万華鏡
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第十話 五月その四
「赤い染料いたいなお薬で口の中真っ赤にしてさ」
「あっ、あれね」
里香も早速その話に乗った。
「あれしたわね」
「小学校とかでな」
「あれお口の中の汚れ出すから」
「赤いのが汚れでさ」
「それ全部取らないと駄目なのよね」
「そうそう」
美優は笑いながら里香に応える。
「それで奇麗にしないとお昼休みに遊びに行けなくて」
「皆その日は必死に歯を磨いてね」
「あたし滅茶苦茶苦労したよ」
「私もよ」
美優と里香は笑って話す。
「小学校で一回だけだったけれど」
「その一回がな」
「滅茶苦茶苦労したわよね」
「かなりな」
こうした話をするのだった。そしてだった。
美優は今度は琴乃に対してこう尋ねたのだった。
「で、琴乃ちゃんもあのお薬使ったよな」
「うん、小学校の時にね」
使った時期も同じだった。
「その時にね」
「それでどうだったんだよ」
「私が一番すぐに磨き終わったの」
汚れを最初に全部落としたというのだ。
「というか最初から皆よりは汚れてなくて」
「いつも奇麗に磨いてたらか」
「そうだと思うけれど」
「だからか。それで磨いたら」
「すぐに取れて」
「それだけ磨き方がいいんだな」
「多分ね」
琴乃は蕎麦を食べながら話す。
「そうだと思うわ」
「それって凄いことよ」
里香も素直に賞賛した。
「そこまで磨き方がいいってね」
「そうなるのね」
「そう。歯が健康だと」
「歯って大事だっていうけれど」
「凄く大事よ」
里香は実際にそうだと琴乃に話す。
「全ての健康の源よ」
「何か歯医者さんみたいなこと言うけれど」
「本当だから。歯が悪いと」
それでどうなるかというのだ。
「よく噛めないし力も込められないし」
「歯を食いしばれないからよね」
「それに痛みで集中力も弱くなるし」
これもあった。
「何かとよくないのよ」
「そうなのね」
「そう、琴乃ちゃん集中力凄いけれど」
このことは里香だけでなく四人も感じ取っていた。琴乃は熱中すると他のことが目に入らないまでに集中するタイプなのだ。
「それでも歯が悪いと」
「集中できないから注意してね」
「うん、じゃあこれからも」
「しっかり磨いてね」
「歯が命なのね」
「歯を磨くとお口の匂いもしないし」
男もそうだが女の子もそれは同じだ。
「というかお口の臭い女の子ってね」
「それだけで、よね」
「そう。よくないから」
里香は何処か歯医者めいた感じで琴乃に話していく。
「ましてや歯垢とかついてたら」
「何か凄い嫌ね」
「よくないでしょ」
「というか気持ち悪いわよ」
琴乃はその眉を思いきり顰めさせて答えた。
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