が違うのよ」
「そんなに違うのね」
「わからないから」
 また言う彩夏だった。
「秋田生まれの私でもね」
「そんなに凄いのね、津軽弁も」
「ずーーずーーが凄くて」
 彩夏は琴乃に濁音が凄いと話す。
「もう慣れないとわからないから」
「そこまでなのね」
「うん、この言葉も驚くから」
「つまり西郷さんは昔の薩摩弁で」
「太宰治は津軽弁なのよね」
 二人の方言は南北で全く違っていたが難しいのは共通していた。
「ううん、神戸は関西弁だけれど」
「難しくはないわよね」
 彩夏と琴乃は二人で話す。
「私達にしてはだけれど」
「それでも」
 こう話す。そしてだった。
 琴乃はあらためてこう皆に言った。
「とにかく昔の薩摩弁は凄いから」
「果たして津軽弁とどっちが凄いかしらね」
「うちの学校に喋れる人いるかしら」
「鹿児島の人と津軽の人?」
 彩夏が具体的に言った。
「どちらの人も?」
「いるかしら」
「どうかしらね」
 琴乃は難しい顔になって彩夏に返した。
「私達の学校全国から集まるけれど」
「寮もあるしね」 
 男子寮に女子寮だ。それに有名な部活の寮もある。
 そうした設備が揃っているからこそ全国から生徒が来て学園生活を送ることもできるのである。八条学園はそうした学園だ。
「それじゃあ探してみる?」
「そうしてみる?」
 二人で話す。そしてだった。
 美優は美優でこんなことを言った。
「ひょっとしたら流鏑馬で来てくれる人がさ」
「鹿児島の人とか?」
「青森の津軽の人とか」
「その可能性もあるよな」
 こう笑顔で話すのだった。
「ひょっとしたらだけれどな」
「まあ昔の薩摩弁とか今喋れるとは思わないけれど」
 琴乃は首を捻って言った。
「若い人はね」
「そういえば琴乃ちゃん鹿児島弁は」
「あまりわからないの」
 琴乃自身も今の鹿児島弁ですらというのだ。
「実はね」
「そうなんだな」
「関西弁とアクセントとかが全然違うから」
 関西と九州では方言は違うが鹿児島は特にだというのだ。 
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